この記事の目次
1.歯を強くする食事づくりのポイント
カルシウムは積極的に食べさせて
大人になってからカルシウムを摂取しても歯に対する働きは期待できません。しかし、成長期である15歳くらいまでの子どもの歯を丈夫に育てるためには欠かすことができないものです。永久歯が生え揃うまでの時期には、意識してカルシウムを含む食事を出してあげましょう。
牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品のほか、ひじきや煮干し、干しエビ、わかめ、昆布、海苔などにもカルシウムが豊富に含まれています。
現代人の食事ではカルシウムが不足しがちですから、こういった食材を毎日の食事に上手にとりいれてくださいね。
カルシウムが不足すると骨や歯の中からカルシウムが溶けだして、歯の質が低下してしまいます。
栄養バランスのとれた食事が重要
カルシウムだけしっかりと摂取していれば丈夫な歯が作られるというわけではありません。健康的な歯を育てるためには、カルシウムのほかにも次のような栄養をバランスよくとる必要があります。
・歯の基礎となる「タンパク質」……卵、豆腐、牛乳、アジなど
・歯のエナメル質をつくる「ビタミンA」……レバー、豚肉、ほうれん草、にんじんなど
・象牙質をつくるのに必要な「ビタミンC」……レモン、みかん、パセリ、ピーマンなど
・歯を強化する「リン」……米、牛肉、豚肉、卵など
さらに、紫外線を皮膚に浴びることで作られるビタミンDは、カルシウムの代謝を促して健康的な歯を育てるのに必要ですから、太陽の下で元気に遊ばせることも大切です。
子どもの好き嫌いをなくすための調理法
このように、さまざまな栄養をバランスよく摂取するためには、好き嫌いなく食べてもらわなければなりません。
苦手な食材が見えないように、子どもの好きなハンバーグなどにすりつぶしたり細かく刻んだりして混ぜるなど、調理の仕方を工夫しましょう。味が苦手な食材を使う場合には、カレー粉やチーズなどを組み合わせて好みの風味に仕上げてみても食べやすくなりますね。コロッケのような揚げ物にしてしまうと、苦手な食材に気づかずに食べてくれるかもしれませんよ。
よく噛んで食べさせる
歯の土台となる顎の成長も考えなくてはいけません。昔と比べて、現代の食卓には口あたりのよい、やわらかなメニューが並んでいます。子どもの好きなメニューも、カレーやハンバーグ、スパゲティなど、どれもあまり噛まずに飲み込めてしまうものが多いでしょう。
しかし、やわらかいものばかりを口にしていると、顎が十分に発達しません。歯の生えるスペースが足りなくなり、歯並びに影響することもあります。根菜類や乾物、魚介類といった、よく噛まなければ食べられない食材をとりいれたメニューもうまく加えてください。
2.歯の健康を考えたおやつとは
おやつの与え方に気をつけて
おやつをあげてはいけないわけではありません。大切なのは与え方です。子どもが欲しがるときにいつでも食べさせていれば、お口の中が常に虫歯になりやすい酸性の状態になってしまいます。そのうえ、食べかすが残っていると、歯を強くするための歯の再石灰化(溶けだしたエナメル質を唾液によって元の状態に戻す働き)をするタイミングを逃してしまうのです。
おやつは時間を決めて与え、食べたあとには歯みがきをしてお口の中の状態を整えなくてはいけません。歯みがきをするのが難しければ、水やお茶を飲ませるだけでも予防作用が見込めます。
また、甘いものだけがおやつとは限りません。おやつの内容を見直してみるのもひとつの手です。
虫歯になりやすいおやつ
次のようなおやつは、虫歯になりやすいので頻繁に口にしないほうがよいでしょう。
・砂糖が多く含まれているもの……チョコレート、グミ、クッキーなど
・食べるのに時間がかかるもの……ケーキ、ドーナツ、キャンディーなど
・歯にくっつきやすいもの……キャラメル、ガムなど
虫歯になりにくいおやつ
子どもの歯を虫歯から守るためには、次のようなおやつがおすすめです。
・砂糖をあまり使っていないもの……おせんべい、クラッカー、ウエハースなど
・すぐに食べ終えることができるもの……果物、ナッツ類、チーズなど
・歯にくっつきにくいもの……プリン、ゼリー、ヨーグルトなど
特に歯を丈夫にする働きのあるフッ素やカルシウムが含まれているチーズやヨーグルト、煮干しなどは成長期の子どものおやつにぴったりです。
ただし、これらの食べ物は「虫歯にならない」ものではなく、「虫歯になりにくい」だけのことですから、食べたあとは丁寧に歯みがきをしてくださいね。
キシリトール入りのおやつを活用
砂糖の代わりとなるキシリトールという甘味料を使ったガムやキャンディー、チョコレートが販売されています。キシリトールは砂糖と違って、食べても歯を溶かす酸が作られないだけでなく、虫歯菌が増えるのを抑える働きがあるといわれているのです。甘いものをあげたいときには、このキシリトール入りのおやつを利用するのもひとつの方法です。
ただし、甘味を増すために砂糖などが含まれているものもあるので、成分表示をチェックしてから購入しましょう。
キシリトールは食べすぎると下痢になる可能性もあります。さらに、味覚が発達途中の子どもに過剰に与えると、味の感覚が狂ってしまう恐れもあります。与え方については小児歯科で相談することをおすすめします。
また、キシリトール入りの食品を食べても歯垢が除去できるわけではありません。別途、歯みがきはしっかりと行うようにしましょう。
3.子どもの歯を考えた飲み物の選び方
食後に一杯のお茶がおすすめ
お茶には、虫歯予防に有効とされるフッ化物や抗菌作用のあるカテキンが含まれているので、食後にお茶を飲ませるとよいでしょう。
ただし、緑茶にはカフェインも含まれていますから飲ませすぎには注意してください。単純に水分補給を目的であるなら、水が適しています。
野菜ジュースは糖分に注意
栄養補給のために、お子さんに野菜ジュースを飲ませている親御さんも少なくないようです。しかし、野菜ジュースには糖質が多く含まれているタイプがほとんどです。飲みすぎやダラダラ飲みにならないように気をつけましょう。できることなら、野菜は食事として摂取するのがおすすめです。
4.子どもにさせたくない食事のNG行為
いつまでもダラダラと食べさせる
虫歯菌は糖分をエサにして酸を発生し、歯を溶かしていきます。ですから、糖分がお口の中に長く留まるほど虫歯になりやすいのです。
唾液の働きによりお口の中が中和されるまでに1時間程度かかります。そのため、ダラダラと食べ続けていれば口内が酸性に傾いたままになってしまいます。
食事やおやつは決まった時間に与え、溶けた歯が元に戻る再石灰化が正常に行われるようにしましょう。
ジュースを水代わりにあげている
糖分をたっぷり含んだジュースやスポーツドリンクを始めとした清涼飲料水で水分補給をしていると、虫歯のリスクが高まるのは当然です。このような飲み物は満腹感も与えてしまうので、食事をあまり食べられなくなって必要な栄養を摂取できなくなる心配も出てきます。
清涼飲料水を飲ませたいのであれば、おやつなど決まった時間に限定し、それ以外では水かお茶を飲ませるようにしましょう。
大人のスプーンなどで食べさせる
生まれたばかりの赤ちゃんのお口にもともと虫歯菌は存在していません。きれいな状態のお口に虫歯菌をうつしているのは大人なのです。
虫歯菌を保有している大人が使ったお箸やスプーン、食器などをお子さんと共有すると、唾液を介して虫歯菌が感染します。食事の際には、別々のものを用意して感染を防ぐようにしましょう。口移しで食べ物を与えるのも厳禁です。
虫歯菌をお子さんにうつさないように、事前に家族全員の口内環境を整えておくことも大切です。
5.食事のあとには歯みがきを忘れずに
食後の歯みがきが必要な訳
食事をすると、お口の中は酸性に傾きます。これが虫歯になりやすい環境ですから、食後はできるだけ早いタイミングで歯みがきをするのが理想です。子どものうちから「食べたら磨く」習慣をつけておきましょう。
朝も食事のあとに歯みがきを
朝起きたばかりのときは、お口の中がネバネバしています。歯みがきをして、お口の中をすっきり・さっぱりしましょう。ただし、重要なのは朝食後にもう一度磨くことです。もし、どちらか1回だけしか磨かないのであれば、食後にしてください。
ただし、磨きすぎると歯のエナメル質をはがれて悪影響をおよぼす恐れがあります。歯みがきは1日に2回~3回程度に留めておきましょう。
外出先で歯みがきができないときには
遊びに出かけたときなど、食事のあとに歯みがきができない場合には、口をゆすぐだけでもある程度の作用が見込めます。外でおやつを食べたときにも、忘れずにお口の中をきれいにする習慣をつけましょう。
6.まとめ
毎日の食事は、歯の健康ととても深い関係があります。歯が作られている子どもの時期の食習慣は、大人になってからの歯の状態にも大きな影響をおよぼします。
幼いうちから規則正しい食生活などを身につけさせるのは、親御さんの大切な役目のひとつです。お子さんのきれいな歯を虫歯にしないように、今回紹介した食事やおやつのポイントを実践してみてくださいね。