唇は、紫外線や外気の影響、物理的な刺激を受けやすく、荒れやすい部分です。乾燥しがちな冬場だけでなく、強い紫外線を浴びる夏場も唇が日焼けすることがあります。
この記事では、効果的な唇ケア方法や、日焼けした唇のアフターケア、日焼け対策などを紹介するとともに、唇が荒れる原因も解説しています。
皮膚のターンオーバー(※)は約28日であるのに対し、唇は3~5日程度と短いのが特徴です。そのため、早めにケアすることで早期改善が期待できる一方、放置してしまうと症状が悪化しやすいです。唇の荒れを感じたら、早めのケアが大切です。
※ターンオーバー
皮膚は、外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」の三層から成り立っています。ターンオーバーとは、そのうち「表皮」の基礎代謝のことで、新しい細胞が生まれて古い細胞が剝(は)がれ落ちるまでの周期のことです。
1.唇ケアの方法
唇ケアには「リップ」「パック」「マッサージ」「美容液」「スクラブ」などの方法があります。荒れの症状の度合いによって、下図のように分類できます。
それぞれのケア方法について、詳しく見ていきましょう。
1-1リップ
リップはドラッグストアや薬局で購入できるため、手軽に取り入れられるケアの一つです。
【選び方】
リップは、大きく「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」の3つに分けることができます。
・医薬品
乾燥やひび割れ、皮むけといった唇のケアに適しています。医薬品のリップには、荒れに効く成分が配合されています。ただし、医薬品は治療目的のため、長期間使い続けることを想定して作られていません。使用にあたっては、事前に医師や薬剤師に相談し、決められた用法用量を正しく守りましょう。
・医薬部外品
乾燥やカサつきといった、唇の荒れが気になるときに使用しましょう。医薬部外品のリップには、荒れに有効な成分が配合されています。
・化粧品
医薬部外品よりも効果や効能が緩やかなため、少し乾燥が気になる人や、幼児に使うこともできます。唇を美しく見せたり、健やかに保ったりする効果もあります。
【方法】
リップを適量出し、唇全体に優しく塗っていきます。強く押しつけすぎると摩擦によって荒れてしまうことがあるため、注意しましょう。
【頻度の目安】
乾燥や荒れが気になったときにおこないます。ただし、塗りすぎは摩擦といった刺激を唇に与えてしまうため、リップのパッケージや説明書に記載されている用法用量を守って使用しましょう。
1-2.パック
乾燥やひび割れといった、唇の荒れが気になるときのケアに効果的です。唇ケア専用のパックも市販されていますが、家にあるものでも簡単にできます。
【用意する物】
ワセリンまたはリップ、ラップ、蒸しタオルまたは温めたコットンを用意します。
【方法】
- 蒸しタオル(※1)、または、人肌程度の温かさのお湯に浸したコットンを絞り、唇を覆います。
- 唇が温まったら蒸しタオルやコットンを取り、ワセリンやリップを唇に厚めに乗せ、指で小さく円を描くように塗りこんでいきます(※2)。
- 唇を覆うほどの大きさにカットしたラップを、唇に貼ります。
上下の唇を内側までしっかりケアしたいときは、ラップを2枚用意し上下の唇に貼りましょう。
- 3~4分経過後、ラップをゆっくり剝がします。
べたつきが気になる場合は、ティッシュで優しくふき取りましょう。
※1水に浸して固く絞ったタオルを、500Wの電子レンジで1分ほど温めると蒸しタオルが作れます。レンジから取り出す際はやけどをしないように気をつけましょう。
※2唇は皮膚ではなく粘膜のため、刺激に弱いです。強すぎる摩擦は避けましょう。
【頻度の目安】
1~2週間に1回を目安におこないましょう。
1-3.マッサージ
唇の血行不良を感じた時は、マッサージも有効です。体が血行不良に陥ると、唇にも血液が行き渡らず、血色が悪くなることがあります。軽くマッサージを行うことで、血行の改善が期待できます。
【用意する物】
リップやワセリン、美容液などを用意します。
【方法】
- リップやワセリン、美容液を適量取って唇に乗せ、指で小さな円を描くように優しくマッサージします。
- 唇全体が温まり、自然なピンク色に改善されたら完了です。
【頻度の目安】
唇の血行不良を感じたタイミングでおこないましょう。お風呂上がりは体の血行が良くなっているので、より高い効果が期待できます。唇が乾燥している場合、マッサージが刺激になることがあるため、リップやパックでケアしましょう。
1-4.美容液
美容液は、縦ジワやひび割れといった、乾燥が原因の荒れに特に効果を発揮します。美容液には、唇に潤いを与え、ふっくらとさせるための成分が多く含まれているためです。
【選び方】
美容液は、用途や保湿成分、保湿効果などを参考に選ぶとよいでしょう。ほんのり色づくタイプ、グロス代わりになるタイプ、夜寝ている間のケアとして使えるタイプなどがあります。各メーカーによって保湿成分もさまざまで、ローヤルゼリーや植物エキス、コラーゲンなど唇によい成分が含まれているものも多いです。唇が荒れやすい人には、保湿効果の高いものがおすすめです。ただし、使用して見て唇に刺激や痛みを感じる場合には使用を控えましょう。
【方法】
美容液を適量手に取り、指で唇全体になじませるように優しく塗っていきます。特に乾燥がひどい場合は、美容液を塗った上からラップを貼り、パックするのもおすすめです。
【頻度の目安】
唇の縦ジワやひび割れといった、荒れが気になるタイミングでおこないます。寝る前に美容液をたっぷり塗ると、じっくり浸透させることができます。
1-5.スクラブ
スクラブとは、粒子を用いてマッサージを行うピーリング(※1)のことです。唇に古い角質が溜まっていることが原因で荒れている場合、唇専用のスクラブで除去できます。唇の乾燥や、古い角質によってくすんで見える、皮がポロポロとむける、といった荒れのケアに適しています。市販品のスクラブ(※2)もありますが、自宅で簡単に作ることもできます。
※1ピーリングとは、皮膚の表面の古い角質を剝がし、表皮の新陳代謝を促すことです。
※2ボディー用のスクラブは角質を除去する効果が高いため、粘膜である唇には不向きです。必ず唇専用のスクラブを購入しましょう。
【用意するものと作り方】
はちみつ(オリーブオイル、ホホバオイル、ワセリンでも可)と砂糖(※1)を用意します。はちみつと砂糖をそれぞれ大さじ1ずつボウルに入れ、よく混ぜます。オリーブオイル(※2)やホホバオイル、ワセリンでも同量です。
- なめらかになるまでよく混ぜたら完成です。
※1スクラブに使用する砂糖は、自宅にあるもので問題ありません。ただし、グラニュー糖といった粒子が粗いものより、上白糖のように粒子が細かい方が、肌に与える刺激が少なくおすすめです。
※2オリーブオイルを使用する場合、エキストラバージンオリーブオイルがおすすめです。酸度が低く(=酸化しにくく)、肌はもちろん、唇にも優しいオイルです。
【方法】
- 唇を水で少し湿らせます。
- スクラブを指に少量とり、唇の上に円を描くように優しくマッサージします。
- 1~2分ほどマッサージをしたら、ぬるま湯ですすぎます。
【頻度の目安】
1~2週間に1回が目安です。スクラブは刺激になることがあるため、やり過ぎには注意しましょう。
2.唇が日焼けした時の正しいアフターケアと日焼け対策
唇は、日焼けをしても皮膚のように黒くなることはありません。しかし、唇は表面が薄いことから、日焼けをすると潤いが逃げやすく、乾燥しやすい状態となります。紫外線を多く浴びた日は、肌だけでなく唇ケアもおこなうことをおすすめします。
2-1.唇を冷やす
ガーゼやタオルで包んだ保冷剤や氷を唇に当て、火照り(ほてり)が治まる程度までしっかりとクールダウンします。特に、夏場の強い紫外線が当たり、唇が日焼けしてヒリヒリ痛む場合、まずは冷やして炎症(※)を和らげることが重要です。保冷剤や氷を直接唇につけてしまうと、唇にくっついてしまったり、刺激が強すぎたりする場合があるため、ガーゼやタオルで包みましょう。
※日焼けは、紫外線を浴びたことによって起こる炎症です。
2-2.白色ワセリンで保湿
日焼けした唇には、純度の高い白色ワセリンを使った保湿ケアも効果的です。白色ワセリンを適量手に取り、小さく円を描くように唇全体に優しく塗りこんでいきます。ただし、日焼けした唇は普段よりも刺激に対して弱くなっています。塗りこむ力が強いと、摩擦によって症状が悪化する恐れがあるため、注意しましょう。
2-3.ビタミンCを摂取して体の中からケア
ビタミンCを十分に取る(※)ことで、日焼けによってダメージを受けた唇の組織の修復を体の中から促します。紫外線が当たり日焼けをすると、活性酸素が生じます。活性酸素とは、体に害を与えることがありすますが、私たちが日々取り込む酸素のうち、約2%が活性酸素になると考えられています。そのため、日焼けをしたら、活性酸素を分解してくれるビタミンCを十分に補うことが大切です。
※ビタミンCの一日当たりの摂取量
成人の一日当たりのビタミンC摂取量は、男女ともに100mg/日が推奨されています。
ビタミンCは毒性が弱く、過剰摂取しても尿から排出されるため、推奨量を超えて摂取しても重い副作用を引き起こすとは考えられていません。ただし、腎機能に障害がある人が摂取した場合、吐き気や下痢、腹痛といった胃腸への影響が見られる場合があります。腎機能に障害がある人は、ビタミンCを摂取する前に医師や薬剤師に相談しましょう。
【参考】厚生労働省 「5.2.9ビタミンC」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4x.pdf
2-4.唇の日焼け対策
【紫外線(UV)カット効果のあるリップクリームを塗る】
UVカット効果のあるリップで、日焼けを防ぐ方法があります。普段からリップを塗って保湿を心がけているのに、日焼けによって唇がカサついてしまう場合、リップにUVカット効果がない可能性も考えられます。SPF・PA(※)表示のあるリップを塗り、唇の日焼け対策をしましょう。
※SPF・PAとは
SPFとは、「Sun Protection Factor(サン・プロテクション・ファクター)」の頭文字をとったものです。
紫外線の中でも、特に日焼けを起こす力が強いUVB(280~320ナノメートルの波長の紫外線)を防ぐ効果を、数値で表したものです。Aとは、「Protection Grade of UVA(プロテクション・グレード・オブ・ユーブイエー)」の略称です。
UVBよりも皮膚の奥深くに影響を与える、UVA(320~400ナノメートルの波長の紫外線)を防ぐ効果の高さを、「+」で表したものです。
いずれも、数値が高いほど、また「+」の数が多いほど、効果が高くなります。
【参考】日本皮膚科学会 日焼け UVBとUVAはどう違いますか?
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa2/q03.html
【帽子や日傘を使う】
日本では、7~8月に紫外線の量が最も多くなると言われています(※)。肌と同じように、ツバの広い帽子やサンバイザー、日傘などを使い、唇を直射日光から守りましょう。
※【参考】国土交通省 気象庁 紫外線に関する質問
https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/uvhp/uv_a02.html
【顔用の日焼け止めは塗らない】
唇の日焼け止めには、唇用のUVカット効果があるリップを使いましょう。顔用の日焼け止めは、唇用のUVカット効果があるリップより、UVカット率が高いものが多いです。UVカット率は高いほど皮脂を吸収するという特徴があります。唇は乾燥しやすい粘膜のため、UVカット効果が高すぎると刺激となり、荒れを悪化させることがあります。
3.唇が荒れる原因
唇は、日焼けや乾燥以外にも、次のようなことが原因で荒れてしまうことがあります。
3-1.口紅の成分が合わない
口紅の成分が合わず、唇が荒れてしまう場合があります。口紅の成分が合わずに荒れてしまっている場合、低刺激のものや、保湿成分が配合されているものといったように、唇に優しい成分が含まれている口紅を選びましょう。「落ちない口紅」のように、クレンジングで落ちにくい口紅は、落とす時に唇に負担がかかることから避けたほうがよいでしょう。
3-2.リップクリームの塗りすぎ
リップクリームの塗りすぎも、唇に負担がかかって荒れてしまうことがあります。保湿成分が入っているとはいえ、1日に何度も塗ると、摩擦で負担がかかってしまうことがあるためです。特に冬は、リップクリームも固くなりやすいため、強く押しつけて塗ることで摩擦を受けやすくなります。冬にリップクリームを使うときは、少し温めて柔らかくしてから塗ったり、固形タイプではなくジェルタイプを使ったりしましょう。
3-3.唇をなめる
唇をなめると、唇の内部にある水分が蒸発しやすくなるため、ますます唇が乾燥してしまう場合があります。乾燥している時に唇をなめると潤ったように感じますが、なめることで唇を保護する油分を取ってしまうことがあるためです。唇をなめるクセがある人は、ジェルタイプのリップをつけるといったことで、無意識になめてしまうのを防ぎましょう。
3-4.歯磨き粉が合わない
「ラウリル硫酸ナトリウム」が含まれている歯磨き粉は、唇が荒れる原因の一つになることがあります。ラウリル硫酸ナトリウムは、シャンプーやリキッドファンデーション、洗剤などにも多く含まれている界面活性剤の一つです。皮脂を除去する効果があるため、唇の乾燥や荒れを招くことがあります。ラウリル硫酸ナトリウムが含まれていない歯磨き粉を選んだり、歯磨きをした後はよく口のまわりをゆすいだりして、荒れるのを防ぎましょう。
3-5.食生活
皮膚や粘膜の健康維持に欠かせないビタミンB2が不足すると、唇が荒れることがあります。ビタミンB2には、粘膜を保護する作用があるためです。納豆や卵、乳製品、レバー、うなぎなどに含まれているので、意識して取るようにしましょう。
【ビタミン不足になりやすい生活習慣】
過度な飲酒、喫煙、ストレスなどは、肌や唇が荒れる原因になります。栄養バランスのよい食生活を送ることはもちろん、過度な飲酒や喫煙を控えたり、自分なりのストレス解消法を見つけたりして、ビタミン不足を招かない生活を心がけましょう。
4.まとめ
唇ケアのポイントは、ひどくならないうちに早めにケアすることです。唇は、常に外気にさらされているため荒れやすいことに加えて、飲食したり話したり、歯を磨いたりと一日中酷使するところでもあります。また、日焼けや乾燥はもちろん、何気なくなめたりするだけで荒れることも多いです。唇の荒れの原因や症状に合った唇ケアの方法を知り、いつでもぷるぷる唇を目指しましょう。