自費の入れ歯は「高額」というイメージが強いですが、治療前におおよその費用を把握しておくことは重要です。生涯にわたり快適に食事を楽しむためにも、入れ歯についての知見を深めることが大切です。
この記事では、保険適用の入れ歯と自費の入れ歯の違い、自費の入れ歯の種類と費用について詳しく解説します。これにより、自費の入れ歯に対する不安を解消し、安心して治療に臨むことができるでしょう。
この記事の目次
1.自費の入れ歯と保険の入れ歯の違い
保険の入れ歯
保険適用の入れ歯は、メリットとして費用が安いことが挙げられます。保険が適用されるため、治療費の一部を負担するだけで済み、経済的な負担が軽減されます。また、決まった範囲内での治療となるため、比較的短い期間で入れ歯を作成することができます。これにより、早く日常生活に戻ることが可能です。
自費の入れ歯
一方自費の入れ歯は、使える材質と治療法にさまざまなものがあります。より良い見た目を手に入れたい、機能性を重視したいなど、患者さんの希望に合わせ、材質と治療法を選択します。
さらに、患者さんの口内の型をとり、多くの工程を経て精密なものが作られるので、密着力が高く外れにくい入れ歯を作ることができます。ただし、費用は全額自己負担となりますので、保険適用のものにくらべ、費用が高額になります。
なぜ見た目に特化した入れ歯は保険が適用されないのか?
保険治療は、誰もが平等な治療が受けられるよう考えられた制度です。患者さんの負担を少なくするため、公的保険で治療費を補います。保険制度では、見た目や機能性向上を目的とした治療に保険が適用されることはありません。適用範囲は必要最小限の機能回復の治療に限られ、使用できる材料や治療の方法に制約があるのです。
2.自費の入れ歯の種類と費用
金属床
保険の入れ歯では、床をレジンというピンクのプラスチックで作ります。そのため厚みができてしまい違和感が生じることがあります。自費診療の床「金属床」を作るときは、材料として金合金やチタンなどが使われます。薄く仕上げることができるため、表面の舌触りがよく、違和感が少なくすることができます。
<費用の目安 > ※総入れ歯の場合
金合金:70〜80万円前後
金属床の中で最も高価な金属です。腐食に強く、金属アレルギーもほとんど起こりません。
チタニウム合金:50〜60万円前後
インプラントの人工歯根にも使われている金属です。
コバルトクロム合金:40万円前後
保険入れ歯の3分の1程度まで床の厚みを薄くできる金属です。
ノンクラスプデンチャー(部分入れ歯用)
部分入れ歯の金属のバネ(クラスプ)を無くしたものが、ノンクラスプデンチャーです。残っている歯にバネで負担をかけることなく固定することができます。また、金属を使用しないので、金属アレルギーの心配がありません。
費用の目安:15〜30万円前後
歯数で金額が決まる場合や、歯数に関わらず一律料金の場合があったりと、歯医者さんにより費用は異なります。
シリコン床
シリコン床は、入れ歯の内側に人肌に近い素材のシリコンを使います。シリコンは柔らかい素材のため、痛みが緩和されよく噛むことができます。
費用の目安:30〜50万円前後
入れ歯の種類によりますが、現在使っている入れ歯をシリコン床に改修することもできます。
その他の入れ歯
自費の入れ歯には、紹介した3タイプ以外にもさまざまな製品があり、歯科医院によって使用する素材や治療法が異なります。希望の入れ歯を作るためには、最適な材料と治療法を歯医者さんに相談することが重要です。自費の入れ歯は高額になることが多いため、かかりつけの医院だけでなく、複数の歯医者さんに相談してみるのも良いでしょう。
3.自費の入れ歯に関するQ&A
Q1.入れ歯以外にかかる費用は?
A.入れ歯の費用に加え、治療費やメンテナンス費用もかかります。
初診から入れ歯の完成までにかかる費用はもちろん、将来のメンテナンス費用についても考えておきましょう。また、それぞれの歯医者さんによって「入れ歯の保証期間」が異なりますので、事前に確認しておくことが重要です。
Q2.どんな支払い方法がある?
A.多くの歯医者さんでは、現金・クレジットカード・デンタルローンの支払い方法が用意されています。
支払いについては、治療開始前にしっかり確認しておくことが大切です。また、現金での支払いの場合も、分割のケースや、全額銀行振込するケースなどがあります。
Q3.自費入れ歯は医療控除の対象になる?
A.交通費を含め、自費で作った入れ歯の治療代も控除の対象になります。
家族全員が一年間に支払った医療費が10万円を超えた場合、確定申告をすることで、医療費控除を受けることができます。入れ歯を作る際に受け取る領収書は、紛失しないように大切に保管しておきましょう。
4.まとめ
自費で入れ歯を作るためには、数万〜数十万円の費用がかかります。使う材料や治療法により、費用や期間が異なりますので、慎重に検討することが大切です。
また、自費入れ歯を検討する際には、「なんでも好きなものを食べたい」「自然な口元にしたい」など、日常生活を送るうえで自分にとって大切な点を一度確認してみることをおすすめします。自分にあった入れ歯を作るために、自費入れ歯の治療は、歯医者さんにしっかりと相談し、納得してから治療を進めるようにしましょう。

監修医
飯田 尚良先生
飯田歯科医院 院長
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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