インプラント治療、通院回数はどのくらい?

忙しい日々の中でインプラント治療を検討している方は、「ちゃんと通えるかな」と心配になることも多いでしょう。インプラント治療にかかる期間は、一般的に3カ月から1年程度とされています。通院回数の目安は7回から10回ほどですが、これは個々の症状や口の中の状態によって異なります。実際の回数や期間は歯医者さんの診療を受けてみないと確定しませんが、ここではおおよそのインプラント治療の流れを、回数と期間を確認しながら見ていきましょう。

この記事の目次

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1.インプラント治療と期間

インプラント治療の流れ

インプラント治療の流れを簡単に説明します。まず、カウンセリングと精密検査を行い、治療計画を立てます。カウンセリングでは、治療方法や悩み、希望をしっかりと歯医者さんに伝えましょう。

次に手術に進みます。手術は症例によって1回法と2回法があり、2回法の場合は第1次手術と第2次手術の間に定着期間があります。どちらの方法でも、手術後に時間をおいてから人工歯を装着し、その後メンテナンス期間に入ります。

 

それぞれの工程で、かかる日数

それぞれの工程に要する期間の目安は下記のとおりです。

・カウンセリングと精密検査・・・2日~2週間
・手術(1回法の場合)・・・1日
・第1次手術(2回法の場合)・・・1日
・定着期間(2回法の場合)・・・3~6カ月
・第2次手術(2回法の場合)・・・1日
・人工歯の装着・・・1~3カ月
・メンテナンス・・・半年に1回

では、工程をもう少し詳しくみていきましょう。

2.まずは治療計画を立てる

カウンセリングと精密検査

インプラント治療のカウンセリングと精密検査の通院回数は、目安として2回、期間は2日から2週間ほどです。治療の通院回数や期間は、患者さんの骨の状態や治療する顎の部位、治療する本数によって異なりますが、治療計画を立てた時点でおおよその回数や期間が決まります。

治療を始める前には、悩みや希望を話し合うカウンセリングを行います。希望によって治療方法が変わることもあるので、どうしたいかをしっかりと歯医者さんに伝えましょう。安心して治療を受けるために、小さなことでも不安や疑問があればカウンセリングで解消しておくことをおすすめします。

その後の精密検査の内容は歯医者さんによって異なりますが、う蝕検査、歯周検査、唾液検査、血液検査、薬物アレルギー検査、顎関節機能および咬合機能検査、上下顎のレントゲン写真、口腔内や顔面の写真撮影、歯科用CT撮影などがあります。特に歯科用CT検査は、通常の歯科治療ではあまり使われない検査で、3次元画像で骨の状態を把握できるため、より正確なインプラント治療に役立ちます。精密検査の結果をもとに、医師が治療計画を立てます。

 

術前処置の可能性

精密検査で他の疾患が見つかった場合、その治療を優先します。インプラントは失った歯を補う治療ですが、まずはなぜ歯を失ったのかを考える必要があります。歯を失う主な理由は、歯周病、虫歯、噛み合わせの問題です。残っている歯をさらに失わないように、歯周病や虫歯があれば先に治療します。また、噛み合わせが乱れている場合には、仮の歯を装着して口全体の噛み合わせを整えることもあります。

術前処置の期間や回数は患者さんの状態によって異なるため、ここではインプラント治療の期間や回数に含めていません。

3.いよいよインプラント手術

手術方法による違い

インプラントの手術には、1回法と2回法があります。インプラントは、顎の骨に埋め込む人工歯根「インプラント」、失った歯の代わりとなる「人工歯」、そして人工歯を装着する支台でありインプラントと人工歯を連結する「アバットメント」という3つの部品で構成されています。

1回法では、インプラントの埋め込みからアバットメントの連結までを1回の手術で行います。2回法では、第1次手術でインプラントを埋め込んだ後に歯肉を縫合し、インプラントと骨が結合するための定着期間を設けます。第2次手術では、再び歯肉を切開してアバットメントを連結します。

 

1回法と2回法どちらがいいのか

結論として、どちらの方法が優れているとは一概には言えません。1回法は手術が一度で済むため、患者さんの負担が少ないです。一方、2回法はインプラントを歯肉の中に完全に埋め込むため、治癒期間中の負担が少なく、細菌感染のリスクが低いというメリットがあります。

手術回数が少ない方が良いと思われるかもしれませんが、2回法はほとんどの症例に対応できるのに対し、1回法には骨が十分にあるか、感染リスクを抑える必要がないかなどの適応条件があります。顎の骨を増やす手術(骨再生法)を行う場合や全身疾患を持っている場合など、感染リスクを抑える必要があるとき、また審美的要求が高い場合や医院が採用しているインプラントメーカーによっても2回法が選択されることがあります。

 

1回法の場合

1回法の場合、通院回数の目安は1回で、手術は1日で完了しますが、定着期間として3~6カ月が必要です。

麻酔をした後、歯肉を切開して顎の骨にドリルで穴を開けます。そこにインプラントを埋め込み、人工歯を装着する支台となるアバットメントという接続部分を連結します。アバットメントの上部が歯肉の上に出ている状態で手術が終了します。手術後、すぐに人工歯の型取りを行うこともあります。埋め込んだインプラントと骨が結合するために、定着期間として3~6カ月が必要です。

 

2回法の場合

2回法の場合、通院回数の目安は3回で、第1次手術と第2次手術の間に定着期間として3~6カ月が必要です。

第1次手術では、インプラントを埋め込む手術を行います。1回法と同様に、麻酔をした後、歯肉を切開して顎の骨にドリルで穴を開け、インプラントを埋め込みます。この状態で歯肉を一度縫合して終了となります。インプラントの本数や場所によって所要時間は異なりますが、1~3時間ほどで、入院の必要はありません。2週間後に消毒と抜糸を行います。その後、インプラントと骨が結合するための定着期間を設けます。上顎では約6カ月、下顎では約3カ月が必要です。

第2次手術では、人工歯を装着するためのアバットメントという接続部分を埋め込む手術を行います。麻酔後、歯肉を切開して不要な骨を削り、アバットメントを連結します。アバットメントの上部が歯肉の上に出ている状態で手術は終了します。所要時間は約30分です。

 

人工歯の装着

人工歯の装着に必要な通院回数は目安として3~5回ですが、調整が必要な場合はさらに増えることがあります。期間は1~3カ月です。

1回法・2回法のどちらの場合も、アバットメントを接続してから約1~6週間後に人工歯の型取りを行います。まず歯型を取り、お口の形に合わせた型取りの枠(トレー)を作製します。約1週間~10日後、一般的なシリコン素材を作製したトレーに入れ、口の中にセットし、シリコンが固まるのを4~5分待ちます。歯型を取るのにトータルで40分~1時間ほどかかります。

また、その日に噛み合わせ用の歯型も採取します。口を開いた状態でシリコンをセットし、歯を噛み合わせて固まるまで30秒待ちます。治療範囲が大きい場合は、1週間~10日後に詳細な噛み合わせや顎の位置を確認するために噛み合わせの型取りを行います。

さらに1週間~10日後、お口の状態や症例によりますが、アバットメントとの接続部分に人工歯が適合するか、お口の中で実際に合わせてチェックします。そして1~2週間後に作製したインプラントを装着します。人工歯を装着した後は、1~2週間ごとに歯や噛み合わせに違和感などのトラブルがないかをチェックし、調整を繰り返します。

4.メンテナンス期間

メンテナンスは半年に1回ほど

問題が解決したら、メンテナンス期間に移行します。メンテナンスの頻度は口の状態や病院によって異なりますが、人工歯を装着してから3カ月後に行うことが多いです。その後もインプラントを長く使い続けるために、年に2~3回は歯医者さんで口の中の状態をチェックし、メンテナンスを受ける必要があります。

5.まとめ

インプラント治療の期間や回数は患者さんの症例によって異なりますが、おおよその流れはご理解いただけたでしょうか? インプラント治療は他の歯科治療と比べて長期間にわたることが多いですが、一生付き合っていく歯のことなので、焦らずじっくり計画を立てることが大切です。仕事が忙しい、大事なイベントが控えているなど、治療期間や回数に不安がある場合は、カウンセリングの際に歯医者さんにしっかりと伝えて相談しましょう。

監修医

鄭 尚賢先生

アイボリー歯科クリニック 顧問

経歴

1999年 渋谷教育学園幕張高等学校 卒業
2005年 東京歯科大学 卒業
2005年 ドルフィン歯科(千葉県佐倉市) 勤務
2005年 スウェーデンデンタルセンター (東京都千代田区) 勤務
2007年 駿河台下デンタルオフィス 開業 (東京都千代田区)
2008年 アイボリー歯科クリニック 開業 (東京都八王子市)
2010年 医療法人社団パーフェクトスマイル 設立
2014年 三鷹駅前デンタルオフィス開業 (東京都三鷹市)
2016年 荻窪駅前デンタルオフィス 開業 (東京都杉並区)
2018年 吉祥寺デンタルオフィス 開業 (東京都武蔵野市)
2024年 顧問 就任
現在に至る

取得資格・専門医資格
日本歯周病学会 歯周病専門医

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