健康な歯は神経が通っており、きれいな白色を保っています。しかし、外傷や進行した虫歯などで神経が死んでしまうと、その歯だけが黒ずんでしまうことがあります。一本だけ黒ずんだ歯は目立つため、白色に戻したいと考える方も多いでしょう。しかし、通常のホワイトニングでは神経が死んだ歯を白くすることはできません。
そんな時に使われるのが「ウォーキングブリーチ」です。ここでは、ウォーキングブリーチの方法やメリット・デメリットについてご紹介します。歯の黒ずみでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
※ 掲載している平均費用はあくまで参考のためのものであり、施術内容や症状によって費用は変動する可能性があります。必ず各医院の治療方針を確認し、ご自身の症例に合った歯医者さんを選んでください。
この記事の目次
1.ウォーキングブリーチとは?
神経を取った歯の黒ずみに効く
歯の根本をぶつけて打撲したり、虫歯などの疾患が原因で、歯の神経は比較的簡単に死んでしまいます。神経が死んだ歯は黒ずんでしまうことが多く、元に戻ることはありません。
黒くなる原因は、血液などが歯に染み込んで色が付くことです。歯の構造は、表面が硬いエナメル質、内側が神経に通じる穴が無数に空いている象牙質に分かれています。黒ずみは象牙質で起こるため、エナメル質を漂白するホワイトニングでは白く戻すことはできません。
そこで使われるのが「ウォーキングブリーチ」です。ウォーキングブリーチは、歯の中に漂白剤を入れることで象牙質を漂白し、黒ずみを取り除く方法です。漂白剤を入れたままの状態で1週間から10日間生活するため、「歩きながらの漂白」という意味でウォーキングブリーチと呼ばれています。
歯茎も漂白できる
歯の神経が死んで黒ずむのは歯だけではありません。歯の根っこも黒ずむと歯茎から透けて見えるため、歯茎も黒ずんでいるように見えてしまいます。
歯も歯茎も黒ずんでいると違和感があり、気にする方も多いでしょう。ここでも役立つのが「ウォーキングブリーチ」です。歯茎そのものが黒ずんでいるわけではなく、歯の根っこの黒ずみが原因なので、漂白することで元の色に戻ります。
ただし、歯が黒ずんでいなくて歯茎だけが黒い場合は、他の原因が考えられるため、歯医者さんに相談することをおすすめします。
歯茎が黒ずむ主な原因
・神経が死んだ歯の根本が透けている
・メラニン色素によるもの
・金属のカスが歯茎の中に入ってしまっている
・金属の土台を入れており、それが透けている
・差し歯を入れていて根本が露出している状態
2.ウォーキングブリーチの治療について
治療の流れ
治療法は基本的に、歯の内部に漂白剤を詰め、歯の表面にリン酸を塗布し、蓋をして時間を置くというサイクルを希望の色になるまで繰り返します。通常は4回から5回程度ですが、元々の色やどれくらい黒ずんでいるのかによって回数に違いがでます。詳しくみていきましょう。
①まずはレントゲンで中や根本の様子を確認する
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②漂白剤を入れる場所を作る
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③根っこの部分に漂白剤が染み込まないよう蓋をする
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④歯の表面にリン酸を塗布し、洗い流す
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⑤1週間~10日ほどしたら色をチェックし、好みの色になるまで繰り返す
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⑥色に納得したら詰めて終了
治療期間
希望の色に近くなるまで数回薬を取り替えるため、通常1ヶ月前後かかります。
費用
ウォーキングブリーチの治療は、2006年までは保険診療の対象でしたが、現在は自由診療となっています。そのため、費用は歯科医院によって異なります。
一般的な相場は、一度の施術で1,000~2,000円程度です。ただし、これはウォーキングブリーチのみの価格であり、レントゲンやその他の処置が必要な場合は別途費用がかかります。また、毎回細かく費用を計算するのではなく、一律で15,000~30,000円、または初回は15,000円で次回以降は3,000円といった価格設定をしている歯科医院もあります。
ウォーキングブリーチを希望する場合は、事前に歯科医院に問い合わせておくと安心です。
3.ウォーキングブリーチのメリット
歯を削る量が少ない
歯に穴が空いていない場合は、漂白剤を詰める穴を確保しなければなりません。しかし、すでに空いている場合にはそれ以上削る必要はなく歯の負担が少ない施術です。
痛みがない
すでに神経が死んでいるため、削っても詰めても痛覚を刺激することはありません。虫歯治療と違い、いつ訪れるともわからない痛みにビクビクすることなく、ゆっくり施術を受けられます。
セラミッククラウンよりも安価
セラミッククラウンの相場は、8万円から15万円ほどとウォーキングブリーチに比べて高額です。また、セラミッククラウンは厚みがあるため、かなり歯を削る必要があります。歯の神経はすでにないとはいえ、なるべく形を残しておいたほうが長持ちします。できるだけ自分の歯を残しておくほうが、口内環境にはプラスになります。
4.ウォーキングブリーチのデメリット
多少の色戻りがある
黒ずんでいる歯を白く戻すことができるウォーキングブリーチですが、しばらく経つと少し色が戻ります。多くは、数カ月から1年ほどでみられますが、完全に戻る訳ではありません。
ガスが発生する場合がある
歯の中に入れた漂白剤の漂白反応で、ガスが発生する場合があります。根本に向かって圧力がかかり、圧迫されて痛みがでる、圧力で詰め物がとれる、歯にヒビが入りやすくなるといったことが稀に起こります。
違和感や痛みがある場合は早めに担当の歯科医師に相談しましょう。
治療中は指示や期間を守る必要がある
中に入れた漂白剤は定期的に取り替える必要があり、仕事の忙しい時期などやテスト期間などは外して治療することをおすすめします。しっかり、取り換えの期間を守らない場合、思わぬ副作用に見舞われることもあります。
5.ウォーキングブリーチの条件
神経がない歯であること
ステイン汚れや、虫歯での着色、加齢による黄ばみにはウォーキングブリーチは不向きです。
ウォーキングブリーチは歯に穴を開けて漂白剤を入れるため、神経のある状態の歯では大変な痛みを伴います。また、健康な歯を傷つけてしまうためおすすめできません。ステイン汚れや加齢による黄ばみには、歯磨きなどのホームケアや、クリーニング、ホワイトニングが効果的です。
歯の形が残っていること
残っている部分が少ない、または、もろくなっている場合は、ブリーチして残しても歯が欠けてしまうおそれがあります。その場合は、漂白をせずラミネートベニアや、被せ物で対処します。
6.ウォーキングブリーチできない場合の対処法
歯のマニキュア
ウォーキングブリーチが効かない場合や、ブリーチ自体できない場合は、歯のマニキュアでカラーリングすると簡単にカバーできます。
ジェルネイルと同じ要領で、ベースコート、マニキュア、トップコートの順に塗り、光を当てて仕上げます。
ただし、効果は数カ月ほどで徐々に薄れてしまうため、定期的に塗り直す必要があります。
■価格
1本あたり2,000~3,000円が相場ですが、自由診療なので価格は歯科医院ごとに差異があります。
■期間
通院は1度だけ、30分から1時間で完成します。
セラミッククラウン
大きな穴が空いている、ブリーチではなく詰め物も必要という場合には被せ物をすすめられる場合もあります。
セラミックは自然な色で天然歯と見分けがつかないほど自然です。美しい歯を希望する方が差し歯として使用することも多いですね。
■価格
1本あたり8~15万円が相場ですが、自由診療なので価格は歯科医院ごとに差異があります。
■期間
1回目に型取り、2回目に仮合わせ、3回目に装着の3回の通院が必要で、セラミッククラウンが出来上がるまでに2週間前後時間が必要です。
7.まとめ
神経が死んでしまって黒ずんでしまった歯の漂白にはウォーキングブリーチが効果的です。時間は少しかかりますが、自分の歯を活かしながら、美しい歯を取り戻せる方法です。希望する場合は、歯科医院に相談しましょう。

監修医
飯田 尚良先生
飯田歯科医院 院長
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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