出張や海外旅行などで、飛行機に搭乗する頻度の多い人もいるでしょう。飛行機に乗った時に、どうも歯がズキズキ痛むという人もいるでしょう。特に虫歯の治療を行っているときに飛行機に搭乗すると痛みが走るという人が多くいます。
これはただの気のせいではなく、痛みが起きるメカニズムがきちんとあります。ここではなぜ虫歯治療中の人が飛行機に乗ると痛みが走るのか、痛みが起こらないようにするためにはどうすれば良いかについて紹介しています。
この記事の目次
1.飛行機と虫歯の痛みの関係
1-1 機内の気圧変化が原因
虫歯の人が飛行機に乗ると歯がズキズキ痛む要因はいくつか考えられますが、主な原因に気圧の変化があります。飛行機内の気圧は地上と比較すると20%程度低く設定されています。
だいたい標高2000メートル程度、富士山でいうところの5合目くらいの気圧だと思ってください。虫歯治療を行っている人の中には、虫歯を除去した穴に薬を詰めているケースもあるでしょう。
その薬が気圧の変化によって漏れ出して、いわゆるしみるような痛みが発生するのです。
1-2 歯の中の空気が膨張
気圧が低くなると、歯の中に含まれている空気が膨張してしまいます。歯髄腔という空洞の中に含まれている空気が膨張することで痛みを感じます。
歯髄腔の中の気圧は通常であれば外の気圧と一緒になっているのですが、飛行機の離陸により短時間で急激に気圧が低下すると、その変化に対応しきれず内側から圧がかかり痛みが起こるのです。
飛行機に乗った時に耳がキーンとなった経験のある人も多いでしょうが、これも耳腔内の空気が急激に膨張したことが関係していて、メカニズムは一緒です。
1-3 膿みが溜まっている可能性も
虫歯の自覚症状がない人で、飛行機に搭乗した時痛みを感じたようであれば、膿が溜まっている可能性があります。歯茎や歯の根っこのところに膿が溜まると歯の周辺の神経を圧迫して痛みを引き起こすことがあります。膿がたまっている状態は虫歯や歯周病が進行した場合に多く起きます。
1-4 精神的な不安も関係
虫歯の時に飛行機に搭乗して痛みを感じた経験を持っている人の中には、その後も飛行機を利用すると痛みを感じるというケースもあります。
これは身体的というよりも心理的な側面が影響している場合があります。特に飛行機に乗っているときに強い痛みを感じたことがあると、次に飛行機に乗るときに「また同じような痛みが起きるのでは?」という不安を抱くことで、本当にそのような痛みが引き起こされることがあります。
飛行機に乗った時に痛みを感じた人は、それをあまり引きずらないように心がけることも痛みへの対策になります。
2.虫歯と飛行機の危険性に関して
2-1 虫歯が破裂する可能性はあるのか
虫歯の状態で飛行機に搭乗すると痛みを感じますが、ほとんどの場合は耐えられないような痛みにはなりません。このため、痛みを経験した人の中にはあまり深刻にとらえない人も多いようです。
しかし最悪の場合、虫歯が急激に膨張して破裂してしまうことも稀ではありますが起こりえます。このため、飛行機のパイロットや宇宙飛行士の方は虫歯を治療していないと搭乗禁止になります。
2-2 治療中は飛行機に乗らない
急激な気圧の変化によって歯に痛みを感じる症状を航空性歯痛といいます。この航空性歯痛は、虫歯治療中の人に起きるリスクが高いと言われています。
ですから飛行機に乗る時には、前もって歯医者でしっかり虫歯の治療を行っておくことが大切です。治療中に搭乗しなければならない場合は、治療中の医師に事前に相談をしてから搭乗するようにしましょう。
スケジュールが許せば、歯医者に通院しているときにはなるべく飛行機の搭乗を避けるなどの対策を講じましょう。
2-3 神経の治療中は特に注意
神経の治療を行っていて、歯の根っこの中などに空気が存在する場合、離陸した時に気圧の変化によって空気が膨張し、神経を圧迫して痛みを伴うことがあります。
ですから虫歯の治療の中でも神経の治療をしているときには、できるだけ飛行機に乗らないように心がけましょう。
もし仕事などどうしても飛行機に乗らないといけないのであれば、歯医者でサンダラックという材料で仮封を行い、圧を逃がすようにするという方法もあります。
2-4 痛みが出たら、帰宅後はすぐに治療を
飛行機に乗っているときに痛みが起きたのであれば、帰宅した後で速やかに近くの歯医者で診察を受けることです。もしかすると、それまで自覚症状がなくても、飛行機に乗った時に痛みを感じたことがきっかけで虫歯と診断されることもあるかもしれません。
口腔内の症状は早期発見すれば、しっかり治療できます。虫歯のある時はもちろんのこと、虫歯がない・自覚症状がなくても、定期的に歯科クリニックを受診してマウスケアを行っておくといつまでも健康な状態を維持できます。
3.虫歯だが飛行機に乗らなければいけない時の対処法
3-1 鎮痛剤を飲む
できることなら虫歯の治療を行っているときに飛行機に搭乗すべきではありません。しかし例えば海外出張しないといけないなど、どうしても飛行機に乗らなければならないケースもあるでしょう。その場合には鎮痛剤を服用するのがおすすめです。
鎮痛剤を飲めばある程度痛みを軽減することは可能です。治療している歯科クリニックに事情を説明すれば、痛み止めを処方してくれるでしょう。
また航空会社に事情を説明すれば、鎮痛剤をもらえる場合もあります。しかし鎮痛剤はすぐに効くわけではないので、できれば前もって準備して服用した上で飛行機に乗るのがおすすめです。
3-2 仮眠を取る
仮眠をとるように心がけることも歯の痛み対策として有効です。眠っている間は痛みを感じることもありません。特に長距離のフライトの場合、仮眠を機内でとるように心がければ痛みを感じる時間も短くできます。
4.事前の予防法
虫歯の人が飛行機に搭乗する際には、まず虫歯をしっかり治療するのが最優先です。しかし中には治療が完了する前にどうしても飛行機を利用しないといけないケースもあるでしょう。
その場合には、治療している歯科クリニックで医師に事情を説明するのがおすすめです。飛行機を利用する直前に応急処置など、痛みが極力出ないような対処をしてくれるところも多いです。
5.まとめ
飛行機の搭乗中は急激な気圧の変化によって、歯の痛みを感じる人もいます。特に虫歯の治療の終わっていない人が痛みを感じるケースが多いので、できることなら搭乗前に治療を完了させておきましょう。間に合わないのであれば、鎮痛剤の服用がおすすめです。
監修医
貝塚 浩二先生
コージ歯科 院長
経歴
1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年~ (医)友歯会ユー歯科~ 箱根、横浜、青山、身延の診療所 勤務
1985年 コージ歯科 開業
1996年~2002年 日本大学松戸歯学部生化学教室 研究生
歯学博士号 取得
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る
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