目立たない・取り外せる矯正、マウスピース矯正ってなに?

目立たない・取り外せる矯正、マウスピース矯正ってなに?

噛み合わせが悪くて食べ物をきちんとかめない。夜寝ている間、口呼吸になってしまう。歯並びが悪いと見た目だけでなくお子さんの順調な成長過程にも大きな影響を及ぼす問題になることがあります。

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以前の日本では、マウスピース矯正は歯列矯正の補助的な存在でした。近年、マウスピース矯正を主体にした矯正方法が注目されています。ここではマウスピース矯正ってなに?お子さんにマウスピース矯正は大丈夫なの?などについて報告します。

この記事の目次

1.マウスピース矯正ってなに?

マウスピース矯正とは

マウスピース矯正は、透明なプラスチック製の矯正器具を使用するので、目立つことがなく、矯正をしていることをあまり知られたくない人におすすめの方法です。
以前は比較的軽い症状の矯正や、ブラケット矯正の仕上げの段階で使われたりしていました。近年はマウスピース矯正の開発が進み、マウスピースを主体とする歯列矯正治療がクローズアップされるようになりました。

子どもにマウスピース矯正は向いているの?

子どもの矯正にはマウスピースを使ったものや、プレートを使った床矯正があります。マウスピースはおもに正しい歯列に近づけるために、床矯正は歯の入る幅を広げる方向で行います。
どちらもお子さんの成長を生かした治療方法で、マウスピースもプレートも自分で取り外しができるのが特徴です。お子さんの歯の状態でどのような治療方法になるかわかれるところですので、まずは小児歯科の歯医者さんにご相談ください。

目立たない矯正方法

透明に近いマウスピース型の矯正器具は、従来の金属などのワイヤーとブラケットの矯正と比べると非常に目立ちにくいのが特徴です。
歯並びが悪くて治したいけれども治療をしていることがわかるのはちょっと…という要望に応える矯正方法といえるので、お子さんの矯正中の精神的負担を和らげることにもつながる治療法です。

取り外しが可能になる

従来、多くの治療法として採用されてきたブラケット矯正は、一度器具を装着すると治療が終わるまで自分で器具をとることができませんでした。 マウスピース矯正は、食事やブラッシング時など場合に応じて自分で着脱することが可能なので、生活の中に溶け込む矯正方法と言えるでしょう。

痛みが少ない

マウスピース矯正のマウスピースは、金属などのワイヤーを使用せず医療用のプラスチックでできています。以前の矯正方法と比べると痛みが少なく、 硬い器具で唇や口の中の粘膜などを傷つけてしまうという心配がありません。
治療している間に装置が歯から外れてしまって歯医者さんに駆け込むなど、緊急性が少ないことも特徴のひとつです。より自分のペースで進められますね。

マウスピース矯正海外での考え方

海外では1998年ごろから、マウスピース矯正の開発が進んできました。コミュニケーションを図る上での笑顔の大切さ、話す言語の発音の違いなどから、日本よりも歯並びが良いことがより重要視され、人々の関心度も高かったようです。

2.マウスピース矯正がおすすめできる人

矯正治療を他人に知られたくない人

マウスピース矯正は透明なマウスピースを使用するため、笑っても矯正器具が見えにくいです。矯正治療を行っていることを周りの人に知られず歯並びを治すことができます。お子さんの治療中の精神的負担を減らし、いつもと変わらない生活の中での矯正治療を進めることができます。

仕事上、ブラケット装置を使用できない人

ブラケット矯正は、ブラケットを一つ一つの歯に接着しワイヤーでつなげる矯正方法です。会話中などにブラケットが見えてしまうと、矯正していることがわかってしまいます。人前に出る仕事をしている人、お客様の対応に当たる人などは、矯正していることがわかると都合がわるいものです。
マウスピース矯正はほとんど透明なマウスピースを使用するので、そんな職業の方の矯正方法としておすすめです。

激しい運動をしている人

激しい運動をしている人は、マウスピースを使った矯正がおすすめです。ブラケットはでこぼこしている上、材質が硬いものを使用しているので、運動をしている間に口の中を痛めてしまうことがあります。
マウスピース矯正は、マウスピースが歯を保護してくれる役割も担いますし、つけはずしが自由なので、スポーツマウスガードにつけかえることも可能です。

楽器を演奏する人

楽器を演奏する人の場合は、器具が楽器に当たったり、唇の繊細なタッチが気になったりする方、舌や唇の力によって逆に歯並びが悪くなってしまう方もいます。マウスピース矯正は必要な時に自分で外したり着けたりできるために、楽器の練習をしながらでも歯列矯正が行える利点があります。
お口の筋肉を鍛える筋機能療法をあわせて行うと、歯並びの改善により役立ち、以前より、楽器が吹きやすくなったという例もあるようです。

金属アレルギーの人

マウスピース矯正は金属を一切使いません。材質はゴムよりも軽く耐久性のあるポリウレタン素材が多いので、特に金属アレルギーの方や、金属アレルギーではないかもしれないけれど口の中に金属を入れるのが心配な方にはおすすめの治療方法です。

3.治療の流れ

カウンセリング・精密検査

小児歯科ではお子さん、親御さんと相談しながらお子さん個々の悩みや希望などを聞き、歯医者さんが現在の口の状態をチェックすることから始めます。そしてケースにあった必要な治療方法、期間、料金の説明を行います。
これでやりましょうということになれば、お口の中の写真やレントゲン撮影、歯型をとります。同時に歯のクリーニングなども行います。

マウスピース用の歯型をとり、シミュレーションを行う

マウスピース矯正において、一つの型で移動できる歯の距離は多くても1ミリほどです。少しずつ動かすので、いくつものマウスピースを作製するために、最初のシミュレーションが重要になります。
種類によって、治療の段階ごとに、その都度、歯型を採取するものもあれば、治療開始~終了までの歯の動きを、治療開始前にシミュレーションできるものもあります。後者の場合“最初に採取した型”をもとに、治療の過程で必要になるさまざまな型を一度に作製できるという特徴があります。
なお、マウスピース型の矯正装置は商品によって対応できる症例が異なります。

治療開始

種類によっては、寝ているあいだの8~10時間つけていることによって弱い力をかけ、少しずつ歯を動かしていくものもあります。治療期間中は、来院のたびにマウスピースの調整をしていき、定期的に型を採って新しいマウスピースを作製する、という流れになります。

定期検診

治療が始まると、来院はおおよそ1~3カ月ごとになります。その際、歯とマウスピースがきちんと合っているか、口内の衛生状態はどうか、などを確認します。マウスピースをつけた状態で来院しましょう。
マウスピースの種類によっては、来院するたびに新しいマウスピースの型を採る場合もあります。

治療完了と保定

治療が終わった後には保定という作業が残っています。移動した歯がもとに戻らないよう安定させるために、リテーナー(保定装置)をつけて一定期間、過ごします。
個人差がありますが、おおよそ1~3年ほどです。しばらくは24時間つけていることが望ましいです。1年半ほど経つと、夜寝ている間つけていればよくなります。

4.マウスピースのデメリット

マウスピースを1日20時間以上装着する必要がある

マウスピース矯正は少しずつ歯を動かしていく治療法なので、マウスピースを長時間つけていなければいけないというデメリットがあります。お子さんの場合、ずっとつけているのはつらいこともあります。矯正してよくなることを説明して、お子さんが少しでも前向きに矯正に取り組むようにしていくとよいでしょう。装着時間は種類により異なります。

歯ぎしりするとマウスピースが壊れる

マウスピースは型採りして、一つのピースを歯にかぶせる方法をとりますので、歯ぎしりが激しい人などはマウスピースが壊れたり、穴があいてしまったりすることがあります。永久歯に生え変わる前のお子さんの場合は、噛み合わせが完成していないので不安定になり、歯ぎしりが起こる場合もあります。
ストレスなどで歯ぎしりが起こる場合もあるので、日頃からストレスを溜めない生活を心がけることも大切ですね。

虫歯のリスクが高くなる

マウスピース矯正は、マウスピースを歯にかぶせて歯を少しずつ動かしていく治療法なので、歯とマウスピースの隙間に食べ物などがはさまったり、細菌に対応する唾液が出にくくなったりし、虫歯ができやすくなります。マウスピースをきれいに保つことと、毎食後のていねいなブラッシングが大切になります。

奥歯までしっかり噛み合わせ出来ないこともある

マウスピース矯正は少しずつ歯を動かしていく方法なので、奥歯の噛み合わせの調整が必要な場合など、大きく歯を動かす必要のある治療には向いていません。お子さんにあった矯正方法を、ぜひ歯医者さんとご相談ください。

ねじれ、ズレが大きいと時間がかかる

歯のねじれやずれが大きいと、治療が長期にわたる場合があります。ねじれの原因はおもにあごが小さいことによるもので、前歯に現れることが多く、この場合も、マウスピース矯正では矯正が難しくなることもあるので、どの方法を選んだらよいか歯医者さんにご相談ください。

5.マウスピース矯正へのよくある疑問?

従来の矯正方法と違い、治療できる範囲が決まっているのでは?

マウスピース矯正装置には、さまざまなメーカーの商品があり、お値段も相性もさまざまです。お子さんの歯の状態によって使用される器具が変わってきますので、一度歯医者さんにご相談されるとよいでしょう。

従来の矯正方法と違い、治療期間が長くない?

マウスピースを使った矯正の治療期間は、初めのお口の中の様子で長くなったり短くなったりします。1日の装着時間なども影響してきます。一概には言えませんが、例えば、前歯だけの部分的な場合には6カ月から1年。ほとんどの治療が1年くらいで終わるとうたっている歯医者さんもあります。
マウスピース矯正は、実際に患者さんがつけはずしを行うので、早期の改善には歯医者さんと患者さんの協力も不可欠です。

マウスピースを着けていると話しにくいのでは?

やはりつけ始め、慣れないうちは少し違和感があるようです。でも、2,3日するとだんだん慣れてきて、1週間もすれば前と同じようにお話しができるようになるでしょう。
ただ、これも個人差があります。とても違和感があるとおっしゃる方もあるようですが、人の体は大抵の場合慣れてしまうものなので、少し様子を見ていただくとよいでしょう。大事な会議などでは自分で取り外しも可能です。

どこのマウスピースも同じではない?

マウスピース作製に3Dスキャナーを使う場合もあります。お口のなかを3Dスキャニングして、歯型のデータをマウスピース作製現場におくります。
そのため、患者さんの症状にフィットした、ぴったりのマウスピースが作られるのです。治療開始~終了までのマウスピースを一度に作製できるものの場合、仕上がりまで1カ月ほどかかる場合もあるようです。

従来の矯正よりも価格が高い?

マウスピース治療の価格は、歯の状態によって使われるマウスピースの種類も変わるので、一概に言えません。全体的に、マウスピース治療は従来のブラケット治療に比べて価格が安いことも、最近注目されている理由の一つのようです。
カウンセリングで歯の状態を詳しく調べてもらい、どんな治療法がいいのか相談して、きちんと予算を出していただけると安心ですね。

6.まとめ

いかがでしたか。以前より身近な治療法となったマウスピース矯正、ゆっくり動かす治療なので、少し長めの治療期間になるかもしれませんが、あまり目立たないのと、お子さんの成長とともに無理ない治療ができるところがメリットです。
食べるとき以外はつけておくという場合もありますし、1日8~10時間の装着という場合もありますので、歯医者さんとよく相談なさって、お子さんに一番よい方法を選択してあげるとよいでしょう。

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目立たない・取り外せる矯正、マウスピース矯正ってなに?

監修医 高橋貫之先生

本町通りデンタルクリニック

【経歴】
2003年 大阪歯科大学 卒業
2003年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 入学
2007年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 修了
2008年 大阪歯科大学 勤務
2016年 大阪歯科大学(歯周病学 助教)退職
2016年 本町通りデンタルクリニック 勤務
現在に至る。
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