【執筆】菊地 由利佳先生
この記事の目次
1.虫歯の症状と治療方法【進行度別】
虫歯は大きく分けて4つの段階に分かれます。
それぞれの段階によって、症状や治療法が違ってきます。
LCO(最初期の虫歯)の症状
虫歯の初期段階で、歯の表面のみが脱灰している状態です。
健康な歯と違い、表面の色がまだらに白色っぽく透明感がなくなります。
脱灰が進むと、黄色や茶色っぽく歯の色が変化していきます。
まだ歯に穴ができていない状態で、再石灰化で元の健康な歯に戻ることができます。
治療方法
歯の表面のプラークを取り除き、高濃度のフッ素を歯面に塗布する。
フッ素を塗ることで、歯の再石灰化を促進させます。
LC1(初期の虫歯)の症状
歯の表層のエナメル質に虫歯菌が侵入し、歯に穴を作り出している状況です。
エナメル質までの虫歯だと症状は出にくく、気が付きにくいことが特徴です。
歯の溝が茶色くなったりします。
小さな穴に汚れが付着しやすくなり、虫歯が進行しやすくなります。
治療方法
初期の段階であれば、フッ素治療で進行を防ぐことができ、削らずに経過観察をすることもあります。
穴になっている場合には、虫歯の部分を染め出して調べ、虫歯を除去します。
穴をプラスチックの材料などで詰めて治療完了となります。
LC2(中程度の虫歯)の症状
虫歯菌がエナメル質から象牙質にまで進行した状態をいいます。
象牙質はエナメル質より柔らかいので、硬いエナメル質よりも早く虫歯が進行し、歯の中がスカスカの柔らかい状態になっていきます。
歯の中が透けて黒く見えたり、大きな穴になります。
冷たいものや甘いものでしみたり、穴の中に食べ物が詰まると痛みを感じます。
固いものを噛むと虫歯の穴に当たり、激痛で噛めなくなることもあります。
虫歯が進行すればするほど、しみたり痛みやすくなります。
虫歯の穴に汚れがたまるので、口臭の原因にもなります。
治療方法
虫歯部分を染め出して、虫歯になってしまっている部分をすべて取り除きます。
神経に近い象牙質まで虫歯になっている場合は、水や削る刺激がしみるので、治療には麻酔が必要になります。
残る歯質の量によってプラスチックの材料で詰めるだけであったり、型採りをおこなって被せ物をしたりします。
LC3(後期の虫歯)の症状
虫歯が象牙質から歯の神経がある歯髄にまで、さらに進行してしまった状態をいいます。
歯髄の中が虫歯菌に感染すると、歯髄炎を起こし冷たいものを飲むだけで何数秒強い痛みが続きます。
自発痛と言い、何もしていなくてもズキズキと眠れないような痛みがでてきます。
歯髄炎を起こすと、歯の神経は死んでしまい歯髄の中は腐敗していきます。
治療方法
虫歯菌に感染してしまった歯髄は腐敗していくので、神経をきれいに取り除かなければいけません。
麻酔をし、虫歯菌に感染した神経をすべて取り除きます。
根管治療に当たる、根の中の消毒治療が必要になります。
神経を抜くと痛みはすぐにおさまりますがC1、C2の虫歯とは違い、治療回数がかかります。根管治療は、虫歯をとって1回で終わるという治療ではありません。
さらに、根管治療が終わったあとも治療は続きます。
残っている歯の量が少ないので、歯の根に土台を立て、土台を覆うような被せ物(つまり、差し歯)の状態にしないといけなくなります。
保険治療だと奥歯は銀歯になってしまうので、目立ちにくい白い歯にしたいのであれば費用がかなりかかります。
LC4(重度の虫歯)の症状
虫歯が進行しすぎて、歯の形が崩壊してしまっている状態です。
歯の根だけがかろうじて残っており、食事をしても食材を噛み切ることができません。
神経が死んでしまっているので、冷たいものでしみたり痛んだりしなくなります。
噛み合っていた歯が延出(伸びてしまうこと)したりと、歯並びや噛み合わせも変わってしまいます。
歯や歯茎から膿が出てくることもあります。
治療方法
歯の根まで虫歯になっていると、残っている歯が少なすぎて土台を立てたり被せ物ができなくなります。
したがって、歯を保存(残す治療をすること)できないこともあります。
抜歯してインプラントを入れたり、入れ歯にしたり、隣の歯を削ってブリッジにするなど、抜いた部分を補うための補綴(ほてつ)治療を行います。
補綴治療:なくなった歯の代わりとなる人工物を入れ、歯の働きを補うための治療
2.虫歯は早期発見・治療が肝心です
初期の虫歯は痛みがありません。
痛みが出てからの治療だと、歯を削らないといけなくなってしまいます。
逆に放置しすぎて歯の神経が死んでしまうと、痛みすらなくなってしまいます。
死んでしまった歯を放置していると、根先性歯周炎(根の先に膿の袋ができる病気)になってしまいます。
「まだ痛みがないから…」「痛みがおさまったから!」といって放置していては危険です。
虫歯は感染症
生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には、虫歯菌はいません。
実は、虫歯は感染症です。虫歯菌がうつると、一生口の中に住み着くことになります。
ここでは、どうして虫歯になってしまうかをお伝えします。
虫歯が出来るメカニズム
虫歯ができるメカニズムには、3ステップあります。
・虫歯ができるには口の中に虫歯菌がいること
・虫歯菌の餌となる食べかす(糖)が口の中に残っていること
・餌のお皿代わりとなる歯があること
この3つがそろうと虫歯になります。
虫歯菌は食べかすを餌として、ベタベタのプラークとなり歯の表面に付着して酸をだします。
この酸が歯を溶かします。これを脱灰(だっかい)と言います。
脱灰が進むと虫歯の穴ができます。
虫歯が出来やすい人とは?
虫歯菌に感染しないようにするのは、中々難しいことです。
そうなると、虫歯菌に感染しても虫歯にならないようにする方法を実践しなければいけません。
虫歯の餌となる糖(つまり食べかす)を、なるべく口の中に停滞させないことが大切です。
歯磨きの回数が少ない人、磨き残しが多い人は虫歯のリスクが高くなります。
とくに甘い糖の入ったもの、酸性の強いものは歯を溶かしやすく、虫歯を進行させやすい食品です。
常に飴やグミを食べたり、炭酸飲料やカフェオレなど飲んだり、間食が多い人も虫歯リスクが高いと言えます。
唾液が少ない人も口の中の自浄作用が弱く、口内が酸性に傾きやすいので、虫歯リスクが高いと考えられています。
3.実は虫歯じゃない歯痛とは
虫歯以外でも歯が痛む場合があります。
虫歯に似た症状があるものをいくつかご紹介します。
歯周病
歯茎が炎症を起こすと、歯がズキズキと痛むように感じます。
噛んだり、たたいたりすると歯周病になっている歯が痛みます。
歯周病で下がった歯茎はしみやすくなります。
歯髄炎
虫歯が進行すると、歯髄炎(歯の神経と血管が通っている歯髄が炎症を起こすこと)になります。
歯髄炎は、転んで歯を強くぶつけてしまったり、割れたりしても起こします。
鎮痛剤が必要なほどのズキズキとした痛みが出ることもあります。
親知らず
親知らずには歯ブラシがあたりにくく、磨き残しやすい歯です。
親知らずを清潔にできていないと、周辺が腫れて智歯周囲炎になります。
歯ブラシで当てると痛かったり、何もしていなくても腫れて痛みがでたりします。
知覚過敏
冷たいものや甘いものでしみます。
虫歯と違い一過性のもので、慣れると痛みがなくなります。
歯ブラシで当てたりしてもズキッと痛むことがあります。
咬合性外傷(こうごうせいがいしょう )
噛み合わせが悪かったり、歯ぎしりや食いしばりが強かったりすると、負担のかかっている歯を噛んだ時に痛みを生じます。
咬耗(強く噛むことによって歯がすりへっていくこと)してしまった部分は、知覚過敏と同様、冷たいものでしみたり、固いものを噛むと痛みを感じます。
4.まとめ
初期の虫歯を見つけるのは、自分ではなかなか難しいものです。
早期に虫歯を見つけられれば、削らずに済むこともあります。
また、虫歯にならないようにするには正しい歯磨きをすること、間食をだらだらしないこと、定期的にフッ素を塗って歯を強くすることです!
歯医者さんに定期検査をおこなうことで、虫歯予防、早期の虫歯発見ができます。
症状が出てからではなく、出る前に検診に行きましょう。