歯を失った場合、インプラント治療を選ぶ人が増えています。インプラント治療とは、顎の骨にチタン製の金属を埋め込み、その上に人工歯を取り付ける方法です。「体内に金属を埋め込むなんて!」と驚く方もいるかもしれませんが、インプラントに使用されるチタンは体に優しく、安全性が高いとされています。
この記事では、インプラント治療に焦点を当て、その材料であるチタンのメリットとデメリットについて詳しく説明します。
歯を失った場合、インプラント治療を選ぶ人が増えています。インプラント治療とは、顎の骨にチタン製の金属を埋め込み、その上に人工歯を取り付ける方法です。「体内に金属を埋め込むなんて!」と驚く方もいるかもしれませんが、インプラントに使用されるチタンは体に優しく、安全性が高いとされています。
この記事では、インプラント治療に焦点を当て、その材料であるチタンのメリットとデメリットについて詳しく説明します。
歯を失った場合の治療方法の一つにインプラントがあります。インプラントとは「埋め込む」という意味で、歯が失われた位置の顎の骨にチタン製の金属を埋め込み、その上に人工歯を取り付ける治療法です。
インプラントは主に3つのパーツから成り立っており、構造はシンプルです。上から順に、土台の上に被せる人工歯「人工歯冠」、上と下をつなぐ「アバットメント」、そして顎の骨につなぐ「インプラント体」という構造になっています。
チタンの主な特性は、軽量で強度が高く、錆びないことです。また、チタンは「人に優しい金属」とも呼ばれています。その理由は、アレルギー反応が起こりにくく、他の金属と比べて有毒性が少ないためです。さらに、銅、鉄、アルミニウムと比べて高温でも溶けにくいという特徴もあります。
通常、人の体に異物が入ると、体はそれを排除しようとします。しかし、チタンは異なります。チタンの表面には膜があり、その膜は骨と結合する特性を持っています。この特性は、1952年にスウェーデンの科学者ブローネーマルク博士によって発見されました。
ブローネーマルク博士は、チタンの安全性を確認するための基礎研究を開始し、歯科治療に応用するためにさまざまな実験を行いました。彼が初めて患者にチタン製インプラントを試したのは1965年のことです。その患者のインプラントは問題なく機能しました。日本では1980年代に実用化されました。
チタンは骨と結合する特性があるため、インプラントは顎にしっかりと固定されます。その結果、噛む力は天然の歯と変わらないと言われており、食事も美味しく楽しめます。
インプラントは、くしゃみをしたり大きく口を開けて笑ったりしても、しっかりと固定されて外れる心配がありません。そのため、人前でも周囲を気にせずに過ごせます。
インプラントは審美性に優れており、自然な見た目で美しく仕上げることができます。外から見えるのは人工歯の部分だけです。人工歯の素材、色、形は、自分の好みに合わせて選ぶことができます。
インプラントは、歯のない部分に独立した1本の歯を作ることができます。そのため、周囲の歯に優しい治療法と言えるでしょう。ブリッジや入れ歯の治療では、周囲の歯を削って人工歯を取り付けたり、器具を引っかけて固定するため、周囲の歯に負担がかかることがあります。
どのメーカーも基本的にチタン製で細長い円柱形のインプラントを流通させています。しかし、インプラントのメーカーは世界中に存在し、国内でも30社以上、国内外を合わせると何百社もあります。実績のあるメーカーもあれば、新規参入するメーカーもあり、どのメーカーを選ぶかは歯医者さんと患者さんの判断によります。
安さだけにとらわれると品質が落ちる可能性があるため、歯医者さんにどのメーカーのインプラントを使用するかを質問し、インターネットで評判を確認しましょう。患者さん自身が納得できるメーカーを選ぶことが大切です。
チタンは他の金属に比べてアレルギー反応を起こしにくいとされていますが、100%安全というわけではありません。ごくまれにチタンによる金属アレルギーが発生することがあります。そのため、必ずチタンアレルギーがないか検査を受けましょう。検査方法には、パッチテストや血液検査などがあります。
インプラントはメンテナンスを怠ると「インプラント周囲炎」になる可能性があります。インプラント周囲炎になると、初期段階ではインプラント周辺に痛みや腫れ、出血などの症状が現れます。次第に粘膜の炎症が進行し、インプラントを支える骨が溶け出し、最終的にはインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。
インプラント治療を受ける歯医者さん選びは慎重に行いましょう。以下のポイントを参考にしてください。
多くのメーカーの中から品質や価格を考慮して選ぶのは非常に難しいため、歯医者さんの技術力が試される場面でもあります。親切な歯医者さんであれば、患者さんに最適なメーカーを選んでくれることが期待できるので、事前に確認しておくことをおすすめします。
インプラント治療と一口に言っても、その内容には「歯周病治療」「虫歯治療」「歯の根の治療」など、多くの分野が関わっています。そのため、歯医者さんだけでなく、歯科衛生士、歯科技工士、カウンセラーなどの専門スタッフが在籍していることが望ましいです。
口の中はもともと雑菌が多い場所なので、インプラント治療では細菌数を減らすことが重要です。そのため、器具の滅菌や消毒、空調管理や掃除など、歯医者さんでは徹底した感染対策が必要です。また、歯科用デジタルCTやマイクロ顕微鏡などの医療設備が整っているか、プライバシーに配慮した個室があるかなども歯医者さん選びのポイントになりますので、事前に確認するようにしましょう。
インプラント治療はほとんどの場合、自費診療となり高額な治療費がかかります。インプラント本体は既製品ですが、それ以外は手作業で行われるため、人件費も発生し高額になります。また、歯周病治療が必要になると追加料金が発生することもあります。
しかし、価格が安いという理由だけで歯医者さんを選ぶのはおすすめしません。トラブルを防ぐために、具体的な治療費と治療内容を事前に提示してもらうようにしましょう。
インプラント治療に使用されるチタンは体に優しく、安全性が高いものですが、金属アレルギーのリスクが完全にないわけではありません。チタンのメリットとデメリットをしっかり理解し、それを踏まえてインプラント治療を受けるかどうかを総合的に判断しましょう。そのためには、歯医者さんとしっかりコミュニケーションを取ることが大切です。
監修医
遠藤 三樹夫先生
遠藤歯科クリニック 院長
経歴
1983年大阪大学歯学部 卒業
1983年大阪大学歯科口腔外科第一講座 入局
1985年大阪逓信病院(現 NTT西日本大阪病院)歯科 勤務
1988年遠藤歯科クリニック 開業
現在に至る