1.ビタミン不足?睡眠不足?口内炎のさまざまな原因
口内炎の原因はひとつだけではない
食事のたびに鋭く痛み、食事をしていないときにも、じんじんと痛みを感じる口内炎。重大な症状ではありませんが、それでも不快感による日常生活への悪影響は甚大ですよね。
お子さんにできてしまったら「一日も早く治してあげたい!」、できる前でも「できれば作らせたくない」と願う親御さんが多いのではないでしょうか。そんな口内炎は、ビタミン不足や生活リズムの乱れから起こることが多いようですが、なかには、血液疾患などの全身疾患に起因するもの、ウィルス性の病気に関わるものなどもあるようです。
さらに、合わない入れ歯や矯正器具でお口の中を傷つけることによって、口内炎になってしまうということもよくあります。口内炎になってしまったら、まずはその原因が何であるかを探ることが、治癒への近道となります。
ビタミン不足が原因であることも多い
さまざまな原因からなる口内炎ですが、多くの人が口内炎の原因として疑うビタミン不足が、その原因となっていることも確かに多いのです。日常的な食生活で、ビタミン摂取が不足気味と感じていて、「口内炎になってしまった」「口内炎によくなる」という場合、まずは食生活を見直してみることが大切です。
睡眠不足や疲労でも口内炎になる
全身に疲労が溜まることで、口内炎になってしまうというケースもあります。お口の中の粘膜は、通常新陳代謝を繰り返しています。睡眠不足や疲労が蓄積すると、この新陳代謝が低下し、口内の粘膜の表面が荒れてしまいます。これがさらに悪化すると、内側から傷ついた潰瘍状態になってしまいます。ここに外傷と同様に細菌が繁殖すると、口内炎が悪化してしまうのです。
口の中の傷から口内炎になるケースも
お口の中を誤って噛んでしまったり、食事の際に魚の骨などが刺さったりして、お口の中を傷つけたことをきっかけとして、口内炎になるケースもあります。正常な状態のお口の中では、少々傷がついたとしても唾液が細菌を洗い流してくれるため、炎症が起こることなく傷は治癒してしまいます。しかし、ストレスなどの要因で唾液の分泌が低下している場合、お口の中に増えてしまった細菌が傷ついた部分でさらに繁殖し、口内炎として炎症を起こしてしまうのです。
全身疾患と関わる口内炎もあるので注意
ヘルペスウィルスやコクサッキーウィルスなどによる、ウィルス性の口内炎もあります。さらに、「口内炎だと思って放っておいたら、実は口腔がんだった」というケースも見られます。口腔がんの初期症状である白板症や紅板症は、お口の中の粘膜や舌にできる病変ですが、口内炎と間違えられやすい症状です。2週間を超えて長く口内炎が続くようなら、こうした全身疾患との関わりも視野に一度、歯科口腔外科を受診することをおすすめします。
子どもの口内炎は栄養不足とウィルス性が主
さまざまな原因により発生する口内炎ですが、お子さんの場合は野菜を食べないことによる栄養不足によるものや、「ヘルパンギーナ」「手足口病」などのウィルス性疾患にともなうものが多くなっています。また、自分の歯や異物などでお口の中を傷つけたことをきっかけに発症するケースも多いようです。月齢の低い赤ちゃんでは、誰でも身体内に持っているカビの一種であるカンジタ菌に由来する口内炎もあります。通常であれば問題ない真菌ですが、免疫力が低下した状態では増殖してしまい、お口の中に白い斑点のような口内炎ができてしまうのです。なかには、体質的に口内炎ができやすいお子さんも存在するので、注意してあげましょう。
2.口内炎治療と予防に効くビタミンとは?
口内炎にはまずビタミンB群を
「口内炎にはビタミンを」とよくいわれますが、どのビタミンでもよいというわけではありません。できてしまった口内炎を早く治したいなら、まず摂取すべきはビタミンB群です。「代謝ビタミン」とも呼ばれるビタミンB群は、全身の肌や粘膜を守る働きをもっています。そんなビタミンB群を摂取し、口内の粘膜の新陳代謝を正常化されることで、口内炎の発生を予防したり、治したりする働きが期待できるのです。
治療にはビタミンB2が特に効果的
口内炎で診療を受けて、内服薬の処方を受けたとしたら、その薬は「ビタミンB2製剤」である可能性が高いでしょう。ビタミンB2は、ビタミンB群の中でも特に口内炎に有効だとされていて、内服薬としてもよく処方されるのです。とはいえ、「ビタミンB2製剤」が効果的なのは、あくまで「ビタミンB2欠乏症」が原因である口内炎のみ。ウィルス性の口内炎や、口腔がんの初期症状である白板症、紅板症などには作用がありません。
粘膜を守るビタミンAもおすすめ
ビタミンB群のほかに口内炎への働きが期待できるビタミンには、ビタミンAがあります。目を守る作用で知られるビタミンAですが、肌や粘膜を保護する働きもあります。こうした面から、口内炎への作用もある程度期待できるのです。
美容ビタミン・ビタミンCでトータルケア
ビタミンの中でもっともよく知られているビタミンCは、「美容ビタミン」とも呼ばれ、美肌作用や壊血病、白内障などの予防作用を持つといわれています。ビタミンCは、口内炎に直接作用を及ぼすことはないかもしれませんが、全身の抵抗力をアップしてバランスを整えることで、口内炎を防ぐ働きは期待できるかもしれません。
鉄・亜鉛などミネラルで抵抗力アップ
そのほか、鉄や亜鉛などのミネラル不足も、口内炎の一因となりえます。ミネラルが不足すると全身の抵抗力が低下するためです。積極的に摂取して、口内炎にならない体づくりを普段から心がけましょう。
3.口内炎治療・予防のビタミン摂取法
「この栄養さえ摂ればOK」はありえない
できてしまった口内炎に直接作用があるのはビタミンB群、とりわけビタミンB2とビタミンB6です。しかし、これら2種のビタミンさえ摂取しておけば口内炎は治るというものではありません。口内炎治療に重要なのは、必要なビタミンをバランスよく摂取すること。ビタミンB2、ビタミンB6を中心に、幅広い栄養素をバランスよく摂るようにしましょう。
ビタミンB2はうなぎ、レバーなどに豊富
ビタミンの中でも特に口内炎に効果的なビタミンB2、ビタミンB6は、どのような食材に多く含まれているのでしょうか?ビタミンB2を多く含むのは、うなぎ、青魚、海藻などの海産物や、牛、豚、鶏のレバーなどです。納豆や卵、乳製品などにも多く含まれているので、積極的に食事に取り入れるようにしましょう。1日の栄養摂取量目安としてビタミンB2は、18歳以上の男性で1.6mg、女性で1.2mgを摂取することが理想とされており、3~5歳の子どもでは0.8mgの摂取が推奨されています。意識して摂取を心がけましょう。
ビタミンB6はバナナ、マグロなどで摂取
ビタミンB2同様、ビタミンB6は牛、豚、鶏のレバーに豊富に含まれています。ほかにも、バナナ、にんにくやマグロ、カツオ、鶏のささみなどを食事に摂り入れることで、ビタミンB6を効果的に摂取することができます。
4.摂りづらいビタミンを摂取させるには?
まずは食べられるものを探してあげて
口内炎対策に効果的なビタミンB2が豊富だからと、お子さんに苦手な食材ばかりを与えたのでは、余計に嫌悪感が増してしまいます。口内炎に効くビタミンを含む食材は、1種類だけではありません。うなぎが苦手なお子さんは肉類から、お肉が苦手なお子さんは卵や乳製品からというように、複数の食材のなかから食べやすい食材を選んで取り入れるようにしてあげるとよいでしょう。さらに、毎日同じ食材ばかりになってしまうと、お子さんにとっても苦痛なもの。バラエティに富んだ食卓を目指す工夫も心がけましょう。
苦手な食材は細かく加工して調理
どうしても苦手食材を食べさせたいという場合には、細かく刻んだり、すりつぶしたりして与えるのがおすすめです。みじん切りにしてほかの食材と混ぜ合わせたり、ポタージュ状にしたりと調理の工夫で、お子さんが苦手食材と気づかないうちに食べられるようにしてあげましょう。また、生の風味が苦手という食材は、じっくり加熱することで食べやすくなる場合もあります。子どもの好き嫌い克服には、親御さんの根気が必要です。諦めず、気負いすぎず、ゆっくり付き合ってあげましょう。
摂りづらい栄養はサプリメントも活用
加工品の普及とともに、現代では食事によるビタミン摂取量は低下しているといわれています。そんななかで、どんなに食事の栄養バランスに気を配っていても、必要なビタミンを食事から十分に摂取することはなかなか難しいものです。食事からでは不足しがちな栄養素は、サプリメントなどの栄養補助食品も活用して、上手に摂取するようにしましょう。子ども用のビタミンシロップや肝油ドロップなども市販されています。こうしたアイテムも上手に活用するとよいでしょう。ただし、子ども用とはいえ、サプリメントの過剰摂取は禁物です。必要な栄養素を絞って用法用量を守って摂取させるよう気をつけましょう。
5.まとめ
口内炎にはさまざまな原因があります。なかでも、ウィルス性のものと並んでお子さんに多いのが、ビタミン不足、特にビタミンB群の不足が原因の口内炎です。この場合、ビタミンB群を補給することが有効な対策となります。また、口内炎になりやすいというお子さんも、普段の食事を見直してビタミンを補うことで、口内炎を予防する働きも期待できます。ビタミンと上手に付き合って、お子さんのつらい口内炎を一日も早く解消してあげてください。