ホワイトニングは歯が弱くなる、ボロボロにするといった噂を耳にしたことがある方もいるかもしれません。これらの噂を信じているなら、損をしているかもしれません。もちろんホワイトニングにはデメリットがあります。しかし、それを補うだけのメリットもあります。
この記事では、ホワイトニングの安全性と、考えられるデメリット、用いる薬剤などを詳しく紹介します。不安を解消し、本格的なホワイトニングを検討してみませんか?
この記事の目次
1.ホワイトニングは歯がボロボロになる?
正しいホワイトニング治療は安全性が高い
以前は、ホワイトニングを行うと歯が弱くなる、ボロボロになる、といった噂を信じる人も多くいました。
しかし現在では、正しいホワイトニング治療を受ければ、歯や体に危険性はなく、安全性が高いと考えられています。特に歯医者さんでホワイトニング治療をした場合、基本的に副作用は少ないと言えます。歯の専門家である歯科医師が、個々の患者さんに合った治療法を見極めた上で、ホワイトニング治療をしてくれるからです。
ホワイトニングのメカニズム
歯が黄色く見えるのは、歯の表面についた着色物と、半透明のエナメル質の下から元々黄色みがかっている象牙質が透けていることが原因とされています。
オフィスホワイトニングでは、過酸化水素が含まれた薬剤を歯の表面に塗り、歯に付着していた着色物(ステインなど)を漂白します。そして象牙質が透けて見えているエナメル質を曇りガラス状に変えることで、歯を白く見せているのです。ホワイトニング薬剤によって「象牙質の構造を変える」といった悪影響はありません。
2.ホワイトニングで考えられるデメリットとは?
一時的に知覚過敏になる
ホワイトニングの施術後、歯がしみたり痛みを感じたりすることがあります。ホワイトニング剤を塗ったことで、歯のエナメル質が脱灰し、一時的に知覚過敏の状態になっているためです。エナメル質は自然に再石灰化しますので、こうした痛みは時間とともに和らいでいきます。
ただし、過酸化水素の濃度が高いと、痛みが長引くことがあります。虫歯や歯周病、歯の割れや欠けがあると、過酸化水素が神経まで浸透し、痛みが増すことも考えられます。通常24時間ほどで痛みは和らぎますが、何日も続く場合は歯医者さんを受診しましょう。
歯の黄ばみが目立つ
ホワイトニングをしたあと、根元部分の黄ばみが目立つことがあります。これにはさまざまな理由がありますが、主に以下の理由が考えられます。
・根元部分に歯石や汚れがあったため、薬剤塗布にムラができた
・脱灰でエナメル質が薄くなったため、下の象牙質の黄ばみが透けて見える
ホワイトニング後は、濃い色の飲食物を控えなければいけないといった、食事制限を守る必要があります。食事制限を守らずに濃い色の飲食物を摂ると、治療前よりも黄ばみが目立つことがあります。
ホワイトスポットが目立つ
ホワイトニングをしたあとに、「ホワイトスポット」という、歯の表面にある斑点が目立つことがあります。ホワイトスポットは、エナメル質形成不全の一種です。原因は、ホワイトニングで白くなった部分と、白くならかった部分(ホワイトスポット)の差がはっきりするためです。
歯茎が変色する
薬剤の濃度が高いホワイトニング剤が歯茎につくと、歯茎が白く変色する、赤くなり炎症するといったトラブルを引き起こすことがあります。
脱灰により歯が一時的に弱くなる
脱灰とは、酸性のホワイトニング剤が原因で、歯のカルシウムが溶け出すことです。酸性の飲食物を摂っても、脱灰は起こります。お口の中が酸性から中性に戻れば、再石灰化が起こるため、溶け出した歯は元の状態に戻っていきます。そのため、ホワイトニング剤や酸性の食品で一時的に脱灰しても、歯がダメージを受けたままになることはありません。
中には、中性のホワイトニング剤を用いて治療をおこなっている歯医者さんもあります。ホワイトニング剤そのものが中性であれば、脱灰は起こりにくくなります。基本的に、脱灰は時間経過とともに治癒する症状ですが、心配であれば、中性のホワイトニング剤を扱っている歯医者さんを受診するとよいでしょう。
3.ホワイトニングに用いる薬剤は安全?
過酸化水素
ホワイトニング薬剤の主な成分は、過酸化水素です。過酸化水素には、歯を漂白する作用があり、消毒薬として用いられるオキシドールと同じ成分です。過酸化水素は、FDA(米国食品医薬品局)において安全性を認められている成分です。日本では、「うどん」や「かまぼこ」といった食品を作る際に、食品添加物としても用いられます。
過酸化尿素
ホームホワイトニング薬剤には、基本的に過酸化尿素が配合されています。過酸化尿素は、ホワイトニング剤として使用する場合、過酸化水素と尿素に自然分解されます。そのため、効果は過酸化水素とほぼ同じと言えます。過酸化尿素の濃度が10%の場合に、その中に含まれる過酸化水素の割合は3%ほどです。
つまり、過酸化尿素が分解したあと、過酸化水素の濃度は3分の1ほどになるということです。そのため、過酸化尿素が配合されているホワイトニング剤の漂泊効果は、緩やかになります。
酸化チタンや窒素
オフィスホワイトニングでは、薬剤の中に酸化チタンや窒素という成分が入っている場合があります。目的は、ホワイトニング効果を引き上げるためです。
酸化チタンや窒素の副作用や悪影響は、ほぼ心配ないでしょう。理由は、どちらも食品に入っているからです。酸化チタンは、食品を白くするための食品添加物(着色料)として配合されています。酸化チタンを添加したホワイトチョコレートと、添加していないホワイトチョコレートでは、白さに違いがあります。窒素は、お豆腐を作るときに、材料を固める凝固剤として使われています。
自己流のホワイトニングは危険
ホームホワイトニングを自己流でおこなったり、市販のホワイトニング剤をなんとなくで使ったりしていませんか?自己流でホワイトニングすると、知覚過敏になりやすい上に、歯や歯茎に痛みを感じやすくなります。
また、個人輸入で手に入れることのできる、海外のホワイトニング剤は危険性があることを指摘されています。過酸化尿素や過酸化水素の濃度が35%以下であれば、国内で流通しているものと変わりないと思われがちですが、薬剤の中にはアメリカのFDA、また日本の厚生労働省、どちらにも認可されていない製品があります。欧米人に比べ、日本人は歯のエナメル質が薄いという傾向がありますので、欧米人に合った製品を日本人が使うと、口内にダメージを与える恐れが高まります。
4.ホワイトニングを避けたほうがいい人とは?
虫歯・歯周病がある人
ホワイトニングをしたくても、虫歯や歯周病があるとすぐに施術できません。虫歯や歯周病を治療せずにホワイトニングを行うと、歯や歯茎を痛める恐れがあります。口内のトラブルを解決してからホワイトニング治療をおこないましょう。
歯に傷・割れなどがある人
歯の表面に欠けや傷といったダメージがあると、ホワイトニング薬剤が神経まで達することがあります。ダメージを残したままホワイトニングをすると、しみやすくなります。歯にダメージがある場合は、人工素材で傷を補う治療を受けてから、ホワイトニング治療をおこないます。
妊娠・授乳をしている人
ホワイトニングが妊娠や授乳中のお母さん、またはお子さんに悪影響を与えるという研究結果はありません。ただし、絶対に安全であるという確証もありません。
そのため、多くの歯医者さんで、妊娠中や授乳をしている女性に対するホワイトニング治療をおこなっていません。ホワイトニング治療を希望しているなら、妊娠前、もしくは授乳後に計画を立てましょう。
無カタラーゼ症の人
ホワイトニング薬剤に配合されている成分の分解ができない「無カタラーゼ症」の人には、ホワイトニングをおすすめできません。無カタラーゼ症の人が無理にホワイトニングをおこなうと、進行性口腔壊死といった危険な症状を引き起こすこともあります。そのため、過酸化水素が配合されたホワイトニングはおこなわないようにしてください。
光過敏症の人
オフィスホワイトニングの中には、効果を高めるために、ハロゲンやLEDの光を当てることがあります。光過敏症とは、強い光をあびることが原因で、皮膚に赤い斑点や水疱ができる病気です。光過敏症の人は、光を照射しないタイプのホワイトニング、または、ホームホワイトニングを選ぶようにしましょう。
5.まとめ
基本的に、オフィスホワイトニングであれば、大きな心配はありません。歯医者さんの指示通りにマウスピースや薬剤を用い、自宅で行うホームホワイトニングも、悪影響や副作用は少ないでしょう。
一方、個人輸入で海外のホワイトニング剤を手に入れたり、自己流でホワイトニングをおこなったりすれば、歯や歯茎にダメージを与えるリスクが高くなります。安く効果が強いからといって、手軽に海外のものを使うのはおすすめできません。

監修医
飯田 尚良先生
飯田歯科医院 院長
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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