この記事の目次
1.「食べたらすぐに磨く」が原則
食後の歯みがきをする理由
食後の歯みがきには、虫歯の原因となる細菌をたくさん含んだ歯垢を取り除くとともに、歯垢ができる元となる糖質がお口の中に残らないように落とすという目的があります。
ですから、食べ物を口にしたあとにできるだけ早く歯を磨かないと、歯垢のなかにひそんでいる細菌が糖質を分解して酸を産生してしまいます。そうして脱灰(だっかい)と呼ばれる、歯が溶かされる状態になってしまうのです。
食後すぐの歯みがきは歯を溶かす?
酸性の炭酸飲料に歯の象牙質部分を90秒浸したあとにお口の中に戻し、歯みがきのタイミングによる酸の浸透を調べた論文が発表されました。これが元になり、食後すぐの歯みがきは歯を溶かすといった情報が流れたようです。ところが、これは虫歯とは異なる「酸蝕症(さんしょくしょう)」の実験です。
実際には歯の表面は酸に抵抗のあるエナメル質でおおわれているので、酸性飲料を飲んでも象牙質と比べて酸の浸透はそれほどありません。さらに、唾液には酸を中和する働きもあります。
酸性飲料を頻繁に摂取するといった特別な状態でない限り、一般的な食生活を送っていれば歯が溶ける酸蝕症は起こりにくいと考えてかまいません。ただし、炭酸飲料を飲んだあとは歯の表面がやわらかめになっているので、すぐに歯みがきをすると歯を傷つけてしまう恐れがあるのは確かです。
食べたらすぐに歯みがきを
虫歯菌が歯を脱灰することでできる虫歯と、酸性の飲食物が歯を溶かす酸蝕症は違うものです。
食後30分以内はお口の中で虫歯菌が活発になりますから、そのタイミングで歯みがきをして、歯垢とその中にひそんでいる細菌を取り除くほうが重要であることを頭に入れておきましょう。ですから、これまでの常識である「食べたらすぐ磨く」という教えは間違いではありません。
2.朝の歯みがきのタイミング
起床後と朝食後のどっちが正解?
朝に歯みがきをするタイミングは、朝起きてすぐにする人と朝食後にする人に分かれると思います。朝食の前後で2回磨くという人もいるでしょう。ただでさえ慌ただしい朝の時間ですから、どちらか1回ですませたいですよね。では、どちらのタイミングで歯を磨くのが正しいのでしょうか?
起床後のお口の中は菌だらけ
睡眠中は唾液の分泌量が減り、お口の中がすごく乾燥します。そして、この状態はとても細菌が繁殖しやすい環境です。そのため寝ているときの口内の細菌数は、起きているときの3倍にもなるようです。これは数にすると億単位にもなります。
朝起きたときにお口の中がねばついたり、においがきつくなったりするのはこれが原因です。そこで、起床時にはうがいをして細菌を洗い流すようにしましょう。
朝食後には歯みがきを
虫歯を予防するためには、朝食後の歯みがきの方が大切です。
寝起きと朝食後の2回磨いてもよいのですが、あまり磨きすぎると歯や歯肉を傷つけてしまう恐れがあるので、食後の1回で十分です。本当ならば毎食後に歯みがきをするのが理想ですが、お昼は歯みがきをするのが難しいでしょうから、朝のうちにできるだけ丁寧に磨いておくようにしましょう。
3.おやつのあとの歯みがきは?
おやつのあとも歯みがきは必要
1日3回の食事のあとの歯みがきだけでなく、おやつのあとにも歯みがきをするのが理想です。できる限り、おやつのあと30分以内には歯みがきをしたいところです。
特に歯にべったりとつくようなものや、糖分を多く含んだものを食べたときには必ず歯を磨くようにしましょう。
外出先で歯みがきができないとき
日中は公園や買い物に行くなど外出していて、歯みがきをするのが難しいケースが多いでしょう。そのようなときには、お茶やお水でぶくぶくうがいをさせるだけでもかまいません。大切なのは、お口の中に食べかすを残さないことです。
4.寝る前の歯みがきは特に丁寧に
1日1回は必ずしっかりと磨く
歯みがきで大切なのは、回数よりも質です。たとえ1日1回の歯みがきでも、すみずみまで磨けたら、適当に1日3回磨くよりも効果的とされています。虫歯ができるまでには数日以上かかりますから、毎日1回でもしっかりと磨ければ問題ないのです。
反対に、適当な歯みがきを何日も続けていると磨き残した場所が虫歯になってしまうでしょう。虫歯予防のためには、1日1回はきちんと歯垢を落とす必要があると覚えておいてください。
寝る前に特に時間をかけて
睡眠中にお口の中で虫歯菌が増えてしまうので、寝る前の歯みがきでどれだけきれいにしておくかがポイントとなります。
理想は1日3回の歯みがきすべてをきちんと行うことですが、朝やお昼は忙しくてゆっくりと磨いてあげられないのであれば、夜にじっくりときれいにしてあげたら十分です。
小学生も夜には仕上げ磨きが必要
小学生にもなると、自分で歯を磨けるお子さんもかなり多くなります。とはいえ、いくらがんばって形だけは磨けているようにも見えても、基本的には磨き残しがあると考えたほうがよいでしょう。これは小学校高学年くらいになっても同様です。、そのため、小学校を卒業するくらいまでは、夜だけでも仕上げ磨きを継続するのが理想です。
5.まとめ
お伝えしたように、食べたあとにはすぐに歯みがきをすることがとても大切です。食事だけでなく、おやつのあとにも歯みがきをして虫歯を防ぎましょう。ダラダラ食べを防ぐ効果も期待できます。
食後すぐに歯を磨いたからといって、歯が溶ける心配はほとんどありません。それよりも、虫歯から守るほうがはるかに大切です。幼いころから、「食べたら磨く」を合言葉に、親子で一緒に虫歯予防の習慣をつけてくださいね。