「入れ歯の金具が気になってしまう」「入れ歯であることを人に気付かれたくない」など、部分入れ歯に対してマイナスイメージがあり、使用を迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方に知っていただきたいのが、「ノンクラスプデンチャー」です。日本ではまだまだ認知度が高くありませんが、ふつうの部分入れ歯に抵抗がある方におすすめのノンクラスプデンチャーについてご紹介いたします。
「入れ歯の金具が気になってしまう」「入れ歯であることを人に気付かれたくない」など、部分入れ歯に対してマイナスイメージがあり、使用を迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方に知っていただきたいのが、「ノンクラスプデンチャー」です。日本ではまだまだ認知度が高くありませんが、ふつうの部分入れ歯に抵抗がある方におすすめのノンクラスプデンチャーについてご紹介いたします。
ノンクラスプデンチャーは、皆さんがイメージする入れ歯のような金属のバネ(クラスプ)を使わない入れ歯のことです。
ふつうの部分入れ歯は、金属のバネを残っている歯にかけて固定するため、どうしても金具が目立ってしまいますが、ノンクラスプデンチャーは金属のバネではなく歯茎と同じ色をした樹脂で入れ歯を固定するため、笑ったり話したりした際にほかの人に気づかれにくいという特徴があります。
ノンクラスプデンチャーの主なメリットは、以下の通りです。
ノンクラスプデンチャーは金属のバネを使用しません。そのため、自然な見た目で気付かれにくいことが大きなメリットです。そのため、見た目を気にする方や、目につきやすい部分の歯が欠損した方などにおすすめです。
ノンクラスプデンチャーは、金属のバネを使わず柔らかくしなりのある材質で入れ歯を固定するため、しっかりと噛んでもほかの歯への負担が少ないというメリットもあります。
ノンクラスプデンチャーは薄くて軽い素材で作られているため、装着時の違和感が少なくなります。また、使用する材質によって次のような違いがあります。
スーパーポリアミド樹脂製(ナイロン系)
入れ歯がとても柔らかい樹脂で作られているため、破折がしにくいという特徴があります。また、たわみがあるため歯の出っ張り(アンダーカット)に左右されにくく、適応範囲が広いこともメリットです。
ポリカーボネイト樹脂製
ふつうの入れ歯(アクリルレジン)と比べて約2倍の硬度と約8倍の耐衝撃性があり、歯肉が痩せたり破損した場合でも修理が可能です。
ふつうの部分入れ歯は、動かないように固定するクラスプに金属を使用しているため、金属アレルギーがある方は使えない場合があります。しかし、ノンクラスプデンチャーは金具を使用しないため、金属アレルギーを持つ方でも装着することができます。
インプラント治療を希望しても、糖尿病や骨粗鬆症、リュウマチなどの理由で治療を受けることができない場合があります。ノンクラスプデンチャーはインプラント治療と同じような見た目に回復できるため、インプラントの治療が受けられないと診断された方には、おすすめと言えるでしょう。
また、インプラント治療には長い期間がかかるため、ノンクラスプデンチャーを使って、ほかの人にインプラント治療を受けていることがわからないようにする場合もあります。
ノンクラスプデンチャーの主なデメリットは、以下の通りです。
ノンクラスプデンチャーは自費診療(保険外診療)であり、診療費用はすべて自己負担となるため、ふつうの入れ歯よりも費用が高価になります。治療の際は歯医者さんから十分に説明をしてもらい、費用面についてもしっかりと納得したうえで治療を受けましょう。
ノンクラスプデンチャーは、アンダーカットと呼ばれる歯の出っ張りに入れ歯の床をひっかけて入れ歯を固定します。そのため、出っ張りが少ない場合や、歯の欠損が多い場合、奥歯がまったくない場合など、状態によってはノンクラスプデンチャーを作ることができないこともあります。
ノンクラスプデンチャーは樹脂部分で入れ歯を支えるため、取り外しを繰り返しているとアンダーカットへひっかける樹脂部分が磨り減り、入れ歯がゆるく不安定になる場合があります。
ノンクラスプデンチャーは、材質によっては修理や調整が難しく、定期的に作りなおす必要があります。ただし、ポリカーボネイト樹脂でできたノンクラスプデンチャーは、よくあるアクリルレジン製の入れ歯に比べて硬く、裏打ち(リライニング、リベース)と呼ばれる調整や修理ができます。
ふつうの部分入れ歯に抵抗がある方は、一度ノンクラスプデンチャーについて歯科医院で相談してみてはいかがでしょうか。ここでは、ノンクラスプデンチャーが完成するまでの流れをご説明します。
ノンクラスプデンチャーは残っている歯に樹脂製のフックをかけて固定します。そのため、フックをかける歯が安定していない場合は入れ歯を装着できません。残っている歯は事前に検査して、問題があるようなら治療を受けるようにしましょう。
上あごと下あごの精密な歯型を取ります。
上あごと下あごが噛み合う位置を確認するための歯型を取ります。この型をもとに噛み合わせの高さを調整します。多くの場合は型取りと別の日に行われますが、作られるノンクラスプデンチャーが小さいサイズの場合は、型取りの日にまとめて取れる場合もあるので、事前に歯医者さんに相談しましょう。
噛み合わせの確認から約1週間後に、ろうなどを使った人工歯を試適(口の中に仮付け)しながら大きさ、形、色や噛み合わせなどがあっているかどうか確認し、最適な状態になるまで研磨するなどの調整を繰り返します。
試適で調整した人工歯を参考に作ったノンクラスプデンチャーを実際に装着し、装着感や使用感を確認しながら、しっかり噛める状態に最終調整して完成です。
ノンクラスプデンチャーについてご紹介してきました。これまでに部分入れ歯を使用していて、周囲からの視線が気になってしまったり、装着時に違和感があったり、悩みを抱えていた方は、ノンクラスプデンチャーを使うことで緩和できる可能性があります。
ただし、残っている歯の状態によっては治療ができない場合があり、自費診療のため治療費が高額になります。事前に歯医者さんに相談し、費用面や治療内容のことを十分に理解をしてから治療を受けるようにしましょう。
監修医
飯田 尚良先生
飯田歯科医院 院長
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る