子供の乳歯が部分的にボソボソと白濁しているのを見かけた事はありませんか?歯と歯の間にまだらに白くなっている部分があったり、帯状に色が濁っていたり。これを、気にも止めないで見過ごしてしまう方もいれば、「あれ?こんな色だったっけ?」と気にかかる方もいるでしょう。
大人の虫歯は初期の段階から色が黒や茶に濁るのに対して、乳歯の虫歯は白く濁ったような状態から始まり、進行するとそのままの色でおがくずのように歯が軟かくなっていって、穴が開いていきます。色だけで判断をすると、一見虫歯のようには見えない事が多いので注意が必要です。
勿論、進行していけば黒くなる事もありますが、大抵、黒くなるところまで進行してしまうと、かなり大きな穴があいたり、神経の治療が必要になってしまったりします。この記事では、乳歯の虫歯の特徴やその治療法・予防法について詳しくご紹介いたします。
1.乳歯の白い虫歯は進行が早いので要注意!
1-1 乳歯の虫歯はどんな風に白くなる?
健康な乳歯は表面に透明感があるので、艶のある透き通った白色です。しかし、虫歯に冒されると、艶を失って行きます。見え方としては、部分的に白く浮かんでいるような感じです。
これは、虫歯によって艶の元となるエナメル質が溶け始めていることが原因です。実は乳歯だけでなく永久歯の虫歯も、初期の状態ではこのように艶のない白色になり、虫歯が進行するにつれて、茶色くなることがあります。
1-2 乳歯の虫歯は静かに進行します
乳歯の白い虫歯は、白いままで進行するので、注意が必要です。特に歯と歯の隙間などは見えにくいので、進行が確認しづらく、突然穴が空いてしまうこともあります。また、子供が痛みを訴えても、翌日には痛みが引いていたりするので、見過ごされてしまうことが非常に多いです。
1-3 放置すると神経に到達
乳歯は永久歯と違って、表面のエナメル質もその内部の象牙質も薄く、永久歯の半分程度となります。一方、永久歯へスムーズに生え変わるために、根管組織(神経や血管組織)の占める割合は大きくなっています。従って、乳歯の白い虫歯を放置すると、大事な根と神経を傷つけてしまうかもしれません。生え変わる時のことをきちんと考えて、早めの処置を行いましょう。
2.乳歯で虫歯になりやすい箇所は?
2-1 奥歯の歯間や奥歯の溝
永久歯と同様、乳歯で虫歯になりやすいところは、奥歯の歯間や奥歯の溝です。特に、奥歯と奥歯の間は、隙間が狭く、ブラッシングをしても汚れが落としにくいので、フロスなどを使って歯間のお掃除も行ってください。
2-2 上の前歯の間
上の前歯(中切歯)の間も、虫歯になりやすいところです。前歯なので、ブラッシングが不十分になるという理由ではなく、哺乳瓶でミルクや飲み物を与えることで虫歯になりやすい箇所となります。特に、哺乳瓶で飲んだ後に寝てしまうと、睡眠中は唾液の量が減るので、さらに虫歯菌の増殖につながってしまいます。
2-3 歯と歯茎の境目
歯と歯茎の境目が、帯状に白くなっている場合は、虫歯の疑いがあります。また、子供は歯茎が柔らかいので食べかすが詰まりやすく、歯と歯茎の境目のブラッシングなどを嫌がるので、しっかり歯磨きができていないことが多いです。不安な方は、正しい磨き方を歯医者さんに指導してもらうと良いでしょう。
3.乳歯の虫歯の治療法とは
3-1 初期の虫歯の場合
初期の虫歯が白く浮き出て見えるのは、歯のエナメル層のカルシウム成分が溶け出している状態で、専門用語では脱灰といいます。歯はこの脱灰と再石灰化(脱灰した歯の修復)を繰り返していますが、虫歯は脱灰し続けている状態なのです。
歯の表面が白いだけで。まだ穴が空いていない状態であれば、フッ素を塗布し再石灰化を促すことで、虫歯の進行を抑えることができます。
3-2 穴の空いた虫歯や神経に達した虫歯の場合
少し穴が空いた状態であれば、レジン(プラスチック素材)の詰め物をする治療をします。しかし、虫歯が神経まで到達しているようであれば、神経を除去する根管治療が必要になってきます。
乳歯の神経組織は、永久歯に生え変わるためにも、非常に大切な部分で、可能な限り残したいものです。前述した通り、乳歯のエナメル質や象牙質は薄く、虫歯が神経に到達しやすいので、白く見える段階で早期に処置することが肝心なのです。
3-3 抜歯はしないという選択
虫歯が歯の内部まで進行し、神経を取り除いて、大きく削らなければならない状態でも、基本的には抜歯をしない治療がとられます。乳歯を抜いて、隣の歯が寄ってしまうと、永久歯が生えてくるスペースがなくなるからです。永久歯の歯並びにも影響することなので、抜歯はできるだけ避けるべき治療なのです。
4.乳歯期の虫歯予防について
4-1 歯医者さんで行う主な虫歯予防法
乳歯の虫歯は進行がとても速く、こわいものですが、歯医者さんでちょっとした予防策を施すことで、大切な乳歯を守ることができます。主な治療法は、下記のとおりです。
・歯医者さんでの定期的なフッ素の塗布
定期的にフッ素を塗布することで、歯の再石灰化を促し、エナメル質を強化することができます。その際、奥歯の歯間など、普段のブラッシングでは落としにくいところもクリーニングしてくれます。フッ素の塗布は3ヶ月に1度くらいが目安となります。
・奥歯のシーラント
虫歯になりやすい奥歯の溝は、あらかじめシーラント(薄いプラスチック素材)で埋めてしまうことで、予防できます。奥歯の溝はブラッシングしにくく、汚れが溜まりやすいところですが、一度シーラントをしてしまえば安心です。
・唾液の検査
唾液の検査をすることで、虫歯を引き起こしやすい原因を知ることができます。唾液検査によって、口内の虫歯菌の量や、プラークの状態、唾液の量などを調べ、虫歯のなりやすさを知ることができます。それを元に、食生活やセルフケアの適切な改善方法が分かります。
4-2 自宅で行う予防方法
自分で手軽にできる乳歯虫歯の予防方法もあります。主な予防方法は下記のとおりです。
・デンタルフロスで歯間の汚れを除去
特に、磨きにくい奥歯や、虫歯になりやすい前歯の歯間では、デンタルフロスが有効です。
・フッ素入りの歯磨き粉やデンタルリンスを使う
フッ素を配合した市販の歯磨き粉や歯磨きジェルなどを使うことで、歯質を強化することができます。
・歯医者さんで提供されるキシリトール
虫歯菌の酸を抑え、再石灰化を促すキシリトール配合のタブレットなどを使うことでも、虫歯を予防できます。歯医者さん専用の商品もあるので、相談してみましょう。
・家族からの感染を防止
虫歯は感染症の一つでもあります。ですから、家族が口をつけた食器を使わないようにするだけでも、虫歯菌の感染を防ぐことができます。また、自分の口内環境を見直すことも、お子様の虫歯予防につながっていきます。
5.まとめ
いかがでしたか?子供の虫歯のしくみ、予防法などについてお分かりいただけたでしょうか。
乳歯で白く浮いて見えるところは虫歯だと認識し、できるだけ早い処置が肝心です。乳歯が虫歯でも、いずれ抜けて、永久歯に生え変わるのだから大丈夫、とは考えないようにしてください。乳歯を健全に保つことは、永久歯の健全な生え替わりにもつながってきます。
お子さんの歯で心配なことがあれば、すぐに歯医者さんに相談しましょう。
・乳歯の白い虫歯は進行が早いので要注意!
└乳歯の虫歯はどんな風に白くなる?
└乳歯の虫歯は静かに進行します
└放置すると神経に到達
・乳歯で虫歯になりやすい箇所は?
└奥歯の歯間や奥歯の溝
└上の前歯の間
└歯と歯茎の境目
・乳歯の虫歯の治療法とは
└初期の虫歯の場合
└穴の空いた虫歯や神経に達した虫歯の場合
└抜歯はしないという選択
・乳歯期の虫歯予防について
└歯医者さんで行う主な虫歯予防法
└歯医者さんでの定期的なフッ素の塗布
└奥歯のシーラント
└唾液の検査
└自宅で行う予防方法
└デンタルフロスで歯間の汚れを除去
└フッ素入りの歯磨き粉やデンタルリンスを使う
└歯医者さんで提供されるキシリトール
└家族からの感染を防止
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監修医飯田尚良先生
飯田歯科医院 院長
■院長経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る