過剰歯とは

【この記事の要約】

過剰歯とは:本来の本数よりも多く生えてくる余分な歯のことです。上の前歯の間や口蓋など、さまざまな場所に現れることがあります。

過剰歯の症状:歯が余分に生えることで、歯列の乱れ、その他の永久歯が正常に生えない、歯肉の腫れ、嚢胞形成、かみ合わせの異常などが見られます。

過剰歯の原因:歯のもとになる歯胚が過剰に形成されることや、遺伝的要因、発生時の異常などが関係しています。

過剰歯の診断・検査:歯科医師による視診やレントゲン検査、CT撮影などで、歯の位置や本数を確認して診断します。

過剰歯の治療:永久歯の生え方や歯並びに影響する場合は、過剰歯を抜歯し、その後に矯正治療を行うこともあります。

過剰歯の予防:先天的なものが多いため予防は難しいですが、定期検診で早期発見し、適切な時期に対応することが大切です。

過剰歯に似ている病気(症状):癒合歯、双生歯、埋伏歯、歯の奇形など、見た目が似ているため慎重な診断が必要です。

過剰歯に対応している歯科の診療科目:一般歯科、小児歯科、矯正歯科、口腔外科

この記事の目次

1.過剰歯とは

過剰歯とは、正常な歯の本数を超えて生えてくる余分な歯のことを指します。人間の歯は、乳歯が20本、永久歯が通常32本とされていますが、過剰歯がある場合はこの本数を上回ります。

多くは上顎の前歯部に現れ、特に上の前歯の中央に生える正中過剰歯がよく知られています。その他にも、下顎や口蓋、臼歯部などに見られることもあります。

過剰歯は、口腔内に萌出してくることもあれば、顎の骨の中に埋まったままの状態で発見されることもあります。自覚症状がない場合もありますが、永久歯の萌出の障害につながったり、歯列を正しい位置からずらしてしまったりするなど、さまざまな部分に影響する可能性があります。

2.過剰歯の症状

過剰歯の症状はいくつかあります。

■その他の永久歯の萌出異常
過剰歯があると、本来の永久歯が正常な位置に生えてこないことがあります。これを萌出障害と呼び、特に上顎前歯部でよく見られます。過剰歯が永久歯の萌出スペースを物理的に遮ってしまうことで、前歯が斜めや横向きに生えてしまったり、そもそも出てこなかったりします。

■歯列不正・見た目の悪化
過剰歯によって周囲の歯が圧迫されることで歯列が乱れ、結果としてかみ合わせや見た目が変わってしまうことがあります。特に前歯の位置がずれると、口を開けた時の印象が大きく変わるため、審美面でのコンプレックスを抱く患者さんもいらっしゃいます。

また、歯が重なっていることで歯みがきがしにくくなり、むし歯や歯周病のリスクが高まるといった二次的な問題も併発します。

■嚢胞や歯肉の腫れ、違和感
埋伏している過剰歯の周囲に嚢胞が形成されることがあり、これが周囲組織を圧迫すると骨の吸収や歯根の吸収が起こることもあります。進行すると、痛みや腫れを伴い、抜歯や病巣の除去といった外科的対応が必要になることもあります。

また、萌出した過剰歯が舌や頬に当たると話しにくい、食事がしにくいといった日常生活の不便を訴える方もいます。発音障害や咀嚼障害など、意外な影響が出ることもあるため、見過ごしてはいけません。

3.過剰歯の原因

過剰歯の原因は今のところ完全には解明されていません。しかし、現在までの研究や臨床報告から、いくつかの要因が関与していると考えられています。ここでは代表的な仮説を解説します。

■歯胚の過剰分裂による異常発生
最も有力とされる説が、歯胚と呼ばれる歯の芽のような組織が過剰に形成されるというものです。通常、歯胚は顎の骨の中で決められた本数だけが発生し、やがて歯に成長していきます。しかし、この過程で何らかの原因により歯胚が複製を繰り返してしまうと、不要な歯ができてしまい、それが過剰歯として出現します。これは発生初期の段階で起きるため、生後すぐや乳歯が生える前から骨の中に過剰歯の歯胚が存在していることもあります。

■遺伝的要因
過剰歯の発症には遺伝的な背景が強く影響しているとする意見も根強くあります。実際に、兄弟姉妹や親子間で同様の過剰歯が確認される例も多く、家族内発症が見られるケースでは注意が必要です。遺伝子レベルでの研究も進められており、将来的には過剰歯になりやすい体質や傾向が遺伝子解析によって分かる可能性もあります。

■先天性疾患との関係
過剰歯は、単独で生じる場合もありますが、唇顎口蓋裂などの先天性疾患や、特定の症候群の一症状として出現することもあります。たとえばクルーゾン症候群やガードナー症候群など、全身性の骨格異常や腫瘍のリスクを持つ病気の一部として過剰歯が現れることが知られています。特に口唇口蓋裂の患者では過剰歯の発生頻度が高いと報告されており、そのため過剰歯の有無を慎重に診査し、適切な対応を行うことが重要になります。このようなケースでは、歯科だけでなく小児科や遺伝科などとの連携が必要となることもあります。

■環境的要因の影響は?
一方で、発生段階での環境的ストレスや外傷、薬剤の影響が歯胚の異常形成に関与する可能性もゼロではありません。しかし、現時点ではこれらが直接的な原因とされる証拠は少なく、環境要因よりも遺伝や発生の偶発的な異常による影響の方が大きいと考えられています。

4.過剰歯の検査・診断

過剰歯の検査・診断は、まずは歯科医師が口腔内を視診・触診し、歯列に不自然なすき間や重なり、あるいは出現している余分な歯の有無を確認します。特に乳歯がなかなか抜けない、永久歯が生えてこないといった場合には要注意です。

まずは、全体のレントゲンを撮り、骨の中に隠れている過剰歯の有無、位置、方向、本数を確認します。その後、過剰歯が神経や血管の近くにある、または骨の深部に埋まっているようなケースでは、三次元的に構造を把握できる歯科用CTを使いさらに細かく状態を検査します。

5.過剰歯の治療

過剰歯の治療は、その歯や周囲の歯の状態によって異なります。過剰歯が周囲の歯に全く影響がないと分かった場合は、無理に抜歯を行わず、半年〜1年ごとの経過観察を続ける場合もあります。特に永久歯列完成前の子どもでは、萌出の自然経過を見守ることも選択肢となります。

永久歯の生え方を妨げている、嚢胞を形成しているなどのケースでは、過剰歯の抜歯が必要になります。局所麻酔による日帰りの処置で行われることが多いですが、深く埋伏している場合には口腔外科的な対応が必要となります。

過剰歯を除去したあとでも、すでに歯列不正が起こっている場合は矯正治療が必要です。特に前歯部では審美面や発音への影響があるため、抜歯後すぐに矯正歯科と連携して治療が開始されることもあります。

6.過剰歯の予防

過剰歯の予防は難しいのが現状です。過剰歯は、歯胚が過剰に形成されるという発生の過程で決定されるため、明確な予防法はありません。ほとんどが遺伝や偶発的な発生によるもので、生活習慣や食生活で防げるものではないためです。

したがって重要なのは、過剰歯が萌出する前に発見し、早めに処置を行うことです。

7.過剰歯に似ている病気(症状)

過剰歯に似ている病気(症状)は、いくつかあります。以下でいくつか似たような症状があるものについてご紹介します。

■癒合歯
癒合歯とは、隣り合った2本の歯がくっついて1本に見える状態です。歯冠だけが結合している場合もあれば、歯根まで完全に癒合している場合もあります。歯の本数を数えた時に、1本足りないように見える反面、歯冠が2本に見えるため、余分な歯があるように見え、過剰歯と誤認されることがあります。癒合歯は乳歯に多く見られ、後に生えてくる永久歯に影響を与えることもあるため、慎重な判断が必要です。

■双生歯
双生歯は、1つの歯胚が途中で分かれて2つの歯のように発育する状態を指します。見た目に2本の歯が並んでいるように見えますが、根は1本です。特に前歯部に見られることが多く、余分な歯が1本生えてきたと勘違いされることがあります。レントゲンを撮らないと判別がつきにくいため、双生歯と診断された場合は、萌出状態や歯列への影響を考慮しつつ経過観察や処置が行われます。

■埋伏歯
埋伏歯とは、本来生えるべき歯が顎の骨の中に埋まったまま生えてこない状態です。レントゲン上で歯が確認できるため、過剰な歯があると誤認されることがあります。埋伏しているのが過剰歯なのか、それとも普通の永久歯の萌出異常なのかを見分けるには、歯の位置・方向・形状などを総合的に評価する必要があります。また、埋伏歯は智歯によく見られますが、上顎前歯部にも出現することがあり、診断が特に難しい部位とされています。

■歯牙腫
歯牙腫とは、歯の組織が腫瘍状に増殖してできた良性の病変です。特に複数の小さな歯のような構造をもつ複合性歯牙腫は、レントゲンで確認した際に多数の歯があるように見えるため、過剰歯との区別が困難なことがあります。歯牙腫は一般的に痛みを伴わず、偶然発見されるケースも多いですが、進行すると周囲の歯の位置を押したり、骨を吸収したりすることもあるため、過剰歯と同様に処置が必要となることがあります。

8.過剰歯に対応している歯科の診療科目

一般歯科、小児歯科、矯正歯科、口腔外科

監修医

古橋 淳一先生

あおぞら歯科クリニック本院 理事長・院長

経歴

2000年 広島大学歯学部 卒業
2000年~2001年 医療法人社団 不二見会 ふじみ歯科医院浦安診療所 勤務
2001年~2005年 医療法人社団 不二見会 ふじみ歯科医院南行徳診療所 勤務(所長)
2005年 あおぞら歯科クリニック 開院
2007年 医療法人社団爽晴会 設立・理事長就任
2010年 あおぞら歯科クリニック鎌ヶ谷 開院
2012年 あおぞら歯科クリニック新館 開院
2015年 なないろ歯科クリニック 開院
2017年 あおぞら歯科クリニック下総中山 開院
現在に至る

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