ドラッグストアやネット通販などを見渡すと、市販で「ホワイトニング」とうたっている商品は歯磨き粉をはじめ、世の中にあふれています。とはいえ、どれも歯医者さんで行うホワイトニングの成分を越えるような効果はもちろんありません。市販で「ホワイトニング」とうたっている商品には、実際、様々な種類の薬剤があり、それぞれの特徴を知っておくことが、自分に合った効果を得る近道になります。
この記事では、まずホワイトニングのメカニズムについて理解していただき、数あるホワイトニング製品を自分の目で見極められるよう、薬剤に使用される成分について解説していきたいと思います。
1.ホワイトニングのメカニズム
過酸化水素が着色汚れを除去する主成分ですが、白く見えるために、実はそれ以外の要素も働いています。どうして、白くなるのか?歯の白さって、どういうこと?という疑問を、より深くご説明いたしましょう。
1-1 エナメル質や象牙質の明るさを増す
白くなるメカニズムでまず上げられる話としては、エナメル質や象牙質そのものの、色合いを明るくすることです。これは、過酸化水素ベースの着色汚れを除去することで得られます。ただし、これだけではありません。
1-2 エナメル質の乱反射を高める
エナメル質の下にある象牙質は、着色を落とし、ある程度明るさを増すことはできても、そもそも黄色いので、エナメル質が薄ければ、歯の色味は黄色みがかるのが自然です。日本人は欧米人よりもエナメル質が薄いので、健全な歯の色味自体、黄色みがかっているのです。
従って、いかに象牙質の色を、エナメル質を通すことで目立たなくするかが、ホワイトニングのもう一つのポイントとなります。ホワイトニングでは、エナメル質表面の乱反射を大きくして、象牙質の黄色みを目立たせなくする効果もあるのです。これをマスキング効果といいます。
2.歯を白くする薬剤ってどんなもの?
世間一般に言われているホワイトニングですが、実は2つの意味を持っています。一つ目は、フリーラジカルという過酸化水素による化学反応により色素が漂白されるもの、二つ目は歯の表面について歯を茶色や黄色く見せている汚れを落とすだけのものです。その二つの作用について詳しく見ていきます。
2-1 漂白する薬剤
・過酸化水素
オフィスホワイトニングで主に使われる成分が過酸化水素です。過酸化水素はオキシドールの成分として知られていますが、不安定な成分で、すぐに水と酸素(強いフリーラジカル)に分解されます。このフリーラジカルが、エナメル質や象牙質に浸透し、着色している有機質を分解することで、歯が白くなります。薬事法により、歯科医と歯科衛生士しか取り扱うことが許されていません。
・過酸化尿素
過酸化尿素は、尿素と過酸化水素に分解されるので、基本的な働きは過酸化水素と同じです。過酸化水素よりも刺激が弱く、ホームホワイトニングの主成分となっています。過酸化水素と同じく薬事法により過酸化尿素も歯医者さんでしか扱えないもので、ドラッグストアなどでの市販は禁じられています。
・酸化チタン
オフィスホワイトニングで、過酸化水素を使用する際に、その反応を高めるための触媒となっているのが酸化チタンです。光を照射することで、反応速度を高めることができます。
2-2 汚れを落とす薬剤
・ポリリン酸・メタリン酸
ポリリン酸やメタリン酸は、歯の組織ではなく歯の表面に付着した着色を分解する成分です。従って、エナメル質や象牙質に浸透した着色などを白くすることはできません。日本で市販されているホワイトニング歯磨き粉の主な成分の一つで、歯科医師免許のないホワイトニングエステサロンなどでも使われています。
3.ホワイトニング薬剤を扱う注意点
オフィスホワイトニングでは、歯医者さんが薬剤を適切に扱ってくれますが、ホームホワイトニングでは自分で管理しなければなりません。小さなお子様が要る場合には保管場所にも十分に注意する必要があります。覚えておくべき保管時の最適な温度と湿度について説明いたします。
・冷暗所で保存すること
ホワイトニング剤は、冷暗所で保存することが基本です。外気に触れないよう、しっかりとキャップを締めて、冷蔵庫で保存するのがベストです。ホームホワイトニングの主成分は過酸化尿素ですが、適切に取り扱わないと化学反応が勝手に起こってしまい、塗布するときにはまったく効果のないものになるリスクもあります。
また、ベストとされる保存温度は8度以下です。冷蔵庫で保存していれば、間違いはありませんが、夏場にホワイトニングする際、うっかり高温になるところに置きっぱなしにしないように、注意しましょう。使ったら、すぐに冷蔵庫に戻すのが基本です。
・使用期限を守る
ホームホワイトニング剤の使用期限は、購入からおよそ1年程度です。冷暗所で保管していたからといっても、使用期限を過ぎてしまえば、本来の効果を得ることは難しくなってしまいます。
・マウスピースの扱いにも注意
ホワイトニング薬剤を塗布するためのマウスピースの扱いにも、気を配りましょう。ホワイトニングが終わった後は、毎回常温の真水で洗い、気になる汚れがある場合には、柔らかい歯ブラシで洗いましょう。また、プラスチック製のマウスピースは、お湯で洗うとマウスピースが変形することもあるので、熱湯消毒などしないよう、使う度にきちんときれいにして保管しましょう。
4.まとめ
歯自体への漂白作用のあるもの、表面の着色だけを落とすものなど、ホワイトニング薬剤にも、いろいろあることが分かったと思います。ホワイトニングの目的と役割をしっかりと理解することで、より効果的なホワイトニングを実現してください。
この記事は役に立った!
監修医飯田尚良先生
飯田歯科医院 院長

■院長経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る