当院では、松本歯科大学で入れ歯について深く勉強してきた院長が、責任を持って入れ歯の作製を行います。
開業している歯科医師では入れ歯を作ることにおいての技術の差というのは、ほとんどないと考えています。より良い入れ歯を作るために必要なのはコミュニケーションと、患者さまにわれわれが必要とされるときに、いかにして臨機応変に対処できるかの積み重ねです。
ちょっとしたことで悩むか、次の手を持っているか、試行錯誤や知識の裏打ちがないのに治療をしても意味はありません。幅広い症例に対応するための、歯科医師としての引き出しが必要なのです。
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私は患者さまに、小さな入れ歯を提案しています。入れ歯は物を噛むだけではありません。患者さまの残っている歯を守る意味もあります。人間は、大体自分の体重と同じくらいの強さで物を噛みます。体重が60kgの患者さまだと、60kgの噛む力が必要になります。その力を咬合力(こうごうりょく)といいます。歯の数が少なくなると、支える歯に負担がかかることになります。奥歯は、1本の歯で根の部分が3、4本くらいあります。奥歯が抜けてしまうと、根が1本しかない前歯にくらべ、奥歯1本あたりの負担はとても大きなものになります。奥歯に入れ歯を入れないと、前歯にも負担がかかってしまいます。そうすると、結局、前歯も駄目になってしまいます。そして、最終的には大きな入れ歯を入れなくてはいけなくなるのです。私は歯1本1本の負担が少ないときに、小さい入れ歯で補う方が良いと患者さまに説明をしています。
患者さまの入れ歯が合わなくなる理由は、取った型が収縮してしまうことが原因のひとつです。
入れ歯を作る時、まずその型に材料の石膏を入れます。この石膏は膨張します。型取りで収縮した分を、石膏で補う形になります。次にワックスで大体の形を作り、次は、レジンというプラスチックに置き換えます。この、レジンも収縮します。収縮と膨張を繰り返し、複雑な過程を繰り返していくので、ぴったり合う入れ歯がなかなかできません。歯科医師は、できた入れ歯を口の中に入れて、噛み合わせの調整をしています。その時、患者さまにきちんと合っているかどうかをチェックしないといけません。物の噛み方や、噛んだときの力の伝わり方は、個人個人によって違うからです。患者さまに使ってもらい、痛い所をチェックしながら修正し、良い入れ歯を作っていきます。最初の段階で、痛いのは嫌だと言われる患者さまがいます。それは例えていうなら、新しい靴を履いた時、慣れるまでその靴を繰り返し履くのと同じことです。
最初から痛くない入れ歯はなかなかありません。患者さまには、その入れ歯に慣れてもらい、修正ができるところまで使ってもらっています。