この記事の目次
1.妊娠中にも歯医者へ行っていいの?
妊婦さんもぜひ歯医者に行きましょう。
妊娠中は口の中の状態が変化し、虫歯や歯周病ができやすくなります。
今まで異常がなかった人も、検査を受けると良いでしょう。
妊娠中の通院は大変なこともありますが、検査や治療をしておくことでお母さんの健康はもちろん、生まれてくる赤ちゃんの健康も守ることができます。
基本的に治療してはいけない時期はありませんが、妊娠期により注意点が異なるります。
妊娠期別に見た歯科治療
◆妊娠初期(1~4ヶ月ころ)
つわりがひどく流産もしやすい時期なので、長時間の治療や、緊張しやすい治療は避けたほうが良いとされています。
痛みがひどい場合は、医師と相談のうえ応急処置程度にとどめ、安定期に入ってから再開するのが一般的です。
◆妊娠中期(5~8ヶ月ころ~)
母体も胎児も安定し、もっとも治療に適した時期です。この時期に治療を受けるようにしましょう。
特別な異常がなければほとんどの治療が問題なく受けられます。
ただし、親知らずの抜歯やインプラント治療など、いわゆる口腔外科的な処置は避けたほうが良いでしょう。
もし、親知らずが腫れそうな位置にある場合は、早期に抜いてしまうのも選択肢の一つです。
◆妊娠後期(9ヶ月ころ~)
治療の態勢が苦しく、早産のリスクをともなうため治療に適した時期ではありません。
この時期の治療はなるべく避け、応急処置や予防にとどめておく方が良いとされています。
2.妊娠中に起こりやすいお口のトラブルと出産との関係
歯周病、歯肉炎
妊娠中は女性ホルモンの分泌が盛んで、それを好む歯周病菌が繁殖しやすくなります。
そのため、妊娠性の歯肉炎を引き起こし、悪化しやすくなります。
歯周病は、赤ちゃんの健康にも影響するというデータがあります。
日本臨床歯周病学会は、歯周病を患った女性は早産のリスクが約2.27倍、低体重児出産のリスクは約4.03倍高まるという報告をしています(※)。
歯周病にかかるとサイトカインという物質が発生し、これが子宮収縮に大きく関連するため、出産のタイミングを狂わせるといわれています。
妊娠中、喫煙や飲酒を控えるよう推奨されていますが、同じくらい歯周病への配慮も大切になります。
虫歯
妊娠中は唾液の分泌量が減り、口の中が虫歯になりやすい酸性に傾きます。
さらに、つわりの苦しさで歯磨きがおろそかになったり、食事の回数が増えたりする女性が多く、不衛生な状態がつづき虫歯になりやすいです。
虫歯はお母さんだけの問題ではありません。
生まれたての赤ちゃんの口には虫歯菌がいません。
しかし、親御さんの保有する虫歯菌がキスや同じスプーン、箸を使いまわすことで、唾液を介して感染してしまいます。
出産する前に親御さん自身の口の中を清潔にすること、虫歯をなくすことが、赤ちゃんを虫歯菌から守ることにつながります。
妊娠性エプーリス
「妊娠性エプーリス」とは、妊娠中にみられる良性の歯茎に出来るできものです。
妊娠初期から中期によくみられ、赤く急に大きくなったり、出血したり、痛みを伴うことがあります。
原因は、妊娠による女性ホルモンの増加にあると考えらえており、出産後は自然に治るケースが多いため過度な心配は不要とされています。
ただし、歯周病が関わっている場合もあるので、見つけたら歯医者さんへ相談することをおすすめします。
3.赤ちゃんへの影響が気になる治療について
妊婦さんは口内トラブルが起こりやすいものの、歯医者に行き治療を受ける必要ができたときに、胎児に対する影響はあるのか、気になる方が多いでしょう。
この章では、レントゲンや麻酔などの、胎児に与える影響について解説します。
レントゲン
歯医者でのX線は口に照射されるため、腹部には直接当たりません。
また、被曝量も母体や胎児に影響を与える量ではないとされています。
さらに、撮影時には鉛でできた防御エプロンをお腹にかけるので、レントゲンによる赤ちゃんへの悪影響は心配は高くないとする専門家が多いようです。
できるだけ、リラックスして治療を受けましょう。
これは一部分の歯を撮影する場合も、パノラマでお口全体を撮影する場合も同じだとされています。
なお、デジタルレントゲンであれば線量を1/10程度に減らすことができます。
放射線が心配な方は、デジタルレントゲンを設置している歯医者さんを選ぶとよいでしょう。
麻酔
一般的な虫歯治療に使われる局所麻酔(キシロカイン)は、胎児への影響がほとんどなく、使われる液量も母体や胎児に悪影響を及ぼすものではないとされています。
また、歯医者さんもいつも以上に慎重に治療に当たることが多いです。
麻酔をせず、痛みに耐えているお母さんの苦痛のほうが、赤ちゃんに悪影響を及ぼすかもしれません。
注射の痛みが怖い方、以前麻酔でアレルギー反応が出たり気分が悪くなったりした方は、どんな軽症であっても必ず事前に歯科医師に相談しましょう。
お薬
妊娠中の投薬はないに越したことはないでしょう。
歯医者さんも極力投薬治療は避けるのが一般的ですが、痛みが激しいなど、服薬しないことが逆に悪影響を及ぼしかねない場合には、必要最低限の鎮痛剤や抗生剤が出されることがあります。
もちろん、安全性の高い薬ですが、体質、妊娠期によって適切な処方は変わるため、よく先生と相談し、用法、用量を守って正しく服用しましょう。
4.歯医者さんに行く際に気をつける、妊婦さんならではの注意点
母子手帳を持参する
母子手帳に記されている情報は、歯医者さんにとって重要なことが多いです。
忘れずに持参しましょう。
また、手帳には「妊娠中と産後の歯の状態」というページがあります。
治療内容や経過はもちろん、検診や予防の結果を歯医者さんで記してもらうことで、産後の口腔ケアにも役立ちます。
自治体によっては妊婦歯科検診の費用が助成される場合があり、手続きには母子手帳が必要になります。
妊娠していることを医師へ伝える
母子手帳を忘れたときや、お腹が大きくなる前など、医師が気付きづらいと思われるときには、自分でしっかり「妊娠中」ということを伝えましょう。
産婦人科医に注意を受けている事柄も、忘れず伝えるようにしましょう。
体調に合わせた治療を
いくら歯の健康が大切といっても、つわりが苦しいときや不安定な状態のときまで頑張って治療を受ける必要はありません。
治療中につわりで苦しくなったときも同様に休憩を取り、体調に合わせた治療を行ってもらいましょう。
治療は楽な姿勢で
特にお腹が大きくなってくると、仰向けで治療を受けることが苦しくなります。
長時間苦しい状態でいると吐き気や動悸、息切れ、血圧の低下を引き起こす場合もあります。
歯医者さんではそれを考慮し、少し椅子を起こした状態で治療を行いますが、それでも苦しい場合は我慢せず、赤ちゃんのためにも遠慮なくつらいことを伝えましょう。
トイレを我慢しない
妊娠中はどうしてもトイレが近くなります。
歯医者さんもよく知っていることなので、我慢しないように治療中でも遠慮なく伝えるようにしましょう。
5.まとめ
妊娠中は、ホルモンバランスの関係で口内環境が乱れやすく、口内トラブルが起きやすいといわれています。
歯科治療は胎児に大きな影響は与えることは少ないので、赤ちゃんが生まれる前にしっかりと口内環境を整えるようにしましょう。
歯医者さんを上手に活用し、生まれてくる赤ちゃんのためにもお口の健康を維持しましょう。