この記事の目次
上下顎前突とは
口元が突き出した症状
上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)は、口元が前の方に突き出した状態を指します。
前歯が前に突出している、いわゆる出っ歯の原因として見られることもあります。
前歯が突き出しているかを確認するには、横顔を写真に撮って確認するとわかりやすいでしょう。
手元に横顔の写真を用意したら、鼻先と顎を直線で結んでみましょう。
そのラインを超えるように唇が前に出ていれば、あなたは上下顎前突の可能性があります。
基本的には、このラインの内側に唇が収まるか、または唇が少し触れるくらいが一般的です。
これは、人に見てもらっても判断することができるので、身近な人に見てもらってもいいですね。
正面から見た歯並び自体はきれいでも、横顔をチェックしたときに口元が前の方に突き出ていれば、上下顎前突と判断します。
普段見慣れない自分の横顔を、この機会に改めてチェックしてみましょう。
口が閉じにくい
歯が前に突き出していることにより、唇がうまく閉じずに歯が見えたり、口が閉じにくかったりします。
出っ歯の場合は、唇から歯が飛び出てしまうことも少なくありません。
上下顎前突の原因
口呼吸などによるもの
口呼吸をしていると、顎が開きっぱなしになり、舌も正しい位置に収まらなくなります。
このようなことから、上下顎前突の方は口の中の筋肉のバランスが乱れやすい傾向にあります。
少し想像してみましょう。常に口を閉じている鼻呼吸の人と比べると、口呼吸をしている人は唇を閉じるための力を使いません。
したがって、自然と口元の筋肉が弱くなります。
このように唇、頬粘膜、舌など、口の中の筋肉のバランスが乱れると、歯を前に押し出す方向に力が強くかかってしまうことがあります。
これが原因で歯が前へ前へと突き出され、上下顎前突になるのです。
遺伝によるもの
遺伝的に上下顎前突になりやすい方は少なくありません。
目が大きい、鼻が高い、口が大きいなどの特徴が人それぞれにあるように、遺伝的な理由で上下顎前突になっている可能性があります。
顎の骨に奥行きがある
顎の骨に奥行きがあることで、口が突き出した状態になっている例もあります。これは、日本人をはじめとするアジア人に多い傾向です。
日本人は形態人類学ではモンゴロイド属という分類になります。
モンゴロイド属は顔の横幅が広い代わりに、頭蓋骨の奥行きがそれほどありません。
奥行きがないスペースに食道や気道を確保する必要があるため、口元が前に飛び出たような印象を受けます。
欧米人を見ると、横幅が狭い代わりに頭蓋骨は前後に奥行きがあります。頭蓋骨の奥行きがあれば、上下顎前突も発生しづらくなります。
つまり、上下顎前突はアジア人にありがちな症状だということが言えます。
上下顎前突を放置するリスク
ドライマウスになりやすい
口が前に突き出すことによって唇が閉じにくくなり、口内の唾液が乾きやすくなります。唾液が乾く状態が続くと、ドライマウスの症状が見られます。
口呼吸の人は以下のようなトラブルに見舞われやすいのですが、口が開いたままになる上下顎前突の人も同じような悩みを持つ傾向にあります。
【口呼吸/上下顎前突の人が見舞われやすいトラブル】
・口内が乾きやすいので、口臭の原因となる細菌が唾液に洗浄されることなく繁殖する
・空気中の細菌やウイルスが口の中に入りやすいことから、感染症を発症しやすい
虫歯や歯周病のリスク
口が開きがちになれば口の中に唾液が充満しにくくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まることも考えられます。
普段、唾液は虫歯菌の出す酸を中和し、虫歯を防いでくれています。
しかし、唾液が減少すると酸は中和されません。次第に酸は歯を溶かし、虫歯となっていきます。
治療を繰り返しても、上下顎前突を治さなければ口の中が乾燥しやすく、虫歯や歯周病のリスクは高いままです。
上下顎前突を放っておくと、これらのリスクに悩まされ続けることになります。
外見上の問題
上下顎前突を治療をしないままのデメリットとして、見た目の問題も挙げられます。
口元が出ていることが外見的な印象に与える影響は大きく、コンプレックスを抱いて、精神的なダメージにつながる人もいます。
ほかにも、口がきちんと閉まらないことによって虫歯や歯周病になれば、それらの治療跡が気になることもあるかもしれません。
上下顎前突の治療方法
抜歯の必要性
口元を内側に引っ込める必要があるため、一般的には前歯の奥にある小臼歯(しょうきゅうし)を抜歯して歯列にスペースを作ります。
そして、矯正によって前歯を後方へ移動させます。
抜歯ではなく歯と歯の間をわずかに削り、スペースを作り、歯を移動させることで対応することもあります。
症状によっては顎の骨の一部を削り、削った分のスペースだけ歯を後方に移動させる外科的手術が必要な場合もあります。
歯列矯正の方法
ワイヤーブラケットなどの固定の歯列矯正器具を用いて、歯列矯正をする方法もあります。
ブラケットとは歯に装着しワイヤーを通す器具で、ブラケットとワイヤーで歯並びを矯正するのが一般的な方法です。
この方法は、前歯を引っ込めることができるスペースが顎にないと、おこなうことができません。
歯が引っ込むだけのスペースがなければ、どれだけワイヤーで内側に引っ張っても、口元の突出は治りません。
ワイヤーブラケットでの歯列矯正は、歯の移動スペースを確保するために抜歯をおこなうことが少なくありません。
また、矯正自体は成長過程の子どもなのか、大人なのかによっても方法が違います。
親知らずだけ抜歯して顎にスペースを作り歯列矯正する方法や、ねじ状のインプラントアンカーを歯茎に埋め込み、そこを支点として前歯を引っ張り移動させるインプラント矯正を用いる場合もあります。
マウスピースを用いて矯正することもあります。
マウスピース矯正ができるかどうかは、歯の重なり具合といった歯列の状況にもよるので、まずは歯医者さんに相談しましょう。
自分に合った歯列矯正を模索し、納得のいく方法で治療をおこないましょう。
ヘッドギアによる治療
症状によっては、取り外しが可能なヘッドギアを使用することもあります。
ヘッドギアとはフェイスボーを歯に固定し、ヘッドキャップを装着することによって引っ張る方法です。
ヘッドギアは常に付けず、就寝時の装着でいい場合もあります。
基本的に、歯列矯正などでは矯正器具を日常的に装着している必要があるため、食事や会話などに少なからず支障をきたします。
ほかにも、歯磨きといった歯のメンテナンスがしにくいこともあり、虫歯や歯周病になるリスクもゼロではありません。
その点、ヘッドギアは取り外せることがメリットであると言えます。
また、ヘッドギアは通常の歯列矯正と一緒に用いることもあり、その使用方法はさまざまです。
ヘッドギアを使っての歯列矯正は子どもがするものと思われがちですが、大人の矯正でも用いることがあります。
上下顎前突を治療するなら、いろいろな方法のうちにヘッドギアの使用を含めてもいいかもしれません。
まとめ
口元の印象や横顔に自信が持てない、出っ歯にコンプレックスがあるなど、見た目的な部分での不満を感じやすい上下顎前突。
実際は口臭が発生しやすかったり、虫歯や歯周病になりやすかったりと、お口のトラブルにつながることもあります。
見た目に問題を感じない人でも、虫歯になりやすい、口が渇くなどの悩みはありませんか?
一度歯医者さんに相談して、上下顎前突の治療の必要性や今後の歯にまつわるリスクを尋ねてみてもいいでしょう。
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