診療のモットーを教えてください。
患者さまと良好な関係性を構築しながら治療を進めていくことを大切にしています。歯の治療は毎日の食生活のあり方に大きな影響を及ぼすだけでなく、生活の質そのものも左右する可能性のある行為です。
大事なお口の健康改善をおまかせいただくわけですから、歯科医師には患者さまのお気持ちやお考えに親身に寄り添う姿勢が求められると考えています。まずは患者さまと対話を重ねることを大事にし、患者さまに治療の内容について十分にご納得いただけるまで説明を尽くすようにしています。この姿勢は小さなお子さまの診療でも同じです。
初めて来院された患者さまに対して心がけていることがあれば教えてください。
歯科医院にお越しになる患者さまは、お口に問題や悩みを抱えて不安な気持ちになっていることがほとんどです。主訴を丁寧に捉えていくことはもちろんですが、まず患者さまの不安な気持ちに寄り添い、その不安を少しでも小さくして差し上げることを常に心がけて初診の診察を行うよう努めています。
また、治療方法を決定する場合には、患者さまのご要望やお考えをしっかり尊重するようにしています。患者さまからうかがった主訴やご要望に添って、できるかぎりの治療方法をわかりやすくご提案させていただいて、そのなかから患者さまに治療方法を選んでいただけるようにしています。
様々ある歯科治療の中で力を入れて学んだことは何ですか?その理由も教えてください。
大学院にいた頃から咀嚼についての研究を続けており、現在、特に力を入れて取り組んでいるのもこの咀嚼機能の改善にかかわる治療です。
人は生きているかぎり、おいしくお食事を楽しみたいという欲求を持ち続けますが、歯に問題があると食べるという行為に支障をきたして、食べることを楽しめなくなってしまいます。
また、しっかり噛めない状態が続くと身体全体の健康状態にも影響が及んでしまうおそれがあります。咀嚼は身体を健康に保ち、生活の質を維持するための欠かせない要素のひとつであるという考えから、特に専門的に学んできました。
歯科医院が苦手なお子さまのために行っている工夫があれば教えてください。
小さなお子さまの診療でも、大人の患者さまと同じように良好な関係性を保つことを大事にしています。
痛みが出てしまう可能性のある処置をするにもかかわらず「痛くないよ」と伝えてしまうと、それだけでお子さまとの良好な関係が崩れてしまいます。少しずつ時間をかけてお子さまとの良い関係を築くことで、スムーズに治療を進めていくことが可能となります。
当院では強い急性痛が見られるケースを除いて、まずは治療を行う前に練習をしてもらいます。診療チェアに座る練習や器具をお口のなかに入れる練習を重ねて歯科医院に慣れてもらい、お子さまが自発的に口を開けてくれるようになってから、治療を開始するようにしています。
スタッフの自慢できる点を教えてください。
当院のスタッフは子育て経験のある方ばかりです。お子さまのお口の状態や口腔ケアについて親御さまから寄せられるご相談やご質問にも、医療従事者としての立場だけでなく、母親の視点からも親身にお応えすることができます。診療の際にもお子さまにやさしく接することができます。ご年配の患者さまから気兼ねなく声を掛けていただける気さくなスタッフが揃っているのも、当院の自慢のひとつだと思います。
スタッフ教育で力を入れているところはありますか?
スタッフに対して細かなことをあれこれ伝えて教育や指導を行うことはありませんが、私と同じように、スタッフにも患者さまとの良好な関係を築いて診療にあたることの大切さを日頃から伝えています。
私たちにとっては珍しくない症状を訴えてご来院されるケースでも、患者さまにとってはお口の問題に悩み、ようやく勇気を出して当院まで来られている場合が少なくありません。スタッフにもお一人おひとりの患者さまに誠実に向き合い、丁寧にお話をうかがう姿勢を持ち続けてほしいと思っています。
今後力を入れていきたいと考えている治療について理由と共に教えてください。
咀嚼や噛み合わせの研究は、私の歯科医師としての活動の中心となるものです。これまでも咀嚼や噛み合わせに軸足を置いて診療を行ってきましたが、今後も変わらずしっかり噛めることの大切さを伝えていきたいと考えています。
食育の観点から見た噛むことの大切さをお伝えする講演や咀嚼に関する書籍の執筆、論文の発表などの取り組みにさらに力を入れ、当院で行う治療だけでなく、幅広い世代の方への啓蒙活動にも率先して取り組んでいきたいと思います。