この記事の目次
1.よい歯並びの条件とは
上下の前歯の距離
歯並びには、一般的に美しいといわれる噛み合わせの形があり、矯正治療は大まかにはこの形を目指して進められます。とはいえ、歯の大きさや骨格が人それぞれ異なる分、理想形にも個人差があります。最終的には、そのお子さんにとっての最適な形に近づけることを目標に治療が進められます。
そのうち、上下の前歯については、きちんと噛み合わせたときに、上の前歯が下の前歯よりも2mm~3mmほど前に出ているのが理想となります。その際、上の前歯が下の前歯の3分の1ほど被さっている状態になります。
上下の前歯の中心
正しい歯並びの条件のひとつとして、上下の前歯の中心(正中線)が合っているかも大事な要素となります。歯と歯の隙間がきれいに真っ直ぐになるのが理想です。これが合っていないと、顎の関節に悪影響を及ぼす恐れがあります。
上下の歯の噛み合い
前歯は、上下の歯の隙間が並行になるのが理想ですが、犬歯より後ろの歯は、上下の歯が交互に並ぶのがきれいな状態です。互い違いに隙間なく接した形が正しい噛み合わせとなります。
2.悪い歯並びの例
歯がガタガタに並んでいる
前歯が互い違いになるなど、ガタガタに生えている状態です。顎の骨と歯の大きさのバランスがとれておらず、歯の生えるスペースが不足するとこのような歯並びになってしまいます。顎が小さいお子さんは要注意です。
下の歯が前歯で隠れている
前歯が深くかみすぎて、下の前歯がほとんど見えない状態です。
下の前歯が上の前歯の裏の歯肉に食い込みやすいので、傷つけてしまう恐れがあります。このまま出っ歯になる可能性もあるでしょう。
前歯が噛み合っていない
奥歯を噛み合わせても、前歯が噛み合わずに隙間ができてしまう状態です。上下の前歯がくっつかないので、食べ物をうまく噛みきることができません。また、空気がもれてしまうことからサ行が発音しづらくなることもあります。
受け口
下の歯や下顎が前に出ている状態です。上下の歯の噛み合わせの位置が、正常な状態の反対になってしまっているのです。歯に問題がある場合と、顎に問題がある場合に分けられます。
出っ歯
上顎の前歯が、必要以上に前に出ている状態です。それ以外にも、下顎が通常よりも後ろに下がって出っ歯に見えるケースも多いとされています。顎の成長が十分でないと、このような出っ歯になりがちです。
口元が出ている
横から見たときに、口元が前に突き出ている状態です。歯が前のほうに出ているので、唇をしっかりと閉じることがスムーズにできないでしょう。
すきっ歯
歯の間に隙間ができている状態です。隙間から空気がもれてしまうので、言葉の発音に問題が生じる可能性があります。特にサ行やタ行の発音がしにくいでしょう。
前歯に下の歯が被さる
特定の歯が正常な噛み合わせとは逆に、、上の歯が内側、下の歯が外側になった状態です。左右にもずれてゆがみが生じるので、顎や顔が曲がって見えてしまいます。
3.歯並びの悪さで生じる問題
虫歯や歯周病
歯がきれいに並んでいないと、歯ブラシを使っても磨き残しが多くなってしまいます。でこぼこした部分などに歯垢や汚れが溜まりやすいので、虫歯には十分注意しなければなりません。また、細菌も増殖しやすいことから歯周病のリスクも高まります。
顎のトラブル
噛み合わせがずれていると、顎が正常に動かせなくなります。そのため、顎が痛んだり、顎の関節に雑音が起こったりしやすくなります。
発音
言葉を発するときには、舌の動きが重要となります。ところが、歯と歯に隙間があったり歯が真っ直ぐに生えていなかったりすると、舌を正しく動かすことができません。そのために発音に問題をともなうことが多いのです。
全身の不調
噛み合わせの悪さは、全身にまで悪影響を及ぼします。正しい姿勢を保つことが難しく、肩こりや腰痛が起こりやすいでしょう。
精神的苦痛
噛み合わせがよくないと、見た目の印象にまで悪影響をもたらしかねません。口元は隠せませんから、コンプレックスから人前に出ることが苦痛になってしまうお子さんも少なくないでしょう。
特に矯正治療が一般的になっている欧米の人などからは、教育レベルが低いと受け取られてしまうこともあります。
4.顎を発達させて予防する
よく噛むことが重要
顎の骨が成長している子どもの時期には、特によく噛んで食事をすることが大切です。
子どもが好むハンバーグやカレー、スパゲティなどはそこまで噛まなくても飲み込めてしまいます。このようなやわらかいものを中心とした食事を続けていると、顎は十分に発達することができません。よく噛まなければ食べられない食材などを意識してメニューに取り入れましょう。
顎の骨の成長には段階がある
4歳~5歳くらいに顎が大きく発達してきて、永久歯の生えるスペースが作られます。そして、奥歯が生えてくる6歳ころになると、永久歯のためのスペースをさらに確保しなければならないので、顎は再び発達します。永久歯が生え揃う14歳ころには上顎の成長は止まりますが、身長の成長にともない下顎は発達し続けます。
顎の成長に重要な乳歯の時期
2歳~6歳ころに上下に生え揃ってくる乳歯には、顎の成長を促す働きがあります。また、乳歯が生えることで顎のラインを整えて顔の形が決まってくるのです。永久歯に生え変わるまでの乳歯の時期は、顎を正常に発達させるために欠かせないというわけです。
顎が小さいと…
顎がしっかりと成長しないと、永久歯が生えるスペースが足りなくなってしまいます。すると、歯が真っ直ぐに生えることができずにデコボコと乱れた歯並びになってしまうのです。
近ごろは顎の成長が不十分なために歯並びが悪い子どもが目立っているようです。きれいな歯並びのために食生活などに気を使い、お子さんの顎の発達を促してあげましょう。
5.癖をなくして予防する
指しゃぶり
指しゃぶりの程度にもよりますが、指をお口に入れている状態を長く続けていると、前歯に隙間ができたり、前歯が前に出てきたり、噛み合わせが左右にずれたりと、歯並びが乱れやすいので気をつけましょう。
乳歯の段階での軽い歯並びの悪さでしたら自然に治ることも期待できますが、5歳を過ぎても指しゃぶりをしていると矯正治療が必要なほど歯に悪影響を及ぼす可能性が高くなります。
とはいえ、無理やり指しゃぶりをやめさせるのも子どもの精神上よくありません。癖が出ないように工夫をしてあげる必要があるでしょう。
噛み癖
おしゃぶりやタオル、爪などを噛むのが癖になっている子どもも、歯並びや顎の成長に問題を生じる可能性があります。4歳ころまでには、このような癖をやめさせたほうがよいでしょう。強制的に禁止するのではなく、理由をきちんと説明して、お子さんが自分からやめないといけないと思えように誘導するのが理想です。
口呼吸
呼吸は鼻でするものですが、いつもお口を開けているお子さんはお口で息をしていると疑ったほうがよいでしょう。お口の中が乾燥して菌が繁殖すると、虫歯になりやすいので注意してください。乳歯が虫歯になり抜歯をしてしまうと、永久歯の歯並びにまで影響するので、乳歯の時期から気をつけなければなりません。
また、顔の筋肉や骨格の発達に問題が起きるので、顎がなくて口元が出ている「アデノイド顔貌」という独特な顔つきになりやすいでしょう。食事で噛む回数が少なく、舌や口周りの筋肉がしっかりと鍛えられないと、口呼吸になりやすいといわれています。
舌を突き出す癖
食べ物を飲み込むときに舌を突き出したり、ボーっとしているときに無意識に舌が歯の間から出ていたりします。このような癖があるとお口の中の下あたりや前のほうに舌が置いてあるので、歯を押してしまっていることが多く、歯並びの悪化を招きかねません。
頬づえ
頬づえが癖になっていると、噛み合わせが深くなったりしてずれてしまいます。また、顎の成長に支障をきたしてゆがんでしまうでしょう。5歳~6歳ころに出てきやすい癖で、子どもも無意識にやってしまうようです。まずは頬杖をする癖があることを気づかせてあげましょう。
6.永久歯の歯並びのために虫歯予防を
乳歯の虫歯で歯並びが乱れる
乳歯が虫歯になり抜歯をすると、その空いた隙間に前後の歯がずれてきたりします。そうなると、永久歯のスペースがなくなり正常に生えてこられなくなります。結果、永久歯が変な方向に生えたり、ずれたりする原因となるのです。
また、乳歯が虫歯に感染していると、根っこの部分からその下に控えている永久歯にまで影響がおよぶ恐れがあります。このようなリスクを防ぐために、乳歯であっても、適切な虫歯治療が必要なのです。
乳歯のころから歯磨きをしっかり
そのうち抜け落ちる乳歯だからといって、虫歯になってもいいという考えは捨ててください。乳歯のころから、仕上げ磨きをしっかりと行って虫歯を防ぎましょう。
特に、前歯の歯と歯の間や、歯茎との境目、奥歯の歯と歯の間、奥歯の噛み合わせ面にある溝は虫歯になりやすいので、磨き残しのないように丁寧なブラッシングが必要です。虫歯菌は寝ている間に繁殖しやすいので、夜寝る前の仕上げ磨きが重要です。
7.まとめ
癖や習慣が原因となって、歯並びが悪くなるケースが多いということがおわかりいただけたでしょうか。
歯並びを美しくするためには、家族みんなで協力しなければなりません。もちろん、お子さんにもきちんと説明して一緒に取り組んでいきましょう。指しゃぶりなどの癖が直らないなどといった悩みがある場合には、歯医者さんに相談してもよいでしょう。
小児矯正は子どもの骨格の成長に合わせて、早い時期から開始したほうがメリットが多いのです。お子さんの歯並びのためには、少しでも不安のあることは早めに歯医者さんに相談してください。