入れ歯は吸着力が高いため、外すのに苦労することがあります。しかし、無理に引っ張ると唇や口内を傷つける恐れがあります。特に入れ歯に慣れていない方は、正しい外し方を知っておくことが重要です。
ここでは、正しい着脱方法、外れやすい場合の対策、そして入れ歯の調整について詳しく解説します。
この記事の目次
1.入れ歯の正しい外し方
部分入れ歯の外し方
上の部分入れ歯
人差し指の爪をクラスプにかけ、上から下にゆっくりと引き出します。
下の部分入れ歯
親指の爪をクラスプにかけ、下から上にゆっくりと引き出します。
金具が二つある場合
必ず同時に動かしましょう。一方だけを外そうとすると、スムーズに外れにくくなります。
総入れ歯の外し方
総入れ歯を外す際は、まず下あごの入れ歯を先に外すと、口内の空間が広くなり、取り外しがスムーズになります。以下の手順に従って外してみましょう。
1.前歯を指でつまむ
2.前歯側を手前に出して奥歯を浮かせる
3.入れ歯を前後に動かす
4.下あごの場合は斜め上へ、上あごの場合は斜め下に引き出す
また、総入れ歯は横幅が大きいため、まっすぐに引き出すと口角を傷つける恐れがありますので注意しましょう。
2.入れ歯の正しい入れ方
部分入れ歯の入れ方
クラスプを持って口に入れます。クラスプを鉤歯(金具をひっかける残存歯)に沿わせ、入れ歯全体を指で支えながら押し込みます。
総入れ歯の入れ方
入れ歯を装着する際は、上あごの入れ歯から始めるとスムーズです。以下の手順に従って装着してみましょう。
上あごの総入れ歯
1.前歯を持ち、口内に入れる
2.義歯床(入れ歯の土台)の中央部分を親指で押さえる
3.上あごの粘膜に吸着させる
下あごの総入れ歯
1.U字型の左右を両手で持ち、口内に入れる
2.両方の人差し指を奥歯にあてる
3.下あごの粘膜に沿って押さえる
3.入れ歯を着脱する際の注意点
舌を使っての着脱はしない
入れ歯の着脱に慣れてくると、舌を使って着脱してしまうこともあるでしょう。しかし、間違った着脱法を続けると入れ歯自体を傷つけてしまうだけでなく、口内の健康に悪い影響を与えることがあります。部分入れ歯の場合、クラスプの歪みの原因や鉤歯の損傷、虫歯の温床の原因になってしまいます。総入れ歯の場合は、入れ歯の摩擦によってあごの粘膜を傷つけてしまうこともあります。
また、舌を使っての着脱に慣れてしまうと、口を開けたときなどに突然落下してしまう危険性もあるため注意が必要です。
無理やり引っ張らない
入れ歯が外しにくい場合、無理に引っ張ってはいけません。無理に引っ張ると、口内や口角を傷つけるだけでなく、クラスプの歪みや入れ歯の変形を招くことがあります。うまく外れないときは、焦らずゆっくりと取り外すようにしましょう。
入れ歯安定剤は確実に取り除く
入れ歯を装着する際、吸着力を高めるために入れ歯安定剤を使用することがあります。その場合でも、基本の着脱方法は変わりません。外した後は、入れ歯の洗浄とともに、入れ歯や口内に安定剤が残らないようにしっかり取り除きましょう。
安定剤が残っていると、口臭や入れ歯の変色の原因になります。入れ歯についた安定剤は乾いたガーゼで優しく拭き取り、口内に残った安定剤はよくゆすいで落とすか、ティッシュなどで拭き取りましょう。
入れ歯の洗浄・歯磨きは欠かさず行う
食事の後には、入れ歯の洗浄と歯磨きを習慣化しましょう。洗浄を怠ると、口内の細菌が繁殖し、虫歯や歯周病、口内炎の悪化など、さまざまな口腔トラブルの原因になります。食後の洗浄と歯磨きを習慣化することで、口内を清潔に保ち、口内の健康を維持しましょう。
4.定期検診は3カ月おきに受けよう
定期検診で入れ歯トラブルを回避
どんなにぴったり合った入れ歯でも、加齢により歯茎やあごの骨が痩せてくるため、不具合が出ることがあります。また、入れ歯を外すのに苦労する、またはさらに外しにくくなった場合は、入れ歯が口に合っていない可能性があります。
歯医者さんで定期的な検査と調整を受けることで、これらの問題や痛みを事前に防ぐことができます。定期検診は、3カ月に1度がおすすめです。
歯医者さんでの調整が必要なタイミング
以下の症状が現れた場合は、歯医者さんでの調整をおすすめします。
・人工歯がすり減り、噛み合わせが悪くなった
・入れ歯が口に合わず、歯肉がフラビーガム(粘膜がブヨブヨした状態)を起こしている
・入れ歯の後ろ(のどに近い部分)の密着度が弱く、空気が入りやすい
5.まとめ
入れ歯が使用者の口に合っていれば、特別な外し方は必要ありません。今回ご紹介したポイントを理解しておけば、着脱する回数に比例して取り外しに慣れてきます。しかし、いつまでもスムーズに外せない場合や、逆に外れやすくなった場合は、入れ歯の変形や残存歯が虫歯になるなどのトラブルが起こっている可能性があります。
入れ歯の着脱で困っていることがある場合は、定期検診の際に歯医者さんにアドバイスをもらい、必要な調整を繰り返していきましょう。

監修医
飯田 尚良先生
飯田歯科医院 院長
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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