美しく健康な歯をつくることを目指す美容診療に関しては、歯科用の金属が健康に対してリスクがあるという点もあり、なるべく金属ではない素材をおすすめしたいと考えています。ただし、セラミックなど非金属の素材は自由診療で保険が適用されないため、患者さまもためらう部分が多いかと思います。
一般的な金属は濡れると金属イオンが溶け出します。金属イオンが体内に入ることで、金属アレルギーを誘発してしまうリスクがあります。歯科で用いられる金銀パラジウムという素材も、お口の中で少しずつイオンが溶け出すために健康へのリスクが高まってしまいます。自由診療のセラミックは非金属ですので、金属アレルギーになることはありません。プラスチックにセラミック粉を混ぜたハイブリッドという素材も金属アレルギーにならず、しかも素材費を抑えることができますが、経年劣化を起こすというデメリットがあります。
費用の問題から、患者さま全員が自由診療を受けるようにはならないと思いますが、当院の歯科医師や歯科衛生士など、歯科関係者は自分の歯の治療には銀歯よりも保険適用外の材料を選びます。それは、それだけものが違うと理解しているからです。患者さまにもどう違うのかを説明して、納得していただいたうえで治療方法を選んでいただければと思います。
歯のかぶせ物を作る時には自由診療のセラミック素材をおすすめしたい、というのが歯科医療に関わる人間としての本音です。それが保険診療の素材よりも良い物だという確信があるからです。しかし、費用を負担するのは患者さまですので、患者さまご自身が納得されなければ、すすめる意味がありません。それぞれの素材の特性やメリット・デメリットを丁寧に説明したうえで、患者さまに治療方法を判断していただき、患者さまの望む治療を提供するのが歯科医師の役目だと考えています。