この記事の目次
1.味覚について知ろう
味覚の受容器、「味蕾」
味覚は五感のひとつです。味を認識する受容器は、お口やのどの粘膜にもありますが、主な受容器は舌にある「味蕾(みらい)」と呼ばれる部分です。味蕾に食べ物がふれると味覚を感じて、その情報は神経から脳へ送られ、見た目やにおいなどの情報とあわせて「味」として認識されます。
味の5つの基本、「五味」
味覚は、甘味・酸味・塩味・苦味・旨味から構成されていて、これらを基本的な味として「五味(ごみ)」と呼びます。五味の代表的な食べものと役割は次のものがあります。
甘味・・・砂糖、チョコレート、饅頭など。糖の存在を知らせます。
塩味・・・塩、醤油、味噌など。ミネラル分の存在を知らせます。
酸味・・・酢、梅干し、レモンなど。腐敗や果実の未熟さを知らせます。
苦味・・・コーヒー、苦瓜、ビールなど。毒の存在を知らせます。
旨味・・・昆布だし、鰹節など。タンパク質の存在を知らせます。
2.味覚障害はなぜ起こるの?その症状と原因
衝撃!今、味覚障害の子どもが増えている?!
現代の傾向として、味覚を正確に認識できない子どもが増えています。「酸味」「塩み」「甘み」「苦み」の基本4種類の味覚のうち、複数の味覚について認識できない状態や、いずれかの味覚について認識することができない状態は、子どもであっても味覚障害と認められます。味蕾の数が減る高齢者は3人に1人が味覚障害の傾向があるといわれます。ただし、成長期の子どもは味蕾の現象で味覚障害になるとは考えにくく、生活習慣などから発症すると言われています。
味覚障害の5つの症状
味覚障害は、次のように人によってさまざまな症状があります。お子さんへ以下のような症状や違和感がでているときは、注意が必要です。
・味の感じ方が鈍くなったり、感じなくなったりする 「味覚減退・味覚消失」。
・本当は甘いのに苦く感じるなど、本来とは違う味に感じる 「異味症」。
・口内になにもない状態で苦味などを感じる 「自発性異常味覚」。
・ある特定の味を感じない 「解離性味覚障害」。
・なにを食べてもいやな味に感じる 「悪味症」。
味覚は3歳までに決まる?!
妊娠7~14週目ほどのお母さんのお腹の中で子どもの味蕾は大人と同じ構造になり、生後3か月ころまで増え続け、生後3か月でピークを迎えます。また、味蕾は刺激などで減っていき、味覚は5か月あたりから鈍感になってきます。さらに、3歳までに繰り返し口にすることで学習した味覚が、そのお子さんの一生の味覚傾向を左右するといわれています。
子どもに味覚障害が疑いがあるときは?
前述のような予防を心がけて生活をしていても、お子さんの味覚障害について気になるときは、歯医者さんに一度相談してみましょう。歯医者さんでは、味覚障害の検査・診断を行い、症状に応じた治療を行ってもらえます。
味覚障害の原因とは
日常生活における味覚障害の原因は次のものが考えられます。身に覚えのある点があるようでしたら、お子さんの食事の改善から始めてみてはいかがでしょうか。
・偏った食生活による亜鉛不足
亜鉛の量が不足すると味蕾の新陳代謝が悪くなって、味覚障害になります。
・濃い味で味覚がにぶる
ファストフードやお菓子などお口に入れてはっきりとわかるような濃い味のものを食べつづけると、味覚は刺激に慣れやすいため、味蕾の機能がにぶります。
・嗅覚の低下
風邪などで鼻が詰まるとにおいの情報が脳に送られなくなって、味がわかりにくくなります。
・舌の表面の異常
舌の表面には「舌苔(ぜったい)」とよばれる白い苔のようなものがついていますが、食べかすや細菌の付着やストレスなどで舌苔が変色したり厚くなると味がわかりにくくなります。
・薬の副作用
鎮痛・解熱剤や抗アレルギー薬、降圧薬、精神疾患薬などの副作用が原因となることがあります。
・疾患の影響
舌炎やドライマウスなどの口内疾患をはじめ、6歳未満の子どもがかかりやすい鉄欠乏性貧血、急増中の小児2型糖尿病などの疾患から味覚障害をまねくことがあります。
3.お子さんの味覚を守ろう!味覚障害の予防
亜鉛不足を防ぐバランスのよい食生活をする
体内に亜鉛が不足するとさまざまな障害があらわれますが、そのひとつが味覚障害です。1日に必要な亜鉛の量は約15mgです。牡蠣やごま、海藻、ブロッコリーなど亜鉛を多く含む食品をとり、亜鉛が効果的に働くようにビタミンやミネラル、タンパク質をバランスよく摂取しましょう。
食べるときによく噛む
唾液の分泌量が少ない場合に味覚障害になりやすい傾向がありますが、食べるときによく噛むことで唾液が出やすくなります。1口あたり30回を目安によく噛んで食べましょう。野菜や海藻、魚などのよく噛まないと飲み込めない食べ物を選ぶのもポイントです。
旨味を感じる食事を心がける
五味のうち、料理の満足度に大きく関係しているといわれる旨味です。それなのに、味覚障害の多くの人は旨味への感度が低くなっているため、料理の満足感がなかなか得られません。旨味のある食事で旨味への感度が回復したり、唾液の分泌量が増えて味覚障害の改善が期待できます。
バラエティに富んだ食材を食べる
子どもの味覚の育成には経験が欠かせません。濃い味を覚えてしまうと奥深い味覚の発達を妨げてしまうため、離乳食が始まる生後5か月ころから食事にしても間食にしても薄味から始めてバラエティに富んだ食材を使うようにしましょう。
4.まとめ
お子さんが食事を楽しめないことはお母さんにとっても残念なことでしょう。味覚障害のほとんどは亜鉛不足により発症するケースが多いため、お母さんがお子さんのために作っている食事のメニューや食材を見直すことで、味覚障害は改善することができます。ただし、お子さんが大きなストレスや何かしらの疾患を抱えていて、これを原因に味覚障害が引き起こされることもあります。食事の様子から、お子さんの味覚が正常かどうか少しでも気になるようでしたら、一度歯医者さんに相談してみてはいかがでしょうか。まずは原因を知って、お子さんの楽しい食事を取り戻していきましょう。