漂白効果のある過酸化水素を薬剤に用いたホワイトニングでは、施術後に知覚過敏が起こる可能性があります。もし、その痛みが強く、痛み止めが効かないほどの場合は、もともと歯に何らかしらの損傷があった疑いがあります。この記事では、ホワイトニングが引き起こす具体的な痛みや、痛みが出てしまったときの対処法、できるだけ痛みを軽減するための事前対策などについて、詳しくご説明します。
1.ホワイトニングの痛みってどんなもの?
ホワイトニングの痛みは、主に過酸化水素という成分による歯や歯茎への刺激から起こります。過酸化水素は、消毒のオキシドールや衣類に使う酸素系漂白剤の成分として身近なものになります。これらはだいたい3%前後の過酸化水素の濃度で使用されています。それに対してホワイトニングの薬剤は、10%~という高い濃度の過酸化水素を使うので、歯に対して一次的な刺激を与え、しみるような痛みなどを起こします。それでは、ホワイトニングの主な痛みについてご紹介しましょう。
知覚過敏のような痛み
ホワイトニングの主な痛みは知覚過敏です。知覚過敏は、冷たいものやブラッシングなどのちょっとした刺激によってピリっとした痛みを感じます。過酸化水素によるホワイトニングは、歯を保護する表面のペリクル層(タンパク質の層)を剥がし、一時的な脱灰(歯のミネラル分の消失)を引き起こします。そうなる事によって、外部からの刺激に過剰反応をしてしまい、知覚過敏同様の痛みを感じることがあります。また、もともと知覚過敏がある方は、痛みをより強く感じるリスクもあります。
ズキズキする痛み
エナメル質(歯の表面の層)に何らかの損傷がある場合には、ズキズキという鈍痛を感じる事があります。これは、先ほど述べた薬剤の歯への刺激から起こる事もありますし、エナメル質が虫歯や歯ぎしりによって失われていたり、噛み締めなどによって小さな亀裂があったり、歯周病や加齢によって歯茎が後退していたり、詰め物に 隙間があったりする場合でも、同様に鈍痛が起こります。歯医者さんで行うホワイトニングでは、事前にホワイトニングが可能かどうかチェックするので、こうした問題がある場合には、その対処を優先し ます。
口内のヒリヒリした痛み
刺激の強い過酸化水素は、歯だけでなく歯茎や唇にも影響を及ぼします。薬剤が歯茎などについたまま時間が経つと、軽い火傷に似たヒリヒリとした痛みを起こします。薬剤の濃度が高い場合は、歯茎が一時的に白くなってしまう事もあります。歯医者さんで施術を行うオフィスホワイトニングでは、薬剤が歯茎や唇などに付着しないようカバーするので、こうした痛みは少ないものです。一方、マウスピースを使って自分で薬剤を塗布するホームホワイトニングの場合は、誤って薬剤が口内に漏れてしまうと、こうした痛みを引き起こすことになります。
2.痛みが出た時の対処法
施術直後の知覚過敏に似たようなしみる痛みは、実は時間とともに次第におさまってくるものです。これは、剥がれたペリクル層や脱灰状態は、唾液の働きによって、自然に回復するからです。このことを念頭に起き、慌てずに対処しましょう。
飲食物に気をつけて安静に
特に、ホワイトニング直後は、冷たいものや刺激のある飲食物を避けて、安静にすることが大切です。ホワイトニング直後の歯は、刺激に敏感になっていることを、しっかり心に留めておきましょう。刺激に敏感なだけではなく、着色しやすい状態なので、着色性の高い食事なども控えるようにしましょう。
知覚過敏用や再石灰化を促す歯磨き粉
知覚過敏用の歯磨き粉には、硝酸カリウムという成分が配合されており、これがバリアとなって、神経に刺激を伝わりにくくすることができます。また、再石灰化を促す歯磨き粉やジェルを使うことで、エナメル質が修復されやすくなるので、知覚過敏のような痛みの解消を早めることもできます。
牛乳由来成分「CPP-ACP」配合ガムを噛む
牛乳由来成分「CPP-ACP」には、カルシウムなどのミネラル分を歯に取り込みやすくする働きがあります。ホワイトニングで失われたミネラル分を取り戻し、エナメル質が修復されることで、しみる痛みを解消するスピードを速めることができます。CPP-ACPはリカルデントとも呼ばれています。
市販の痛み止めの服用
ホワイトニング前から、エナメル質に大きな損傷が合った場合などでは、強い痛みを感じることもあります。歯医者さんで行うホワイトニングでは、歯に問題がある場合、施術は行わないものですが、万一、強い痛みになったときには、市販の痛み止めを服用するようにしましょう。
痛み止めが効かない場合は歯医者さんに相談を!
市販の痛み止めも効かず、どうしても耐えられないような強い痛みが生じてしまったときには、すぐに歯医者さんに相談してください。神経に直接的な刺激が伝わるような、何らかの問題がある可能性もあります。
3.ホワイトニングの痛みを軽減する事前対策
前述した通り、ホワイトニングの痛みを引き起こす成分は過酸化水素です。従って、その成分がマイルドなものを使ったり、歯に問題があるところを改善したり、あらかじめ歯質を強化しておくことで、痛みを軽くすることができます。ここでは、ホワイトニング前にできることについてご紹介します。
虫歯や歯周病を治療しておく
歯医者さんで行うホワイトニングでは、事前のチェックで虫歯や歯周病がある場合には、当然その治療を最優先します。通販などでホワイトニングキットを入手して、自分で施術する場合には、歯に問題がないか、歯医者さんにチェックしてもらうことをおすすめします。
歯のすり減りや亀裂を治しておく
前述した通り、歯のすり減りや亀裂がある場合には、ホワイトニング剤が強くしみるリスクが高いものです。特に、歯ぎしりや噛み締め、食いしばりといった癖のある方は、歯が損傷している可能性があります。事前に、歯医者さんに伝えて、しっかりとチェックしてもらい、問題がある場合は、その治療を優先しましょう。
歯質を強化しておく
歯の再石灰化が促されず、ミネラル分を消失してしまう傾向にあると、ちょっとした刺激でもしみやすくなるものです。よく噛んで唾液の分泌を促し、再石灰化を促す歯磨き粉などを使うなど、普段から歯質を強化することに努めるようにしましょう。
ホワイトニング剤の濃度を下げる
オフィスホワイトニングでは、施術したその日に効果を実感できるメリットがありますが、それだけ強い薬剤を使うということでもあります。従って、薬剤の濃度の低いものを使うことで、刺激を和らげることができます。歯医者さんに相談してみましょう。ただし、前述したように歯に根本的な問題がある場合には、その改善を優先すべきです。
過酸化水素系のホワイトニングを避ける
過酸化水素系の薬剤でなければ、しみるような痛みがほとんどないものです。酸化チタンや、ポリリン酸、メタリン酸系を主成分とする薬剤を使うことで、痛みを回避することができます。ただし、沈着した色素を分解する効果においては、現在、過酸化水素がもっとも有効な薬剤となっています。
4.まとめ
ホワイトニングで、痛み止めが効かないほどの状態になってしまうのは、もともと歯に何らかの損傷があった疑いがあります。過酸化水素ベースのホワイトニング剤は、その安全性が世界的にも認められているものだからです。強い痛みが心配であれば、歯医者さんで提供するオフィスホワイトニングやホームホワイトニングを行い、事前に歯の状態をチェックしてもらうことが大切ですし、日本人に適したマイルドなホワイトニングシステムもいろいろあります。また、普段から歯質を強化し、歯を健全に保つことも忘れないでください。
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監修医矢島昇悟先生
青山通り歯科 院長
■院長略歴
2007年 日本歯科大学 生命歯学部卒業
2008年 埼玉県羽生市 医療法人社団正匡会 木村歯科医院
2010年 埼玉県新座市 おぐら歯科医院
2011年 東京都文京区 後楽園デンタルオフィス
2015年 東京都港区 青山通り歯科 院長