「下顎前突症」(かがくぜんとつしょう)という言葉をご存知ですか?名前を聞いてもピンとこない方が多いかもしれませんが、食べ物をうまく咬み砕けない、うまく発音できない、うまく食べ物を飲み込めない、などがあります。
中でも、受け口という症状は、下顎前突症の時に出る可能性が高い症状です。よく言われる受け口やしゃくれは、見た目や噛み合わせが悪いだけでなく、全身にまで影響してしまうこともあるため、実は意外と怖いものです。
下顎前突症とは、どんな症状が起きるのでしょうか。原因や治療法、予防や自分でできる下顎前突症を解消できるトレーニングをご紹介します。
※ 掲載する平均費用はあくまでユーザー様のご参考のために提示したものであり、施術内容、症状等により、施術費用は変動することが考えられます。必ず各院の治療方針をお確かめの上、ご自身の症例にあった歯医者さんをお選びください。
この記事の目次
1.まず、下顎前突症ってどんなもの?
1-1 いわゆる「受け口」と呼ばれる症状
下顎前突症とは下顎が前に突き出している状態のことを言い、「受け口」などと呼ばれます。
これは、反対咬合、しゃくれと言われているものと同じで、上顎に比べ下顎が前に出ていることを指します。ひどいものは痛みも伴うため、慢性的な痛みがある人は注意が必要です。
1-2 下顎前突症で起こる弊害もある
下顎前突症は単なる審美障害ではありません。食べ物をうまく咬み砕けない咀嚼障害や、食べ物をうまく飲み込めない嚥下障害などの口腔障害につながる場合や、口を閉じにくい、発音がうまくできないという場合もあります。
反対咬合と呼ばれるように、通常上顎の方が下顎よりも少し前に出ていますが、下顎前突症は反対咬合と呼ばれるように反対になっています。そのため下の前歯が上の前歯を突き上げてしまいやすくなるなど、全体的に負担のかかる噛み合わせをになってしまいます。過度に力がかかると骨が溶けてしまう原因にもなりますし、虫歯や歯周病になりやすいという特徴もあります。
1-3 口元だけじゃない、下顎前突症の弊害
下顎前突症の弊害は口元だけではありません。下顎前突症により咀嚼障害(そしゃくしょうがい)や嚥下障害(えんげしょうがい)が起こると、消化不良を起こし胃腸などに大きな負担をかけ、胃腸障害を引き起こすこともあります。
噛み合わせは、口だけでなく首や肩などの筋肉にも大きな影響を与えます。噛み合わせが悪いと周辺の筋肉が緊張し肩こりの原因にもなります。
1-4 場合によっては入院手術も
重度の下顎前突症の治療には、入院して外科手術を行わなければならないこともあります。ひどくなる前に歯医者さんへ行き診てもらうのが賢明です。
2.どうして下顎前突症になるの?
2-1 下顎前突症の原因はなに?
下顎前突症の原因はいくつか考えられていますが、遺伝や環境的要因の影響が大きいとされています。他には、顎の骨の形や小ささ、歯の大きさなどの遺伝にも関連しています。
さらに、両親のどちらかが下顎前突症の場合、子供にも遺伝しやすくなります。また、子供の頃の指しゃぶりや舌癖、口呼吸なども影響しています。
2-2 幼少期の癖が原因になる場合も
子供のときの指しゃぶりや口呼吸も、下顎前突症の原因と言われています。
さらに、舌で歯を押すといった歯を強く圧迫する癖や、頬杖を突くなども原因として挙げられています。
2-3 鼻詰まりなどが原因の場合も
鼻詰まりなどで口呼吸をしていると下顎前突症になりやすいと言われています。舌の位置は通常、安静時は上顎の内側(口蓋と言われる口の天井部分)に接触しています。この舌の力と頬の力がうまく調和することで、上顎の歯列の形と大きさが保たれます。
しかし、口呼吸をすると舌は下顎の内側に張り付いてしまいます。慢性的な鼻詰まりはこの状態が続いてしまうことになります。そのため口呼吸をずっとしていると下顎前突症になりやすいのです。また、この状態は寝不足や睡眠時無呼吸の原因にもなります。
3.きちんと治る!下顎前突症の治し方
3-1 一般的な下顎前突症の治し方って?
子供の受け口の治療は、まだ骨の成長が終わっていないので骨格的な改善を治療目標にしますが、大人の患者さんの場合、骨の成長はすでにほぼ終わっているため、骨格的なアプローチではなく歯の移動によって受け口を治療していきます。
上の前歯を外側に出す、下の前歯を内側に入れる、このいずれか、もしくは両方の組み合わせで受け口の矯正治療を行っていくのが一般的です。
3-2 子供なら比較的治りやすい下顎前突症
子供の場合は骨もまだ成長中なので、柔らかく歯も動きやすいため矯正治療もスムーズに行いやすく、比較的治りやすくなっています。
様々な場所への影響が考えられるため、早めの治療を行いましょう。
3-3 大人でもきちんと治せる下顎前突症
子供に比べて大人の下顎前突症は骨がすでに出来上がっているので治療が難しいとされています。しかし、大人でもしっかりと下顎前突症を治すことは可能です。重度の下顎前突症では、顎を移動させる外科処置をする場合もあります。基本的な流れは次のようになります。
術前矯正治療をし、大学病院などで外科手術を行います。その際1~4週間ほど入院します。手術後、再び矯正治療を6か月~1年程受けます。矯正治療が終わると、リテーナーと呼ばれる保定装置を使用して噛み合わせが元に戻らないようにします。その後、外科手術で入れたプレートの除去手術を行います。プレートの除去は行わない場合もあります。
外科的矯正治療の費用は保険が適用される更生医療指定機関で矯正治療を受ければ、保険で治療を受けることが可能です。
保険適用された場合、3割負担で矯正費用が25万円くらい、外科手術、入院費用が25~40万円くらいかかります。
保険適用されない場合は全て自費治療になりますので、矯正費用85~200万円くらい、外科手術、入院費用が100~200万円くらいとかなり差があります。保険が効かない場合は自費診療なので、かかる医院により金額が大きく変わることもあります。
保険内で治療をしたい場合は更生医療指定機関で矯正治療を受けましょう。
3-4 矯正治療と手術で完全治療を目指そう!
下顎前突症は見た目や噛み合わせだけでなく、様々な病気が弊害として現れる怖い病気です。子供だけでなく、大人もできるだけ早めに治療しましょう。
下顎前突症を治療することで、今までは関係ないと思っていた肩こりなどの他の症状が改善するかもしれません。
4.自分でもできる、下顎前突症の改善方法
4-1 日ごろのトレーニングで解消されるケースも
日ごろ意識してトレーニングをすることで軽い下顎前突症であれば改善することもあります。歯医者さんに行かなくても自宅でいつでもできるので、下顎前突症が気になる人はぜひ試してみましょう。
色々な方法がありますが、よく知られているトレーニングをご紹介します。
1.口を閉じます。そして、舌を右下奥の歯と頬の間に置きます。
2. 次に、舌を左下奥の歯と頬の間までゆっくりと動かします。このとき、下の前歯が内側に戻るように、舌で押さえるように意識しましょう。
3.舌を左上奥の歯の内側に置き、右上奥の歯の内側まで動かします。
このトレーニングを1日30~50回ほど行いましょう。一気に30回やるのではなく、気付いたときなど朝、昼、夜などに分けて行っても構いません。
他にも、舌を上前歯の裏におき、舌を口蓋と呼ばれる口の天井まで吸い上げ、「ポン」と音を鳴らす運動も効果的です。このトレーニングは1日3回程度行いましょう。
4-2 子供の下顎前突症が心配な人
子供が小さいうちはよく指しゃぶりをしますが、歯が生えてきてもずっと続けてしまうと下顎前突症の原因になってしまいます。普段から指しゃぶりをさせないように気を付けてあげることで下顎前突症を防ぐことができます。
また、子供の頃の鼻炎も口呼吸になり下顎前突症の原因になりますので、早めに治療してあげましょう。そのほか舌を使う癖などがあれば気を付けてあげることで下顎前突症を予防、早期に発見できます。
5.まとめ
下顎前突症は見た目や噛み合わせだけでなく、胃腸に負担をかけたり肩こりの原因になったりと放っておくと怖い病気です。重度になると外科処置を行うこともありますので、早めに治療しましょう。
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監修医貝塚浩二先生
コージ歯科 院長
■院長経歴
1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年~ (医)友歯会ユー歯科~ 箱根、横浜、青山、身延の診療所 勤務
1985年 コージ歯科 開業
1996年~2002年 日本大学松戸歯学部生化学教室 研究生
歯学博士号 取得
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る