歯が黄ばんでいる・色素沈着している人は、人前で歯を出して笑うことができないといった悩みを抱えがちです。このような歯の変色ですが、美容診療などに行けば治療が可能です。歯科クリニックの中には、ホワイトニングと言って歯を白くする治療を実施しているところも多いです。
もし歯の黄ばみで悩んでいるのであれば、美容診療で治療をしましょう。ただし治療を行った結果、他の問題で悩まされるケースもあります。その中でもしばしば報告されている、“ホワイトニング後に歯がしみる現象”について紹介します。
1.ホワイトニング後に歯がしみる原因
薬剤が原因
ホワイトニングをした後に歯がしみる・痛む原因ですが、治療に使われた薬剤にあると言っていいでしょう。
通常、ホワイトニングでは35%程度といった高濃度の過酸化水素で歯を白くしていきます。消毒薬としてオキシドールが薬局でも販売されていますが、これの濃い薬剤バージョンと思いましょう。オキシドールで消毒をしたことのある人ならお分かりでしょうが、傷口に塗った時に痛みを感じるはずです。この原理と、基本的には同じです。
2.薬剤がしみやすくなっている状態とは
2-1 歯ぎしりにより歯が削れている
ホワイトニングをした後に歯がしみる人としみない人がいます。しみる人にはいくつかの典型的なタイプがあります。まずは歯ぎしりをよくする人です。歯ぎしりをすると、頻繁に歯に大きな負担をかける形になります。その結果、歯が削れてしまうことがあるのです。
このような人の歯にホワイトニング薬剤を塗布すると、より歯の内部にまで薬剤が浸透しやすくなります。このため、歯がしみるとか痛みを感じるといった症状が出やすくなるのです。
2-2 エナメル質のひび
歯ぎしりをする人などに見られる現象ですが、歯を頻繁にくいしばると歯の表面を構成するエナメル質が割れてしまうことがままあります。するとホワイトニング薬剤を塗った時、このエナメル質の割れ目に薬剤がしみだして、内部に浸透して痛みが強くでることもありえます。
2-3 虫歯の治療後
虫歯があって治療後にホワイトニングをする場合も、痛みの出る可能性が高くなります。虫歯の治療として、患部を削る処置がとられることが多いです。その部分に薬剤を塗ると先に紹介したのと同じ理屈で、歯の内部に薬剤がどんどん浸透してしまいます。
その結果、痛みを伴うことがあるのです。虫歯の治療跡を発見した場合、痛みがなるべく出ないように、対象の箇所をガードしてホワイトニング薬剤を塗布する施術を行っているクリニックも見られます。
3.ホワイトニング後に自分でできる対処法
3-1 痛みが引くのを待つ
もしホワイトニングの施術を行った後に歯がしみるのであれば、とにかく我慢することです。この歯のしみ・痛みは、ずっと続くものではなく、あくまでも一過性のものです。個人差がありますが、だいたい施術を行って24時間も経過すれば、治まってくるはずです。ですから歯がしみる・痛むのであれば、1日だけ我慢してみて様子をみて、痛みが引くのを待ってみましょう。
3-2 冷たい飲料などは避ける
ホワイトニングをした後に歯がしみるのであれば、それは知覚過敏と同じような状態にあると思いましょう。知覚過敏はコマーシャルなどでも流れていますが、冷たい飲み物を飲んだ時に顕著に症状が現れます。
実は私たちの歯の周辺に走っている神経は、熱いとか冷たいといった刺激をすべて痛いと感知してしまうのです。ですから冷たい飲み物・熱い飲み物は、症状が出て1日は避けるようにしましょう。
3-3 歯磨き粉を変える
歯磨き粉の刺激でも歯がしみてしまうことがあります。最近では知覚過敏用の歯磨き粉も出ているので、当面はこちらで歯磨きをするのもおすすめです。知覚過敏用の歯磨き粉は、硝酸カリウムが配合されているものが多いです。硝酸カリウムをしみている歯につけると、一種のコーティング作用を発揮します。歯への刺激を最小限に抑えることで、痛みを出にくくするわけです。
このような知覚過敏用の歯磨き粉ですが、ドラッグストアなどでも販売されているので一度チェックしましょう。
3-4 痛み止めを服用する
ホワイトニング薬剤を使って歯がしみる・痛むという人もいますが、そこまで強い痛みになることは少ないでしょう。ただ、稀なケースとして、痛みがひどく耐えがたいという事例もあります。
その場合には、痛み止めを服用する方法も考えないといけません。こちらも市販されている鎮痛剤を活用することになるでしょう。痛み止めを飲む場合には、痛くなりはじめに早めに飲むことが大事です。痛みのピークに達したところで服用してもなかなか効果が出ないからです。
3-5 リカルデントガムをかむ
よくリカルデントガムのコマーシャルが放映されていますが、このリカルデントに配合されている成分も、ホワイトニング後の歯のしみや痛みの軽減に効果的です。リカルデントには、エナメル質や象牙質のひびなどの隙間を埋めるCPP-ACPという成分が配合されています。
ホワイトニング薬剤が歯の奥深くに浸透するのを妨げてくれるのです。もしリカルデントガムをかむのであれば、30分くらいは飲食やうがいをしない方が効果も持続しやすくなります。
4.事前に対策することで防ぐことは可能
4-1 虫歯を治してから治療
先ほども紹介したように、虫歯の状態でホワイトニング治療をすると歯がしみやすくなります。虫歯菌は歯を溶かす性質があるので、虫歯にかかっている歯にホワイトニング薬剤を塗布すると、溶液が歯の奥に浸透しやすくなって、激痛を伴うこともあります。
ですからホワイトニングを希望している人で虫歯にかかっているのであれば、まずは虫歯の治療を優先させましょう。そして虫歯を治療した後にホワイトニングの施術を受ければ、痛みに悩まされることは減ります。
4-2 エナメル質のひびを埋めておく
歯は表面がエナメル質、その下に象牙質があります。エナメル質には知覚がないので、ホワイトニング薬剤を塗っても痛みが起こりません。
しかしエナメル質にひびが入っていて、象牙質がむき出しになっていると痛みを感じやすくなります。知覚過敏の方はエナメル質にひびが入っている可能性が高いです。そういうときは、エナメル質のひびを埋めてからホワイトニングの施術を受けましょう。カルシウムなどでひびを埋めるなどのトリートメントをしてからホワイトニングを行うと、歯のしみもあまり感じなくなるでしょう。
4-3 オフィスホワイトニングを利用する
ホワイトニングにはクリニックで施術を行うオフィスホワイトニングと、自分で行うホームホワイトニングがあります。ホワイトニング後の歯のしみが心配というのであれば、プロの歯科医師の行うオフィスホワイトニングを受けるのがおすすめです。
たとえば歯ぎしりなどによって歯の先端が削れたりヒビが入ったりしている場合、その部分をガードしながらホワイトニングを実施してくれます。素人の私たちには、どこが削れているか、ヒビが入っているかなどを判別するのはほぼ不可能でしょう。
5.他の方法を試してみる
5-1 低濃度のホワイトニング剤を使用する
ホワイトニング剤の濃度と歯のしみ・痛みの程度は比例します。もし、ホワイトニングの施術を受けた後に歯がしみたというのであれば、もっと低濃度のホワイトニング薬剤で施術をお願いしてみましょう。まったくしみない保証はできないものの、前回と比較すると痛みの度合いもだいぶ軽減されるはずです。
5-2 歯科を変えてみる
ホワイトニングで歯がしみた原因として、クリニックの処置に問題がある可能性も否定はできません。どうしてもしみて辛いというのであれば、他のクリニックで引き続き施術を受けてみる方法もおすすめです。
たとえば、ホワイトニング薬剤を塗布する前にしみ対策として、コーティング剤を塗るという処置をとっているクリニックも見られます。このような施術を行えば、ホワイトニング薬剤が歯の内部に浸透することもなく、刺激を受けずに済みます。
6.まとめ
ホワイトニングに興味があっても、しみるかもしれないといわれると二の足を踏んでしまう人もいるでしょう。ただ今回ご紹介したように、きちんとした対策を講じれば、歯のしみ・痛みは最小限に抑えることも可能です。
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監修医高村剛先生
高村歯科医院 院長
■院長経歴
出身校(最終学歴)北海道医療大学 歯学部 歯科医師歴24年目
歯科医師を目指したきっかけ:父親が歯科医師で、背中を見て歯科医師になろうと思った。