差し歯だけが黄ばんで目立ってしまうのは嫌なものです。この差し歯の黄ばみは、黄ばみ汚れが深く染み付いてしまったわけではなく、レジンの性質によって、素材自体が黄色くなってしまうことによるものです。結論から言うと差し歯は、天然歯に使うホワイトニング剤を使って、同じように白くすることはできません。この記事では、黄ばんでしまった差し歯を白くするさまざまな方法や、差し歯のある歯列をホワイトニングする注意点、セラミックの差し歯のメリットなどについて、詳しくご紹介いたします。
この記事の目次
1.-1.差し歯を白くするさまざまな方法
前提として、過酸化水素の薬剤を使った一般的なホワイトニングでは、差し歯を白くすることはできません。ホワイトニング剤は、天然歯に沈着した汚れに働くものだからです。ここでは、人工の素材である差し歯を白くするための方法についてご紹介します。
1-1.表面の汚れはクリーニング可能
レジン(プラスチック系の素材)自体の変色は、白くすることはできませんが、表面に付着した汚れであれば、歯医者さんのクリーニングで落とすことができます。セラミック製の差し歯であれば、素材が変色しにくいので、表面のクリーニングで元の白さを取り戻すことができます。
1-2.歯の表面をホワイトコートする
保険治療で、前歯の差し歯などにも使われる素材がレジンですが、プラスチックなので、時間が経つと次第に黄色みがかってきます。素材自体が変色してしまうので、素材の白さを取り戻すことはできません。この場合、歯医者さんで歯科用のホワイトコート剤を塗ることで、白くすることができます。ただし、コーティングの持続期間はおよそ1ヶ月程度です。
1-3.レジンをセラミックに替える
前述した通り、レジンは長く使っていると、素材が黄色く変色してきます。そこで、セラミック製の差し歯に入れ替えるというのも一手です。セラミックは天然歯の質感に近く、素材の変色や着色をしにくいので、長く白さを保つことができます。
1-4.市販の歯のマニキュア
市販されている歯のマニキュアを塗る方法もあります。ただし、きれいに塗るのが難しくムラが多くなって、かえって目立つ結果にもなりがちです。また、差し歯にはマニキュアがつきにくいものなのでで、あくまで応急処置的な利用に向いています。
2.差し歯のある歯列にホワイトニングする際の注意点
部分的に差し歯があって、歯列全体をホワイトニングする場合には注意が必要です。というのも、天然歯にはホワイトニングの効果がある一方で、レジンの差し歯は白くならないので、色が合わなくなり、差し歯だけが目立ってしまうからです。
2-1.ホワイトニング後に差し歯を交換する場合
全体をホワイトニングしてから、差し歯をホワイトニングした歯の色に合わせて、作り直します。セラミック製の差し歯は、他の歯の色に合わせて、色目を調整することができるので、自然な仕上がりになります。この場合、十分なホワイトニングを行い、自分が納得できる白さになったところで、セラミックを入れるのが懸命です。
2-2.もともとセラミックの差し歯がある場合
もともとセラミック製の差し歯が入っていて、天然歯の色が気になっている場合もあるでしょう。セラミックは天然の歯と比べて着色しにくいからです。この場合、セラミックの差し歯の色に合うように、ホワイトニングすることになりますが、ホワイトニングによって微妙な色合いまで調整するのは難しいものです。ホワイトニングの経験が豊富な歯医者さんに相談してみましょう。
3.差し歯は最初からセラミックを選ぶのが懸命!
セラミック製の差し歯は、保険の適用ができません。しかし、これから差し歯を入れるなら、セラミック製の方が、レジンのような変色が気になることもなく、長くきれいに保つことができ、後々の問題も少ないものです。
3-1.レジンの差し歯の変化について
レジンは、隣の歯と色を合わせることもでき、歯につけた当初は、きれいに見えるものです。しかし、前述した通り、およそ1年半から3年程度で、素材自体が黄色くなってきます。また、レジン素材は弱いので、金属で裏打ちしてあり、これが徐々に溶け出してくることで、歯茎が黒ずむ原因にもなります。
3-2.レジンが変色する度、新しくするのは可能?
保険の適用ができるのだから、レジンが変色してきたら、また作り直せばよいと思う方もいるでしょう。しかし、パッと外して同じものを作って、また元通りはめるというほど、単純ではありません。付け替える場合には、また土台となる歯を削り直して整える必要があり、その都度、元の歯が少なくなって行きます。付け替えが可能な回数は、残存している歯の部分の多さによりますが、回数を重ねる毎に歯は小さくなっていくので、歯が折れるリスクも増します。その場合、最悪抜歯しなければならなくなる事もあります。
3-3.金属を使わないセラミックの差し歯がおすすめ
セラミックの差し歯にも、金属製の裏打ちが施されたタイプ(メタルボンドクラウン)があります。使用する金属によりますが、特定の金属を使っていると歯茎の黒ずみを招いたり、歯茎が後退した場合に、金属が見えてしまうというデメリットがあります。費用はかかりますが、すべてセラミックでできたオールセラミックであれば、こうした問題もなくなります。
4.差し歯の汚れを落とす歯磨き粉の選び方
レジンの差し歯は、素材自体が黄変してきますが、それでも表面についた着色汚れ(ステイン)をマメにケアすることが肝心です。素材自体を白くはできませんが、表面をきれいに保つことはできます。また、セラミックは色素が沈着しにくい素材ですが、ステインを放置していると、天然歯と同様に強く汚れが強く結びついてしまうものです。日々のケアのために、歯磨き粉の選び方をご紹介しましょう。
4-1.研磨剤が入っていないもの
レジンの差し歯は、表面が柔らかいので、研磨剤が強い歯磨き粉を使うと、細かい傷が付きやすいものです。そして、細かい傷があると、余計に汚れがこびりつきやすくなります。従って、歯磨き粉は研磨剤が入っていないものを選びましょう。
4-2.ステインに対応したもの
着色性の強い食事や飲み物は、歯の表面にこびりつく沈着汚れをもたらします。ステイン対応の歯磨き粉は、汚れと結びついたタンパク質を分解することができるので、天然歯だけでなく、差し歯の表面のステインも落とすことができます。
5.まとめ
これから差し歯を入れるという方は、費用に余裕があるなら、セラミック製を選ぶのが懸命です。セラミックは変色しにくく、寿命も長いものだからです。また、レジンの差し歯では、素材自体が黄ばんだり、裏打ちしている金属が溶けて、歯茎を黒くしてしまいます。どちらも差し歯自体をホワイトニングすることはできないので、色が気になる場合には、基本的にはクリーニングやコーティング、付け替えなどで対処することになります。また、差し歯は汚れやすいので、日々のケアにも注意したいところです。
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監修医本部悠一郎先生
東葉デンタルオフィス 院長
1993年 明海大学歯学部卒業後、千葉県内歯科医院勤務
1995年 すまいる歯科分院長就任
1998年 あすか歯科クリニック分院長就任
2012年 東葉デンタルオフィスを開設