宇田川歯科医院（東京都墨田区）

特定のどれかというよりは、いろいろな分野に学びを深めきました。私も歯科医師になってからずいぶん経ちますが、必要なことを必要なときに学んできたという自負はあります。駆け出しの頃は、基礎を固めるために虫歯・歯周病の治療を学びました。指導を受けた先生のおかげもあって、初期からしっかりしたスキルや知識を身につけることができたと思います。

勤務先の医院では、深くなった虫歯を治療するときにラバーダムという器具を使っていました。これは治療中の感染リスクを低くするための器具ですが、若いときに扱いに慣れていたので、今の医院でも大いに活用しています。

他にも歯周病治療に力を入れている先生に歯磨きの大切さを教えていただいたり、セラミックなどの自由診療の被せ物作りに打ちこんだりと、新しいことを学べる機会はできるだけ活用してきたつもりです。実は矯正も一通り勉強して、一時期は自分で矯正治療を行っていました。とにかくなんでもできる歯科医師を目指してがんばってきました。

移転を繰り返しつつも、1987年から錦糸町で診療を続けているので、患者さまとの間にはたくさんの忘れがたいエピソードがあります。中でも印象に残っているのは、開業して間もない頃に診させていただいた患者さまのことですね。

私は開業して2年目だったのですが、その方のためにちょっと複雑な入れ歯を作って差し上げました。そしてその方は、いまだにそれをなに不自由なく使ってくださっています。

入れ歯が長持ちしたのは、患者さまが歯を無くした原因を取り除くことに力を入れたことがまず一つ。そしてなにより、その方が長く通ってくださったおかげで、定期的に状態を見られたことが大きいと思います。私は治療の終わりが関係の終わりではなく、むしろ始まりだと考えています。そのために、患者さまと良い関係を築けるように努力しています。

患者さまの訴えをよく聞き、それに共感することです。たとえば歯が痛くて来た方が、何週間も痛みを我慢していたとします。私はまずそういった事情をお聞きしたうえで「そんなに長い間我慢して大変でしたね」と一言添えるようにしています。ちょっとした一言でもその方に心を開いていただき、信頼関係を築くためには必要な気配りだと思っているからです。

患者さまに共感できると、その後に必要な処置も自ずとわかってきます。痛みで苦しんでいる方ならあまりお待たせせず、すぐに治療して差し上げたほうがいいわけです。私はなによりもまず、患者さまの立場に立った診療を心がけています。

私は医院の方針として4つの考えを大切にし、スタッフと共有しています。まず当院の「理念」ですが、これは治療を通じて患者さまに幸せになってもらいたい、というものです。次に「モットー」は患者さまがご自身にとって大切な方を紹介したい、と思っていただけるような医院を作るということに尽きます。

それに続くのが「こころざし」ですが、これは患者さまと心の痛みや、喜びを分かち合うことを目指した内容です。そして最後にくるのが、患者さまの気持ちを察しつつ、笑顔を絶やさないという「こころえ」です。私たちは日々、こういった気持ちを大切にして診療に臨んでいます。

スタッフは、自分がしてほしいと思えることを患者さまにもできる、心配りの行き届いた者ばかりだと思います。いつも患者さまの気持ちを考えるように言っている私の言葉をよく実践してくれていますね。

一例に過ぎませんが、医院をきれいに保つことにはかなり気をつかってくれています。診療台についている口をゆすぐ場所は、患者さま共用になります。そのような場所でも、患者さまを気持ちよくお迎えできるようにいつも清潔にしてくれています。

そのようなスタッフの働きに応えるために、私は皆が所属していることを誇りに思えるような医院作りを心がけています。スタッフが身内を任せてくれる、そんな医院であり続けたいと思います。

ここで開業したのは成り行きなのですが、今まで続けてこられたのは下町育ちの私が錦糸町の雰囲気に馴染みやすかったことが大きいのでしょう。実はこの場所に医院を構える前に、2度移転しているんです。どちらも錦糸町で、医院同士の距離も近かったおかげで、患者さまはついて来てくれました。電話番号も変えていません。

場所を移したのは、そのときどきの自分の思いに叶った診療を実現するためです。最初の医院は譲り受けたものだったので設備に不満がありましたし、次の医院は増えてきた患者さまの数に見合わない規模でした。

そのような経緯を経てこの場所に移転してきたわけですが、以前の医院と比べて広くなったおかげで、治療が円滑に進められるようになったと思っています。若手の歯科医師を教育するのにも良い環境を整えることができました。結果としては、移転するごとにより良い医院を作れていると思います。

私は歯科医師に求められる資質は3つあると思っています。人格、知識、技術の3つです。一つ目に関しては、人として当然持っておくべきものですよね。しかし後の2つは、同時に持つことが容易ではない素質だと思います。知識ばかりあっても技術がないとそれを生かせませんし、技術に偏るとリスクを顧みずに危険な処置をしてしまいがちです。

とはいえそれらは患者さまからはわかりにくいことでしょう。そこで見てほしいのが、医院で働くスタッフです。知識があって技術に自信を持っている医院ほど、スタッフ教育が行き届いていることが多いのがわかります。スタッフの対応や院内の清潔さは、一つの判断基準になり得ます。

インプラント（※）です。私はたびたび海外にも出向いて、インプラントの勉強をしています。顎の骨が少なく、インプラントの固定が容易ではない方のために、骨の再生療法も習得しました。

インプラントには天然の歯と見わけがつかないほど、自然な仕上がりが求められます。要求されているハードルの高さが力を入れていきたいと思える理由ですね。当院では多いときは週に4回手術を行うこともあるので、実地で学べる機会に恵まれていることも大きいと思います。

※自由診療です。料金は料金表を確認してください。