Q. まずは歯医者を目指したきっかけを教えてください。
人に感謝されるような仕事につきたかった、というのが第一にあります。
自分自身も矯正治療をうけた経験があって、歯医者さんにはずいぶんお世話になりました。
「痛いからなんとかして!」って駆け込んで、帰り道には痛くなくなってるじゃないですか。「何てすばらしいんだ」と、歯医者さんが神様のように思えました。
そんなとき、寝たきりの祖母が入れ歯が合わないとしきりに言っていたのを楽にしてあげたいと感じていたこともあり、一時期は歯医者を目指そうと思ったんですが、結局は文系の大学に進学しました。
ただ、学生時代に中国の天津に交換留学生として行くことになり、現地で歯科口腔外科医の知り合いができました。
その人に、治療の現場を見せてもらう機会があり、それで強い感銘を受けてしまった。
歯医者に憧れていたのをあきらめて文系の大学に進学した自分を後悔していたので、「やっぱりもう一度勉強しなおそう!」ってそのとき思ったんです。
日本に戻って大学を卒業し、その後で歯学部に編入しました。
Q. 素敵なお話ありがとうございます。他にも歯医者になってから印象的なエピソードを教えてください。
義歯を入れていて「どこの歯医者に行っても合わない…」っていう患者さまがいらしたんです。
通常なら新しい入れ歯を作りましょうって話になるんですけど、その日は、とりあえず修理できるところまでやってみましょう、と修理して差し上げたんです。
患者さまは「よく噛めそうです」と帰っていかれた。
どうなったかな、と気になっていたんですが、後日その患者さんが病院にお見えになって、ちょうど私の目の前でわーっと泣き出したんです。
「それまで何カ月もまともに食事できなかったけど、入れ歯を直してもらったら本当に久しぶりにご飯が食べられました」って。
その日は治療の予定ではなかったんですが、それだけどうしても伝えたくて来ました、とおっしゃいました。
それはもう、感動しました。
こうやって直接”ありがとう”って言ってもらえる仕事は、そんなにないじゃないですか。
この患者さんのように、歯の不調が食事や体調に大きく影響することがあるんです。
お口って一般的に思われている以上に、人間が長生きする上で重要な器官なんですよ。
そういうことを伝えて、納得してくださる患者さまがもっともっと増えればいいなと思います。
歯医者は痛い歯を治療して終わり、ってことではなくて、治療した後に肩が痛くなったり首が回らなくなったり、ってこともありますから。
そういったことも、相談してほしいなと思います。
Q. お口以外の相談も歯医者でできるんですね!
もちろんです。
腰が痛い人なんかもね、歯の治療をしたら腰痛がなくなった、というケースがあります。
私たちは患者さんのお顔や全身を見て「右が上ってるから右の噛み合わせが良くないな」とか、分かるんですよ。
実際に口の中を診てみると、右側だけ義歯だったり奥歯がなかったりする。
噛み合わせは、それだけ全身への影響が大きいってことです。
歯と全身の関係が重要であることを、もっと普及させたいと思っています。
Q. 趣味に「格闘技」とありますが、、、
2年半前からブラジリアン柔術をやっています。 とても集中力を必要とされる仕事なので、集中を高められる趣味をひとつ持ちたいな、と思っていたんです。ちょうど私のいとこも歯科医師で、趣味として格闘技をやっていたんです。
公私ともに充実しているようなので、自分も格闘技を始めてみようと調べてみたら、八王子にもブラジリアン柔術の道場があることを知りました。
柔術は相手が年上であっても年下であっても、敬う気持ちを持って無心で相手と向き合います。日本の武道と同じで、精神的な鍛練も兼ねた趣味ですよね。
格闘技の他にも、水泳をやっています。幼稚園の頃から数えると、もう35年くらいですかね。学生の時もよくプールに通っていました。
どちらかというと、競泳ではなく遠泳の方が好きで、1時間休まずにただ黙々と泳いでいます。マラソンで言えば、走っているうちにランナーズハイになる、みたいな感じでしょうか。
水の中だと音もないし、視界も限られていて、普段とは全く違う環境なんです。その中で黙々と泳いでいるうちにリラックスできるんですよ。
Q. もし、先生が患者さまだとしたら「こんな歯医者に行きたい」というお考えはありますか?
やっぱり、学習をやめない先生ですね。
歯医者って学校を卒業しちゃったらすぐにできるんですよ。だけど、技術はどんどん新しくなっていくから、去年のものはどんどん古くなっていく。去年いいと言われていたものが、翌年に否定されることもあるんです。
一度勉強会に行って、それでもうOKだろうって思って二度と勉強をしない人は、その古い情報だったり間違った情報に一生すがって治療を続けることになる。そういう歯医者には行きたくないな。
私の場合は、ほぼ毎週勉強会へ行きますが、行ってみて初めて自分の実力のなさが分かるんです。勉強している人はもっともっといるんだな、って思う。
ああいうのを見ていると、患者さまに対して責任を持っていい技術を届けなければ、申し訳ないなと思います。
そうやってがんばってる先生に、自分も診てもらいたいですね。