この記事の目次
1.小学校低学年の歯はこんな状態
永久歯への生え変わりの時期
小学校に入ってすぐぐらいの時期に、乳歯が前歯から順に抜け始めます。そして、六歳臼歯と呼ばれる奥歯「第一大臼歯」が生えてきます。前歯から奥歯に向かって順番に、乳歯から永久歯へと生え変わってくる大切な時期なのです。
ただし、生え変わるタイミングや順番には個人差があります。小学校低学年ではまだ永久歯が生えてこないお子さんもいるので、あくまで目安として頭に入れておきましょう。
六歳臼歯とは
乳歯のさらに奥に生えてくる永久歯である六歳臼歯は、噛む力が強いので、ものを噛みくだく際に重要な役割を果たします。また、噛み合わせの基準ともなるので、大人の歯への生え変わりの第一歩として大切な存在といえるでしょう。
ところが、六歳臼歯は一番奥に生えてくる歯です。歯ブラシが届きにくいうえに食べかすや汚れも溜まりやすく、虫歯になりやすいという特徴があります。小学校低学年の子どもに対する虫歯予防のポイントは、この六歳臼歯といっても過言ではありません。
生え始めの歯は虫歯になりやすい
乳歯だけでなく永久歯も、生えてきたばかりのころは虫歯になりやすい状態なので、特に気をつけましょう。生え始めの永久歯は表面のエナメル質がやわらかく、酸にとても弱いのです。
毎日の歯みがきは当然のこと、せっかく生えてきた永久歯を虫歯にしないための予防をしっかりとしなければなりません。
2.仕上げ磨きはまだまだ必要
できるだけ毎日やってあげて
乳歯と永久歯が混ざって生えているこの時期は、歯がデコボコしているなど、まだお口の中が整っていないので、汚れが溜まりやすくなっています。そのうえ、小学校低学年の子どもは決して上手に歯みがきができるとはいえません。そこで、夜寝る前だけでも、仕上げ磨きを毎日してあげるのが理想です。
ただし、自我が発達してきて、なんでもひとりでやりたいと思う時期でもあるので、仕上げ磨きは嫌がるかもしれません。特に、これまでのように膝の上に頭をのせて磨く方法だと拒否するお子さんもいるはずです。その場合には、お子さんを立たせた状態で、親御さんが後ろからお口の中を覗きこむようにして磨いてあげるとよいでしょう。
磨き残しやすいところを重点的に
六歳臼歯は、生えてきたばかりのときには、隣の歯に比べて高さが足りません。普通に磨いているだけでは、奥まで歯ブラシがきちんと届いていないと考えてください。六歳臼歯が完全に生えきるまでには1年ほどかかりますから、その間は意識して歯みがきをしなければなりません。
奥歯を磨くときには、六歳臼歯をピンポイントで狙って歯ブラシを横から入れましょう。
また、歯が抜けているところも、歯ブラシを縦や斜めにしながら、毛先が歯にしっかりとあたるようにしてください。乳歯と永久歯が混ざっていると歯の歯の間など毛先が届きにくいので、磨き残しのないようにチェックしながら仕上げ磨きをしましょう。
歯肉炎にも注意
これから生えてくる歯は歯肉の中にあり、歯肉とはくっついていない空間ができています。そこにはどうしても汚れが溜まってしまうので、炎症が起こりやすいです。これを「萌出性歯肉炎」といい、小学生の40%がなるといわれています。
歯が歯肉からでてしまえば炎症になる心配は減るのですが、これから永久歯が何本も生えてくるこの時期には歯肉炎にも注意してあげてください。万が一歯肉炎になったとしても、早い段階で歯みがきを丁寧にすれば、腫れはひいてくるでしょう。
歯の点検もかねて
乳歯から永久歯へと生え変わり、虫歯もできやすくなる小学校低学年のお子さんの歯の状態は、親御さんがいつもきちんと把握しておくことが大切です。仕上げ磨きを毎日していれば、自然とお子さんのお口の状態はチェックできます。虫歯の早期発見にもつながるので、やはり仕上げ磨きは欠かさないでください。
また、小学生でも低学年のうちはまだ大人のいうことを素直に聞いてくれるでしょうから、歯みがきの正しい習慣をつけさせてあげるチャンスでもあります。
3.歯医者さんでお願いしたい虫歯予防
フッ素塗布
生えてすぐの歯は、酸に弱く虫歯になりやすい状態です。特に生えてから2年くらいは十分に注意しなければなりません。
ただし、虫歯を予防する働きのあるフッ素をとり込みやすいというメリットもあります。フッ素塗布の大きな作用を期待できるので、歯医者さんで定期的にフッ素を塗ってもらうようにしましょう。まだやわらかくてデリケートな永久歯をフッ素で強くして、虫歯から守ってあげることをおすすめします。
また、歯みがき粉もフッ素入りのものを選ぶとよいでしょう。
シーラント処置
虫歯になりやすい歯を合成樹脂でコーティングする処置のことをシーラントといい、初期の虫歯に有効とされています。
特におすすめなのが、六歳臼歯へのシーラント処置です。奥歯の噛み合わせ面に溝ができているので、汚れや食べかすが溜まりやすくなっています。その溝にシーラント処置を施して、虫歯になりにくくするというわけです。
また、フッ素が配合されたシーラントを用いることもできます。時間をかけてフッ素が溶けだすことで、長い時間、虫歯予防の作用が得られます。
定期検診
小学校低学年の子どもの歯は虫歯になりやすく、虫歯の進行も早いので早期発見できるかがカギとなります。定期的に、年に3回~4回程度は、歯医者さんで検診を受けるように心がけましょう。
歯の生え変わりの状態や歯並び、噛み合わせ具合などもチェックしてもらえます。合わせて、歯みがきの正しいやり方のアドバイスも親子で受けておきましょう。親御さんが必要な知識を学んで、お子さんの歯の健康維持をフォローできるようにしておくことが大切です。
4.矯正治療を始めるのに適した時期
小学校低学年がおすすめの開始時期
矯正治療は、上下の前歯4本が永久歯に生え変わる、小学校低学年のころにスタートするのがちょうどよい時期です。この時期におおよその歯並びが決まるので、歯並びに少しでも不安のある場合には早めに歯医者さんに相談しましょう。
乳歯の時期に矯正治療を始めるケースもありますが、乳歯と永久歯が混在しているときに基礎的な矯正治療を始めるのが一般的です。
この時期に行うのは基礎治療
矯正治療には、永久歯が生え揃うまでの基礎治療となる1期と、永久歯が生え揃う中学生くらいに行う仕上げ治療の2期に分かれます。
まずは、基礎治療をして永久歯が正常に生えてくるスペースを確保してあげなければなりません。顎のずれを補正する目的もあります。
基礎治療では、お口の裏側にプラスチック製の床をつけ、表側の歯を抑える金属線の装置で歯を動かす、「床矯正」という方法をとるのが一般的です。
小学校低学年で矯正治療をするメリット
小学校に入ると、矯正装置の取り扱いを理解できるようになるということも、矯正治療を始めるのに適している理由のひとつです。さらに、顎の骨も成長途中ですから正常な発育を促しやすいのです。親や歯医者さんのいうこともすんなりと聞いてくれる年ごろというのも大きいでしょう。
また、小学校の低学年ではスポーツを習っている子どもが比較的少ないので、矯正装置の装着に関して問題が少ないという理由もあります。基礎治療として床矯正をしておけば、将来的に歯列を整えるために永久歯を抜歯するような治療を受けずにすむ可能性が高くなります。
5.まとめ
大人の歯が生えてくる小学校低学年の時期には、親御さんが正しい知識を身につけておく必要があります。そして、この時期ならではのケアをしてあげましょう。
乳歯から永久歯に生え変わる時期というのは、今後の歯の健康を左右する重要なポイントでもあります。これまで以上に歯を大切にして、必要に応じて検査や治療を受けさせてください。
お子さんが生涯にわたって美しく強い歯を手に入れられるかどうかは、このころの親御さん次第といっても過言ではありません。やさしく適切にフォローしてあげましょうね。