この記事の目次
1.過剰歯ってなに?
過剰とは
過剰というのは、多いという意味です。
過剰歯とは、歯が多いという意味の言葉になります。
では、普通の歯は何本あるのでしょうか?
乳歯は20本、永久歯であれば28~32本が通常の範囲とされる本数です。
永久歯の本数に揺れがあるのは、28本の歯に加え、親知らず4本を含めた場合も正常値の範囲内とされるからです。
過剰歯というのは、それ以上の本数の歯がある、ということになります。
虫歯治療や検診のために行った歯医者さんで、レントゲンを撮影して初めて発見されることが多いです。
「過剰歯があります」と言われてビックリしたというお母さんもいるかもしれません。
過剰歯は、30~40人に1人の割合でみられ、一人につき 1本だけの場合もあれば、複数本ある場合もあるようです。
過剰歯の原因
歯が作られる段階で、顎の骨の中の歯胚(歯の卵)が余分に作られてしまったり、二つに分かれてしまったりすることで、過剰歯が出来ることがわかっています。
しかし、歯胚に異常が現れる原因は、今のところわかっていません。
過剰歯の種類
過剰歯には、2つの種類があります。
「順正(じゅんせい)」と「逆性(ぎゃくせい)」です。
順正というのは、普通に生える歯と同じ向きの歯です。
逆性というのは、顎の骨の中にうまった形のものを言います。
逆性は、多くの場合、そのままの向きでは生えてきません。
過剰歯がこの2種類のどちらなのかで、治療方法が変わってきます。
過剰歯の現れ方
乳歯の過剰歯は珍しく、ほとんどの過剰歯が永久歯です。
永久歯の過剰歯が生える場所として多いのは、上あごの2本の前歯の間、上下の親知らずの後ろといわれています。
正常な歯の根元を押してしまうことがあるので、歯並びが悪くなる原因になります。
過剰歯ってどうやって気づくの?
『子どもの歯が抜けたのに、その後なかなか生えてこない』『前歯の間の隙間が、ふさがらない』などの症状で気づくことが多いです。
特に、乳歯が抜けてから半年以上、永久歯が生えてこない場合は、一度、歯医者さんに相談してみると良いでしょう。
2.過剰歯のトラブル
永久歯が生えてこない
多くみられるトラブルとしては、上の前歯の永久歯が生えてこないというものです。
原因は、上の2本の前歯の間に過剰歯(別名、正中過剰歯/せいちゅうかじょうし)があるからと考えられます。
過剰歯があるために、正常な永久歯が成長できず、生えてくることができないケースです。
上の前歯にすきまが空いてしまう
永久歯の奥歯は、前歯よりも何年か遅れて生えてきます。
前歯の間が少々空いていても問題ありませんが、乳歯の時点で大きく空いていたり、生えてきた永久歯の前歯が広がった八の字になっていたりするときは、歯医者さんに相談しましょう。
前2本の歯の真ん中に過剰歯があるため、正常な歯を押してしまって起こるトラブルと考えられます。
永久歯の歯根を溶かしてしまう
過剰歯が埋まっている場所が悪く、そのまま骨の中で成長すると、正常な永久歯の根元を溶かしてしまうことがあります。
永久歯の根元は、エナメル質より柔らかい、セメント質という組織でできています。
セメント質の下には、エナメル質の下と同じように象牙質があります。
セメント質はエナメル質よりダメージを受けやすく、下にある象牙質が露出しやすい状態です。
象牙質が溶けると内側にある神経も損傷するため、最悪の場合、神経が死んでしまいます。
神経が死んでしまうと 永久歯が抜けやすくなるという悪影響が出ます。
嚢胞(のうほう)が出来る
嚢胞とは、袋のような形をしています。
白血球の死骸が膿として溜まったものです。
歯ぐきの中に過剰歯があった場合、その周りに嚢胞ができることがあります。
嚢胞が大きくなると 永久歯の根元を溶かしてしまうこともあります。
永久歯が虫歯になったり、歯槽膿漏(しそうのうろう/歯茎の病気)といったトラブルがあったりしたときに、歯茎が大きく腫れてしまうこともあります。
細菌感染のおそれがある
ひどい虫歯になり神経が死んでしまった場合、その虫歯の根元に過剰歯が埋まっていると、過剰歯も細菌に感染することがあります。
強い痛みが出たり、大きく腫れるといった症状が現れます。
3.過剰歯の治療
順正過剰歯の治療方法
「順正過剰歯(じゅんせいかじょうし)」とは、正常な歯と同じ向きで、まっすぐに生えてくる過剰歯のことです。
順正過剰歯は、時期がくればそのままの向きで生えてくることが多いです。
そのため、生えるのを待ってから抜くという方法が一般的です。
逆性過剰歯の治療方法
顎の骨の中に埋まったままで、普通に生える向きではなく、簡単には出てこない過剰歯を「逆性過剰歯(ぎゃくせいかじょうし)」といいます。
骨の奥深くにあり、近くの歯の影響を与える心配がない場合には、抜かずに様子を見ることもあります。
近くの歯を押してしまう恐れがある場合や、考えられる悪影響が大きい場合は、抜く必要がある場合が多いです。
永久歯や噛み合わせへの悪影響も考えられるので、いつ抜いたらよいかは、小児歯科の先生に相談しましょう。
大人になってからの過剰歯
大人になってから過剰歯が見つかった場合、治療が大がかりになることも考えられます。
過剰歯の生える向きによっては、口腔外科での治療を勧められる場合もあります。
歯並びが完成している場合は、抜歯後に歯列矯正を検討する必要も出てきます。
抜歯しなくてもいいときもある
過剰歯は抜歯をするのが一般的ですが、骨の中の深い部分に埋まっている場合は、抜かずにそのままにすることもあります。
正常に生えてくる永久歯に対して問題を起こさない状態であれば、必ず抜歯しなければいけない、ということはありません。
過剰歯を抜くか・抜かないかは、かかりつけの歯医者さんの判断を仰ぐようにしましょう。
過剰歯を抜くか抜かないかの判断は、歯医者さんで
過剰歯を抜いた方がよいか、抜かなくてよいかの判断は、正常な永久歯に影響があるかどうか、が基準となります。
歯並びが悪くなる、永久歯の根が溶けてしまうといった心配があれば、治療をおこなうかどうかの相談が必要になってきます。
骨の中にあっても、正常に生えてくる永久歯に影響のない部分であれば、抜かずにそのまま様子を見ることもあります。
どちらにしても、小児歯科の歯医者さんに相談することが大切です。
4.まとめ
「子どもの虫歯治療に行ったら、突然『過剰歯があります』と言われてしまった…」
初めて聞く言葉に、不安や心配やが増してしまった親御さんもいるかもしれません。
まずは、お子さんの歯がどういう状態なのか、正しく把握することが大切です。
信頼できるかかりつけの歯医者さんを定期的に受診し、相談とケアを継続していきましょう。
監修医 尾上 剛先生からのコメント
実は歯医者さんでレントゲン写真を取ればすぐにわかる過剰歯とそれの真逆の先天欠損。
診療をしていても「今まで聞いたことない」、「知らなかった」といわれることが多いのですが、レントゲン写真に写る過剰歯は患者さんにもわかりやすい形で現れます。
え?これ何?といわれることが多い過剰歯。
抜歯するのが基本的な処置になりますが、コラムに書いてあるとおり、抜歯すべき時期など、よく歯医者さんと相談してみてください。