イーってすると下の歯が見えなくなる『過蓋咬合』とは

「出っ歯」や「受け口」といった前歯の形を気にされる方がいらっしゃいます。多くの方が美容面を気にされていますが、実は治療が必要な状態であることはあまり知られていません。

過蓋咬合は、なぜ治療が必要なのでしょうか。また、治療を行う場合、どのようなことをするのでしょうか。治療法や費用についてもお伝えします。

※ 掲載している平均費用は参考価格です。施術内容や症状により費用は変動する可能性がありますので、各歯科医院の治療方針を確認し、ご自身の症例に合った歯医者さんをお選びください。

この記事の目次

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1.過蓋咬合とは

過蓋咬合(かがいこうごう)とは、歯のかみ合わせが悪く、上あごと下あごの前歯の先端が揃わない状態を指します。通常よりもかみ合わせが深くなっていることから『ディープバイト』とも呼ばれています。

これは単なる噛み合わせの問題だけでなく、顎の骨にトラブルが生じているケースもあります。できるだけ早く歯科医師に相談し、治療を開始するようにしましょう。

 

2.過蓋咬合を治療したほうがいい7つの理由

過蓋咬合は、痛みを伴わず、生活に支障を感じないことが多いため、美容面だけを気にされる傾向があります。しかし、長い目で見ると、歯茎の病気や顎関節症などの病気にかかりやすくなることが知られています。過蓋咬合を治療したほうがよい主な理由について説明します。

 

前歯が大きく見えてしまう

これは多くの方が感じていることだと思います。過蓋咬合の状態になると、上顎の前歯が下顎の前歯に覆いかぶさるようになりやすいです。そのため、前歯が大きく見え、美容の面では良い状態とは言えません。

 

顎関節症になりやすい

正しい噛み合わせの状態は、歯を噛みしめたときに上顎の前歯と下顎の前歯の先端が触れる状態です。しかし、過蓋咬合では、上顎または下顎の前歯が大きく前後にずれて噛み合わせが悪くなります。そのため、顎の筋肉や骨に負担がかかりやすく、将来的に顎関節症になりやすいと言えます。

 

前歯が虫歯になりやすい

口の中の唾液は消化を助けるだけでなく、雑菌の繁殖を抑え、虫歯を防ぐ役割もあります。しかし、過蓋咬合になると、上顎または下顎の前歯が前に出やすくなります。そのため、前歯が乾燥しやすくなり、虫歯になりやすくなってしまいます。

 

歯周病になりやすい

これも同様の理由です。上顎と下顎の前歯がきちんと噛み合わないと、口の中が乾燥しやすくなります。唾液が乾燥しやすくなるため、細菌の繁殖を抑える効果が減少し、歯周病になりやすくなります。

 

歯茎の腫れや口内炎になりやすい

口の中が乾燥することに加え、前歯がきちんと噛み合わないと、歯が歯茎や口の中の粘膜を傷つけやすくなります。そのため、歯茎が腫れたり、口内炎を起こしやすくなります。

 

歯ぎしりなどで症状が悪化しやすい

ストレスを和らげるために、無意識に歯ぎしりをしてしまう方がいます。(睡眠中に歯ぎしりをすることもあります)過蓋咬合がある方は、上顎と下顎がきちんと噛み合っていないため、歯ぎしりによって歯が歯茎や口の粘膜を傷つけ、症状が悪化しやすくなります。

 

虫歯を被せたものが壊れやすい

虫歯治療を受けていても、過蓋咬合の方は上顎と下顎の歯全体が噛み合っていません。そのため、一部の歯に不自然に力がかかりやすく、虫歯治療で被せた金属が破損しやすくなります。

3.歯医者さんで行う過蓋咬合の治療

過蓋咬合は治療が必要な病気です。歯医者さんで過蓋咬合の治療を行う場合、矯正治療が主な治療法になります。

 

矯正治療のおおまかな流れ

過蓋咬合の治療の大まかな流れは以下の通りです。

1.診断と初期矯正
歯科医師が過蓋咬合の状態を確認します。噛み合わせのずれが大きい場合は、バイトプレートという専用の器具を使って矯正を行います。また、過蓋咬合が顎の骨の異常による場合は、まず顎の骨の手術を行い、骨の状態が落ち着く半年後を目安に矯正を開始します。

2.ワイヤー矯正
噛み合わせのずれがさほど大きくない場合は、ワイヤーを歯にかけて正常な噛み合わせに近づける矯正を行います。ワイヤーは歯の表側にかけ、つけっぱなしの状態で1年から1年半程度かけて矯正します。美容面を気にされる方には、歯の裏側からワイヤーをかける「舌側矯正」という方法もあります。

3.矯正後の安定化
歯の噛み合わせが整ったら、矯正器具を外し、歯科医師の指導に従って歯並びを安定させる治療を行います。

 

矯正以外に使う器具

過蓋咬合の矯正治療は、一般的に歯にワイヤーをかけて行います。

しかし、噛み合わせのずれが大きい場合は、バイトプレート(ワイヤーと同様に24時間装着)や歯列矯正用咬合誘導装置を使用します。歯列矯正用咬合誘導装置は、就寝時と日中の1時間装着するのが一般的です。

 

過蓋咬合の治療の期間、治療費の目安は?

大人の場合、ワイヤー矯正に必要な治療期間は1年半から2年程度とされています。また、整った歯並びを安定させるための保定治療には、2年程度が一般的です。顎の骨に異常がある場合は、先に手術を行い、手術後半年程度落ち着いた時期から矯正を開始します。

お子さんの場合は、別の配慮が必要です。乳歯の状態で矯正を始める場合、歯並びを矯正し、顎を広げる治療を1年から1年半程度かけて行います。その後、2年から3年程度かけて歯が永久歯に生え替わった後、新たに生えてきた永久歯の噛み合わせを確認します。

治療費についてですが、厚生労働大臣が定めた先天性の病気が原因の場合や、外科手術が必要な顎の変形が原因の場合は、健康保険を適用して過蓋咬合の治療ができますが、それ以外の場合は自由診療となります。

◆保険適用
・矯正費用:25万円程度
・顎の手術が必要な場合の手術・入院費用:25万円~40万円程度

◆自由診療
・矯正費用:60万円~80万円程度
・顎の手術が必要な場合の手術・入院費用:60万円~150万円程度

4.まとめ

過蓋咬合は、美容面だけでなく、歯や歯茎、顎にさまざまな負担を生じさせる病気です。特にお子さんの場合、歯が生え変わる時期に問題が生じることがあります。そのため、できるだけ早いうちに治療を開始することが重要です。

子どもも大人も、治療には年単位の時間がかかりますが、顎の骨の変形や先天性の病気が原因で過蓋咬合が起きている場合は、健康保険が適用されます。治療費の負担を軽減できる場合があり、矯正の方法も美容面での負担が少ない方法が行われています。まずは歯科医師に相談し、治療が必要かどうかを確認することが大切です。

監修医

貝塚 浩二先生

コージ歯科 院長

経歴

1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年~ (医)友歯会ユー歯科~ 箱根、横浜、青山、身延の診療所 勤務
1985年 コージ歯科 開業
1996年~2002年 日本大学松戸歯学部生化学教室 研究生
歯学博士号 取得
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る

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