子どもの好き嫌いを克服!「味蕾(みらい)」を育てる食べさせ方

子どもの好き嫌いを克服!「味蕾(みらい)」を育てる食べさせ方

「うちの子はなんでこんなに好き嫌いが多いの?」「できるだけ栄養バランスのよい食事を食べてほしい!」など、お子さんの好き嫌いに頭を悩ませているお母さんも多いでしょう。その原因はさまざまですが、小さいころに食べ物で感じる味の経験によって味覚を育てることが、好き嫌いを少なくするためのポイントです。ここでは、味を感じとる味覚の主な受容器として舌にある「味蕾(みらい)」のメカニズムと、好き嫌いを克服させる方法をご紹介します。

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この記事の目次

1.味覚の受容器、「味蕾(みらい)」とは

味蕾は生後3か月にピークをむかえる

舌の表面にあるブツブツとした器官を「味蕾(みらい)」と呼びます。味蕾は拡大してみるとたまねぎのような形をしていて、一つひとつであらゆる味を感じとることができます。妊娠7週目くらいの赤ちゃんにできはじめて、14週目ころには大人とほぼ同じ構造になります。生後3か月あたりのピーク時まで味蕾は増えつづけますが、5か月くらいになると数はそのままで味を感じとる機能はにぶくなっていきます。味蕾は刺激や喫煙などで摩耗し、生まれたばかりの赤ちゃんが1万個もの味蕾をもつ一方で、成人すると約7千個ほどまで減っていきます。

味蕾の役割ってなに?

味蕾は、五感のひとつ「味覚」を受容します。味蕾に食べ物がふれると神経から味覚情報が脳に伝わり、においや見た目などの情報と組み合わせて味として認識されます。

味蕾で感じる5つの味覚

味覚は、甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の5つの種類で構成されていて、食べ物のおいしさを決める要素としての役割を持ちますが、ほかにも次のように異なる役割をもっています。

甘味・・・エネルギー源の存在を知らせる
塩味・・・ミネラルの存在を知らせる
酸味・・・腐ったものや未熟なものの存在を知らせる
苦味・・・毒の存在を知らせる
旨味・・・タンパク質の存在を知らせる

2.子どもに食べ物の好き嫌いが起こる原因

味蕾で感じとる味覚の役割による遺伝的要素

味覚には、その食べ物が有益なものか、有害なものかを知らせる役割があります。甘味・塩味・旨味は、生きるために必要な栄養素であると知らせるため、自然にその食べ物を好むようになります。しかし、苦味や酸味は、からだによくないものを知らせます。つまり、子どもがお菓子やファストフードを好み、野菜や酢の物を嫌うのは、遺伝的に組み込まれた要素なのです。

お子さんの食経験による環境的要素

例えば、離乳食をはじめたばかりの赤ちゃんは、未知の食べ物に少なからず不安や恐怖を感じます。これを「ネオフォビア(新規恐怖)」とよびます。もし、お子さんがネオフォビアの状態で未知の食べ物を食べ、腹痛や下痢になるなど悪いイメージをもつと、味覚嫌悪学習といって二度とその食べ物を食べたくない、と記憶してしまいます。2歳ころがネオフォビアのピークとされているため、お子さんのイヤイヤ期がかぶると味覚嫌悪学習に拍車がかかります。なお、食べ物を食べたときに満足度が高い・元気が出たなどのよいイメージは、味覚嗜好学習をしてその食べ物への嗜好が増すことがわかっています。

子どもの好き嫌いには食経験の味覚が関係する

小さいころからさまざまな食経験をしているお子さんほど、好き嫌いが少ないことがわかっています。味を感じる味蕾は胎児にもあるため、胎盤を通じてお母さんが食べた物の味覚を感じ、出産後は母乳を通じてお母さんが食べた物の味覚を感じています。そして、胎児のころからさまざまな味覚にふれたお子さんほど、新しい味に対する許容度が高いため、妊娠中や授乳時期にお母さんが積極的にさまざまな食材を食べることが望ましいといえます。

3.嫌いな食べ物を克服して味蕾を育てよう

子どもと嫌いな食べ物の接触頻度を増やす

お子さんが嫌っている食べ物でも接触回数が増えると心理学の単純接触効果によって嫌悪度合いがうすれます。お子さんが食べることができないうちは、お母さんがおいしそうに食べている姿を見せるだけでも効果的です。

子どもにいろいろな味をふれさせる

好き嫌いが少ない人ほど、豊富な食経験を子どものころからしていることがわかります。お子さんの好む食べ物だけではなく、いろいろな味に触れると味蕾が育って味覚が変わり、好き嫌いを克服するきっかけになります。

子どもへの食べさせ方を変えてみる

野菜好きなお友だちと一緒に食事する、嫌いな野菜をお子さんが収穫する、調理方法を変えるなど、少しの工夫で食べられるようになる場合があります。むりやり食べていたら食べられるようになることもありますので、さまざまな方法を試してみるのもいいでしょう。

子どもにとっては逆効果?!おすすめできない方法

お子さんの健康を気づかう親心だとしても、次のような方法は逆効果になってしまうため、状況に合わせて注意しましょう。

・「健康にいいから」とすすめる
お子さんに健康によいものだとすすめても、その食べ物がまずいと思っているうちは理解できません。親御さんは健康情報をメリットとして理解できますが、お子さんが健康によいものはまずいものだと誤認してしまう場合があります。

・嫌いな食べ物を食べないお子さんに罰をあたえる
お子さんが好き嫌いで食べ物を食べないときに、罰をあたえてしまうのは逆効果です。ますますその食べ物が嫌いになってしまう場合があります。

4.まとめ

お子さんに好き嫌いが多いとお母さんも悩ましいでしょう。お子さんが成長するためには健康的な食事が欠かせません。好き嫌いで偏食になってしまうと必要な栄養素を十分にとることができず、病気になってしまうこともあります。できるだけたくさんの味を経験させてお子さんの味蕾を育て、好き嫌いを克服させてあげましょう。食事の様子から、お子さんの味覚について少しでも気になるようでしたら、歯医者さんに相談してみてはいかがでしょうか。原因を確認して、お子さんの楽しい食事を取り戻していきましょう。

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監修医 高橋貫之先生

本町通りデンタルクリニック

【経歴】
2003年 大阪歯科大学 卒業
2003年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 入学
2007年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 修了
2008年 大阪歯科大学 勤務
2016年 大阪歯科大学(歯周病学 助教)退職
2016年 本町通りデンタルクリニック 勤務
現在に至る。
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