予防歯科の概念が広く普及してきたことにより、近年では子どもを中心に日本人の虫歯は減りつつあると言われています。歯周病菌を始めとする口内細菌との付き合いは、人が生きている限りずっと続いていくものです。お口の中にいる細菌は数も種類も膨大で、人にとって有益なものもあれば有害なものもあります。ただし、有益か有害化の区別はそう単純なものではなく、一見有害に見えても広い意味では自己防衛の一端を担う働きをする菌も存在するため、安易に細菌を排除すると、人は生きていくことができなくなってしまいます。
最近では、腸内フローラや腸内環境の改善という言葉を耳にすることも増えてきました。しかし、腸内の環境だけを向上させても、お口に棲むばい菌がどんどん腸へと流れ込むようでは意味がありません。カビの一種であるカンジダなどの口腔内細菌は腸内バランスを乱すことが知られていますし、虫歯や歯周病、歯肉炎等の慢性的な炎症も腸内環境を乱す原因になると言われています。つまり、お口を清潔に保つことが腸内環境の改善にも役立ち、健康づくりの基礎となるのです。
細菌の増殖スピードは非常に早く、就寝前の歯磨きで一旦減らすことのできた口内細菌も、翌朝にはもう元の数に戻っていると言っても過言ではありません。だからといって体内に棲む細菌は無尽蔵に増え続けるわけではなく、一定量は決まっています。肝心なのはそのバランスで、ばい菌が善い菌の数を上回っている状態が問題なのです。不規則な食事や間食を続けているお口は酸性に傾き、歯を自然に修復する力が弱まって虫歯が進行しやすい環境となります。口腔内の細菌の質を変えるためには、まず生活習慣を見直すことから始めましょう。無駄な間食を控え、食事の後にはしっかりブラッシングをすることで、口内細菌のバランスを整え、虫歯のできにくい環境へと導くことができます。