インプラント治療、2ピースと1ピース、自分に合う治療法は?

歯を失った場合、歯を補う治療が必要です。そのまま放置すると、歯並びや噛み合わせが崩れてしまいます。入れ歯やブリッジなど、歯を補うための治療法はいくつかありますが、見た目の美しさや自然な使い心地から、インプラントに関心を持つ方も多いでしょう。ちなみに、インプラントには2ピースと1ピースがあるのをご存じですか?後悔しないためにも、インプラントについて正しい知識を身につけ、前向きに治療に取り組む参考にしてください。

この記事の目次

1.インプラントの2ピースと1ピースの違い

2ピースと1ピース、どっちを選ぶ?

インプラントの構造をご存じですか?インプラントは通常、インプラント本体、上部構造、アバットメントの3つのパーツから成り立っています。インプラントは大きく2つに分けられます。インプラントとアバットメントがスクリュー(ねじ)で連結されているものを2ピース、スクリューがなく、インプラントとアバットメントが一体化しているものを1ピースと呼びます。

 

2ピースを使用する治療法

2ピースタイプのインプラントは、外科的手術の1回法と2回法のどちらにも対応できます。

2回法では、手術を2回行います。1回目の手術で顎の骨にインプラントを埋め込み、歯肉を閉じます。その後、骨と結合するのを待つために3~6カ月の期間を置き、2回目の手術を行います。2回目の手術では、歯肉を切開してインプラントにアバットメントを結合させます。

1回法では、インプラントを埋め込むと同時にアバットメントも装着し、ヒーリングアバットメントと呼ばれるキャップを歯肉から出した状態で縫合します。インプラントが骨と結合したらキャップを外し、人工歯を取り付けます。手術が1回だけなので、身体的・経済的負担が軽減されます。

 

2ピースタイプの長所と短所

2ピースタイプのインプラントの長所は、適応範囲が広いことです。全身疾患がある場合や顎の骨量が不足している場合など、インプラントが難しい症例にも対応可能です。また、前歯で審美性を求める場合にも有効です。

日本で使用されているインプラントのほとんどは2ピースタイプです。アバットメントを交換することで、口腔内の状態に合わせた人工歯を取り付けることができ、歯の向きなどの調整も可能です。万が一強い衝撃を受けても、アバットメントをつなぐスクリューが折れるため、顎の骨に埋め込まれたインプラントや顎の骨自体に影響が及ぶ可能性が低くなります。

短所としては、2回手術を行うため身体への負担が大きく、費用が高額になることが挙げられます。また、パーツが多いため治療が複雑になり、期間が長くなることもあります。さらに、装着したアバットメントを固定するスクリューが緩むことがあるのもデメリットです。

 

1ピースを使用する治療法

1ピースタイプのインプラントは、インプラントとアバットメントが一体化した構造をしており、スクリューで固定されています。埋入手術は1回法で行われ、2回法とは異なり手術が1回で済むため、身体的・経済的負担が軽減されます。また、パーツが少なく手順が簡潔化されているため、治療期間が短く、2ピースタイプよりも強度があります。

 

1ピースタイプの長所と短所

長所としては、手術の回数が少なく、費用や身体的負担が抑えられることです。パーツが少ないため治療期間が短く、スクリューが緩むことがないため強い力にも耐えられます。

短所としては、顎の骨の厚みが十分でなければ使用できないことです。また、アバットメントに不具合が生じた場合、インプラントごと取り外す必要があります。アバットメントが一体化されているため、インプラントの方向によって人工歯の方向もある程度決まってしまい、微調整が難しいという点もあります。

1ピースタイプはまだ日本では使用している歯医者さんが少なく、希望しても難しい場合がありますので、まずは歯科医に相談してみましょう。

2.審美性の高いインプラントは2ピース?1ピース?

審美的に優れているのは2ピース

奥歯とは異なり、前歯は笑ったり話したりするときに見えるため、審美的な治療が求められます。審美性の高いインプラントを希望する場合は、2ピースタイプの方が適しています。1ピースタイプはインプラントの状態で被せ物の状態がほぼ決まってしまい、審美的な細かい調整が難しいです。また、隣接する歯の間に隙間があくことがあり、コンプレックスの原因となることがあります。

2ピースタイプは、骨の状態で斜めにインプラントを入れても、多種多様なアバットメントと組み合わせることで被せ物の角度を自由に変えることができます。そのため、無理なく理想的な歯並びのインプラントを入れることが可能です。

 

インプラントに使用する被せものによる審美性や強度の違い

インプラントに使用される被せ物には5種類あります。

セラミックは陶器ですが、内部が金属製のためアレルギーの心配があります。汚れがつきにくく、変色しにくい素材で美しい透明感がありますが、オールセラミックほど自然な仕上がりではありません。また、金属やジルコニアよりも強度が弱く、割れることがあります。以前はよく使われていましたが、現在ではあまり使われなくなりました。

セラミックの代わりによく使われるようになったのがオールセラミックです。オールセラミックは審美性が高く、自然な仕上がりになります。また、金属フリーのためアレルギーの心配がありません。以前は割れやすい特性がありましたが、素材の改良が進み強度が増したため、奥歯以外でも利用可能になりました。世界中で広く使用されるようになり、材料費も抑えられるようになったため、多くの人に使用されています。

その他、オールセラミックよりも硬く強度があるジルコニアや、セラミックとレジンを合わせた素材でできているハイブリッドセラミックなど、強度が高いものや安価なものもあります。それぞれにメリットとデメリットがあり、症例や部位、患者さんの希望に合わせて選ぶことができます。

3.まとめ

インプラントには2ピースと1ピースがあります。一般的に使われているのは2ピースですが、症例によっては1ピースを使うことも可能です。しかし、日本で1ピースを取り扱う歯科医が少ないため、必ずしも希望通りの治療が受けられるとは限りません。

どちらの治療法を選ぶかは、担当歯科医とよく相談する必要があります。どちらの方法を選んでも、術後のメンテナンスをきちんと行わないとトラブルを招き、インプラントごと撤去しなければならなくなるため注意が必要です。

監修医

鄭 尚賢先生

アイボリー歯科クリニック 顧問

経歴

1999年 渋谷教育学園幕張高等学校 卒業
2005年 東京歯科大学 卒業
2005年 ドルフィン歯科(千葉県佐倉市) 勤務
2005年 スウェーデンデンタルセンター (東京都千代田区) 勤務
2007年 駿河台下デンタルオフィス 開業 (東京都千代田区)
2008年 アイボリー歯科クリニック 開業 (東京都八王子市)
2010年 医療法人社団パーフェクトスマイル 設立
2014年 三鷹駅前デンタルオフィス開業 (東京都三鷹市)
2016年 荻窪駅前デンタルオフィス 開業 (東京都杉並区)
2018年 吉祥寺デンタルオフィス 開業 (東京都武蔵野市)
2024年 顧問 就任
現在に至る

取得資格・専門医資格
日本歯周病学会 歯周病専門医

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