子どもの歯並びをよくする顎の矯正「床矯正」とは?

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子どもの歯並びをよくする顎の矯正「床矯正」とは?

将来、自分の子どもが歯並びで苦労しないために、できるだけ早く矯正治療を受けさせたいという親御さんも多いのではないでしょうか。歯列矯正の治療は、子どものころから行ったほうが比較的費用負担も少なく、治療自体も調整がしやすいです。この記事では、顎を広げる歯列矯正の方法「床矯正(しょうきょうせい)」についてご紹介していきます。顎を広げることでスペースが確保できるため、大人の歯が生えてもきれいに歯が並び、抜歯などをしなくてもいいように先回りして調整が可能になります。この顎の矯正は、骨がやわらかい子どものときにしかできないため、ぜひ、小さなお子さんをお持ちの親御さんには知っておいてほしい矯正方法です。

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※ 掲載する平均費用はあくまでユーザー様のご参考のために提示したものであり、施術内容、症状等により、施術費用は変動することが考えられます。必ず各院の治療方針をお確かめの上、ご自身の症例にあった歯医者さんをお選びください。

この記事の目次

1.顎を広げる矯正方法「床矯正」って何?

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歯が生えるスペースを確保できる

「顎を広げる」という治療法がどんなことに役立つのかわからない親御さんも多いかもしれません。顎を広げるのは、今後生えてくる歯がきちんとまっすぐ生えて並ぶように、スペースを作ることが目的となります。

顎が小さいと、スペースが足りなければ歯を抜いてスペースを作らなければいけません。しかし、子どものころに顎を広げておけば、歯がきちんと生えるだけのスペースができ、大人になってから治療せずにすむ可能性が高まるのです。

専用器具を装着して、徐々に顎を広げる

顎を広げる矯正方法「床矯正」は、「顎態調和法(がくたいちょうわほう)」とも呼ばれています。毎日一定時間以上、専用のマウスピースを上顎や下顎などに装着して顎を広げていきます。取り外しが可能ですが、長期間装着したほうが効果的です。

この装置には、顎の広さを保つネジがついています。そのネジを時間をかけながら少しずつ回していくと、徐々に顎の広さが大きくなっていきます。

この装置については、医師が月に1回、または2ヶ月に1回調整し、永久歯が生え揃うまでの間つけ続けるのが一般的です。

治療費の相場はいくらくらい?

床矯正の治療費は、300,000円〜400,000円が相場です。毎回の処置料は3,000〜5000円ほどかかります。まれに部分矯正扱いとして、床矯正を50,000円〜150,000円程度で行う場合がありますが、詳細については歯医者さんに事前に尋ねてみましょう。また、歯医者さんにおける自費の治療費用は保険治療費と異なり、多くの場合上記の費用に加えて消費税が加算されて請求されます。

※費用は歯医者さんによって違いがあります

治療期間は半年~数年までさまざま

装置をつける期間には個人差があり、半年から1年半程度で終わることもあれば、3年〜5年程度かかる人もいます。長くかかる人は、出っ歯や噛み合わせが悪いなど、すでに歯並びに大きな問題を抱えているケースが多いです。

また、床矯正の装置は永久歯が生え揃うまでの間つけ続けることになります。症状や状況はお子さんによりますが、小学校3年生あたりには終わるように治療を始められるのが理想です。興味があれば早めに一度、歯医者さんに相談してみるのが確実でしょう。

なるべく早めに治療を始めるのがおすすめ

乳歯が抜け始める時期から床矯正の装置を作ると、動かす歯が少なくすみます。そのため、永久歯を動かすよりも時間がかからず、比較的早く治療が終わることが多いです。

しかし、床矯正の装置は子どもが簡単に付け外しができてしまいます。自我が確立してくる9歳ころを超えると、子どもの勝手な判断で装置を外してしまい、せっかくの矯正を生かせなくなる恐れもあります。
他にも、受験の準備に入り装置を邪魔に感じてしまうなど、成長するにつれて矯正が難しくなるのも事実です。そのため、床矯正を検討しているなら、早い段階で行うのがおすすめです。

お子さんの歯並びが気になるようなら、早めに一度、歯医者さんで相談だけでもしておくことをおすすめします。治療を始めるのに適したタイミングも知ることができるので、治療費などの計画が立てやすくなるのもメリットです。

2.生活の中で感じられる床矯正のメリット

食事の際も取り外せる!メンテナンスの簡単さ

床矯正では、取り外しが可能な装置を取りつけます。そのため、食事の際には一旦外すことが可能です。ブラケットなどの装置を歯に直接つけてしまう矯正方法の場合は、ブラケットの隙間に食べかすなどが入り込み、メンテナンスも大変です。

床矯正の場合は取り外しが自由にできるので、メンテナンスも比較的簡単です。痛みがあるときにも外せるので、痛みが苦手な小さなお子さんでも行いやすい治療法といえます。

床矯正は虫歯になりにくい矯正方法?

ブラケットを歯に直接取りつけてしまうとメンテナンスが大変です。そのため、どうしても管理が行き届かないところがあり、虫歯などのトラブルが発生しやすくなるのがデメリットです。しかし、床矯正の場合は、装置を外して歯と装置を別々に磨くことができるため、衛生面での不安が少なく、取り外しができない矯正と比べると、虫歯予防の観点からもメリットが大きいといえるでしょう。

3.床矯正を始める際の注意点

子どもにも治療の意識を持たせることが大切

子どもが自由に取り外しできてしまう床矯正の場合、子どもが親の目を盗んで装置を外してしまい、装着時間が短くなってしまう恐れがあります。

痛い、邪魔に感じるなど、治療を疎ましくなる機会は多々あります。そのため、子どもに治療の意識がないと、治療が無駄になってしまうことがあるのです。子どもにも治療の意識を持たせ、きちんと装置をつけるように教えるが必要になります。歯医者さんにもアドバイスを受けたりしながら、お子さんに矯正の目的が伝わるようにうまく説明してあげましょう。

うっかりなくしてしまう?

床矯正は食事の際や、体育の時間だけ外すなど、つけたり外したりする機会が多いです。そのため、子どもが管理しきれずになくしてしまうことが多々あります。

床矯正の装置をなくして見つからなかった場合、一から作り直すしかないのが現実です。歯医者さんにもよりますが、再度作成費用がかかったり、新しい装置ができるまでの間に動かした歯が戻ってしまったりするリスクも考えられます。出先で外した際は、必ずケースに入れて保管するようにルールづくりをするなど、事前に対処をしておいた方がよいでしょう。

落として壊してしまうケースも

ケースの出し入れを繰り返すうちに、床に落としてしまう可能性もゼロではありません。その拍子に壊れてしまうことも少なくなく、この場合も再度作り直したり、ネジを調整し直したりすることが必要になります。管理の仕方を子どもに丁寧に教えるなど、親からも注意するように促すことが大切です。

ネジを回すのを忘れてしまう

床矯正は、自身でネジを回して、装置の大きさを自分で調整しなければいけないことがあります。親御さんが代わりに装置の調整をしたとしても、忙しかったりすると、ときにはうっかり忘れてしまうことも考えられます。何度も調整を忘れれば、装置をつけていても顎が広がらずに、せっかくの矯正が無駄になりかねません。床矯正を始めると、ネジを回すなどの管理も必要であることを、親子ともにちゃんと把握しておく必要があるでしょう。

装置が歯ぎしりで壊れることがある?

歯の噛む力が強かったり歯ぎしりが激しいと、それがきっかけで装置が壊れてしまうことがあります。床矯正はプラスチックや金属ワイヤーで構成されているので、歯や舌の力に影響を受けやすいのです。もし心配であれば、事前に歯医者さんに歯ぎしりの癖があることを伝えておきましょう。

4.床矯正の治療の流れ

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矯正の相談へ行く

歯医者さんへ矯正を受けるかどうかの相談へ行きます。状況によっては、床矯正以外の治療法をすすめられる可能性もありますが、どちらにしても、お子さんにより適した矯正方法を教えてくれることには違いないでしょう。

矯正検査

矯正治療を始める前に、レントゲンなどを撮影し、現在の状況を把握します。噛み合わせなどの細かい部分もチェックし、顎の成長の度合いなどを確認しながら、矯正に必要な資料を集めていきます。

矯正診断

検査結果を元にして、床矯正の働きが適切に得られるかどうかなど、具体的に診断を行っていきます。

床矯正を作るための型を取る

床矯正を受けることが決まったら、装置を作るために歯型を取ります。型を取るために粘土のようなものをお口の中へ入れるので、気持ちが悪くならないように、直前の飲食などは控えた方がよいでしょう。

装置ができたら装着する

歯型をもとにしてできた床矯正の装置を装着します。初めは違和感がありますが、だんだんと慣れてくるので心配はいりません。多くの場合は2週間程度で慣れるお子さんがほとんどです。

床矯正装置の調整・確認など

装置をつけて1か月〜2か月ほどしたら、治療の経過を確認してもらうために歯医者さんへ行きます。その際には調整もしてもらいますので、装置を忘れず持参しましょう。

十分に広がったら永久歯に生え変わるのを待つ

顎が十分な大きさまで広がったら、もとに戻らないように床矯正の装置を固定します。この状態は、永久歯が生え変わるまでキープしなければいけません。

最後にすべての永久歯がすべて生えたことを確認したら、経過観察へと移行して治療は完了です。ここから歯列矯正をする人は、ブラケットをつけたり、抜歯をしたりと、別の矯正や治療に移っていきます。

5.まとめ

床矯正は、ブラケットを使用しての歯の位置を調整する、歯列矯正の土台づくりとして行います。乳歯の段階で、「このままだと歯列矯正が必要になる」と判断された場合は、床矯正を受ければ抜歯の可能性を減らせるなど、大きなメリットがあります。

「今は大したトラブルはない」と思えても、永久歯が生えた途端に問題が発生することもあります。素人判断で軽く考えず、まずは歯医者さんに相談するようにしましょう。早期に治療をすれば、子どもへの負担も、経済的負担もやわらげることが可能になります。

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監修医 遠藤三樹夫先生

遠藤歯科クリニック

院長

【経歴】
1983年大阪大学歯学部 卒業
1983年大阪大学歯科口腔外科第一講座 入局
1985年大阪逓信病院(現 NTT西日本大阪病院)歯科 勤務
1988年遠藤歯科クリニック 開業
現在に至る
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