歯に付着した歯石を取り除くことは自宅でも可能ですが、自分で行うにはリスクがあることも忘れてはいけません。この記事では、自分で歯石取りを行う方法や注意点に加え、歯医者さんで専用の器具を使った方法と、双方の違いについても詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.自分で歯石を取る方法
1-1 用意するもの
歯石の除去を自分で行う場合は、いくつか準備するものがあります。まず、歯の汚れや、歯と歯の間にたまった異物などを取り除くことが必要ですので、そのための歯ブラシ、デンタルフロスを用意しましょう。
■デンタルフロス
デンタルフロスとは、歯の間にたまった歯垢(プラーク)を取り除く細い糸のことです。普段の歯磨きでは取りきれない歯の汚れを、かなりの確率で除去できることが期待されます。
■スケーラー
もうひとつ、歯石の除去で有効な道具がスケーラーです。一般で入手できるのは鎌型タイプのスケーラーで、通販等で購入できます。なお、自宅で使用した後は、アルコールやお湯などで必ず消毒してください。
1-2 歯石除去を行う際の注意点
自分で歯石を取る場合、もっとも気をつけたいのが器具の扱いミスによるケガです。使い慣れていない道具を使用して、歯と歯の間にこびりついた歯石を取り除くわけですから、ちょっとした手先のミスで歯や歯茎を傷つけたりする可能性があります。
また、歯の傷口からばい菌が侵入して虫歯になる怖れもあります。その他、虫歯と汚れの区別が付かずにスケーラーをあててしまい、虫歯を悪化させてしまうケースもあるでしょう。その他、歯茎を傷つけたことで起こる炎症にも要注意です。
1-3 スケーラーで歯石除去を行う手順
■Step1.スケーラーと鏡の用意
まずはスケーラーを持ちます。持ち方は、3本の指で持ち、1本の指を使って歯と固定するようにしましょう。また、鏡も必ず用意してください。洗面台の前に立っても良いですし、スタンドミラーでも構いません。大切なのは、口の中がしっかり見えることです。
■Step2.歯石取りスタート!
はじめに取りかかる部位は、下列前の歯です。スケーラーを歯の根元に合わせ、前から上に1ミリ程度動かしながら歯石を取っていきます。繊細に指を動かす作業となるため、手がすべらないよう注意してください。特に、歯や歯茎、頬裏を傷つけないよう気をつけましょう。
1-4 歯石除去後のケア
歯石を取り除いた後は、しっかりうがいをして歯石のカスなどが残らないようにしましょう。万が一出血した際も、血が止まるまでうがいを繰り返し、清潔な口腔内を保つようにしてください。
なお、「消毒したほうがいいのでは?」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、無理に消毒する必要はなく、口の中をすすぐだけでも基本的には十分です。念の為に消毒したい方は、通販で購入可能なうがい薬を使用しましょう。
2.歯石はなぜ除去しなければならないのか
2-1 歯周病の原因になる
歯石をそのまま放置すると、さまざまな症状や病を引き起こします。その一例が、歯周病です。
歯石は、細菌の塊であるプラークが唾液中のカルシウムやリンなどと反応して石のように固くなったものです。この石自体に害はありませんが、ところどころに小さな穴が開いていて、細菌が繁殖する格好の場所になってしまいます。その結果、口腔環境が悪化して、歯周病の原因にもなるのです。
2-2 口臭の原因になる
歯石がたまると、細菌が繁殖し、歯茎を傷つけます。それによって歯肉から出血が起こると、口の中には血なまぐさい臭いが蔓延し、口臭の原因になります。
また、歯周病を発病した後、症状が悪化して歯槽膿漏になると、細菌が死んだ状態である膿が出て口の中で異様な臭いを発します。そのため、歯周病になる前に歯石を取り除いて口の中をきれいな状態に保つことは、口臭予防につながるのです。
2-3 虫歯になりやすくなる
お口の中に歯垢(プラーク)がたまると、細菌が繁殖しやすい環境が作られてしまいます。細菌の増殖や歯茎の劣化は、当然虫歯のリスクを高めます。さらに、虫歯が増えることで歯の組織も弱くなり、口腔全体に悪影響が及ぶでしょう。虫歯にならないためにも、定期的に歯石を除去するクリーニングは不可欠です。
3.自分で歯石除去をする危険性
3-1 歯茎へのダメージがある
慣れない手つきでスケーラーなどの専用器具を使うと、どうしても手先のミスなどで歯茎や歯を痛めてしまいます。むやみに歯茎を傷つけ、出血を起こせば、歯周病や口臭の原因にもなるでしょう。自力による歯石取りはこうしたリスクのある行為なので、あまりおすすめはできません。
3-2 効果があまりない
自分で歯石除去を試みても、きれいに取れないことがほとんどです。そもそも、歯医者さんが行う歯石取りでも、超音波スケーラーとよばれる専用器具を用いなければ、きれいに取り除くことは難しいといわれます。
個人でそのような器材を用意するのは難しいので、完全な歯石除去には限界があるでしょう。歯石を十分に取り除いて歯と歯茎を健全にするには、専門家による処置が適切と言えます。
3-3 またすぐに歯石がついてしまう
もしも歯石を上手に取れたとしても、それで歯の状態が完全にクリーンになったとは言えません。歯石は付着しやすい性質を持っていて、歯の表面をきれいに磨き上げないと、すぐに歯石が付着してもとの状態に戻ってしまうおそれがあります。
歯の汚れを完全に取り除くには、歯科医院で行う専用のクリーニング器具で歯の表面をきれいにする必要があります。個人による歯石取りがおすすめできない理由も、ここにあります。
4.歯医者さんでの歯石除去の流れ
4-1 事前の検査
歯医者で歯石除去を行う場合、歯と歯茎を支える骨が、歯石取りに耐えられるような状態かどうかの検査を実施します。仮に歯周病が悪化していて、弱くなった歯茎にスケーラーなどの器具を当ててしまうと、出血や張れ、痛みを引き起こしてしまいます。
そのため、歯茎の状態を調べる事前検査が必要です。検査によって、歯周ポケットが深く、通常の方法による歯石除去が難しい場合は、外科的治療が試みられるケースもあります。
4-2 歯石の除去
定期的に歯のメンテナンスを行っている方は、歯科医院で受ける一度の歯石取りのみで、歯をきれいにすることも可能です。しかし、全ての人が定期的に歯石取りを行っているわけではありません。
普段の歯磨きがおろそかだったり、長らく歯医者に通っていなくてお口の状態が健全でない場合は、3回から6回程度、歯石取りのために通院する必要があります。
4-3 歯石除去後のケア
歯石を取り除いた後は、歯の表面をきれいに磨き上げます。一時的に歯石を取り除いただけでは、また歯石が付着する怖れがあるため、念入りに清掃することが大切です。
歯の表面をきれいにクリーニングするまでが歯石除去における必要プロセスといえます。その後歯医者さんは、定期的なメンテナンスで歯石取りを行い、健全な口腔環境の維持をサポートしてくれます。
5.まとめ
歯石を放置すると、歯周病や虫歯の原因にもなり、定期的なクリーニングが必要です。しかし、自分でその処置を行おうとすれば、さまざまなリスクがあることも知る必要があります。緻密な技術がいる歯石除去は、無理をせず、歯科衛生士のいる歯科医院で行うのがおすすめです。
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監修医飯田尚良先生
飯田歯科医院 院長
■院長経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る