この記事の目次
1.子どもが口内炎を痛がるときはどうすれば良い?
子ども用の口内炎の薬で応急処置
子ども用の口内炎の市販薬には、塗り薬やシールタイプ、スプレータイプなどがあります。
塗り薬やシールタイプは、使用の際に患部に直接触れるため、痛みや異物感で子どもが嫌がることがあるかもしれません。
そんなときは、患部に触れずにシュッと吹き付けるスプレータイプがおすすめです。
同時に、歯磨きやうがいで細菌の増殖を抑え、口の中を清潔に保つようにしてあげましょう。
※市販薬を使用する際には薬剤師の指示に従い、用法用量を守って使用してください。
乳児の口内炎にハチミツを塗る民間療法には要注意
1歳未満の乳児の口内炎にハチミツを塗ることは、「乳児ボツリヌス症」を招く恐れがあるため、避けましょう。
ハチミツには殺菌作用があることから、「口内炎にハチミツを塗る」といった民間療法が親しまれているようです。
しかし、ハチミツには、乳児が摂取すると危険なボツリヌス菌という細菌が含まれています。
大人であれば問題ありませんが、腸内環境が整っていない1歳未満の乳児の場合、ボツリヌス菌が腸内で増殖して毒素を出し、次のような症状が出ることがあります。
- 便秘
- 母乳を吸う力の低下
- 元気をなくす
- 泣き声が変わる
- 首のすわりが悪くなる
適切な治療によって改善することが多いのですが、まれに亡くなることもあるので、十分に注意しましょう。
水分補給が重要
発熱がともなう場合、脱水症状を防いであげるためにも、水分補給が大切です。
また、口内炎を引き起こすウイルスや細菌は、乾燥することで増殖します。
こまめな水分補給で口の中を潤し、乾燥を防いであげましょう。
どんなものを飲ませたら良い?
口の中を清潔に保つためにも、水や麦茶といった甘くない飲み物が良いでしょう。
汗をかいたときは、子ども用の経口補水液もおすすめです。
経口補水液には、糖質や電解質(でんかいしつ※)がバランスよく含まれているためです。
ただし、糖質が含まれていることから、虫歯の原因になることもあります。
飲ませすぎたり、哺乳瓶で飲みながら寝てしまったりすることがないよう、注意して見てあげましょう。
※電解質とは、ナトリウム・カリウム・カルシウム・リン・マグネシウムなどの物質で、体にとって重要な栄養素であるミネラル成分です。
避けたい飲み物
刺激が強いので、炭酸飲料水やコーヒー、緑茶といったカフェインが含まれている飲み物は避けましょう。
上手な飲ませ方
乳児であれば、哺乳瓶で少しずつ飲ませてあげましょう。
ひとりで飲める年齢であれば、ストローを使わせてあげると、自分のペースで飲みやすくなります。
熱でつらそうだったり、口内炎が痛くて飲みにくそうにしていたりするときは、様子を見ながらスプーンやスポイトを使って飲ませてあげると良いでしょう。
食事で気をつけたいこと
食事ができるようなら、豆腐や卵のように栄養があり、舌触りもよく飲み込みやすいものを、少しずつ与えましょう。
味付けは薄くしたほうが、刺激が少なく食べやすくなります。
しょっぱいものや酸っぱいもの、熱いものや冷たいものは刺激が強く、痛みを増す原因になります。
食べ物は、人肌くらいに温めるか冷ますかして与えると、食べやすくなります。
避けたほうがいい食べ物
- からいもの
- 酸っぱいもの
- 固いもの
- 熱いもの
- 冷たいもの
おすすめの食べ物
- 茶わん蒸し
- 煮込みうどん
- ポタージュスープ
- 豆腐
- ヨーグルト
- すりおろしリンゴ
2.子どもがかかりやすい口内炎の種類と症状や原因、受診の目安
ウイルス性口内炎
症状
ヘルペス性口内炎
39度前後の高熱が出て、激しい痛みをともなう口内炎が多数できます。
唇や舌、歯茎が赤く腫れ上がるといった症状が出ることがあります。
生後半年~3歳くらいまでの乳幼児に多く見られます。
ヘルパンギーナ
38~40度ほどの高熱が出ます。
上顎(じょうがく=口の中の天井部分)から喉の周辺にかけて、口内炎や水疱(すいほう=水ぶくれのようなもの)が複数できます。
6月下旬~8月にかけて流行することから「夏かぜ」とも呼ばれています。
1~4歳くらいの乳幼児の間で流行しやすい病気です。
手足口病
発熱するケースは3割程度で、高熱になることも少ないと言われています。
口の中や手のひら、足の裏などに水疱ができるのが特徴です。
1~5歳くらいの乳幼児がかりやすい「夏かぜ」のひとつです。
原因
ヘルペス性口内炎…単純性ヘルペスウイルス
ヘルパンギーナ…コクサッキーA群
手足口病…コクサッキーウイルスA16、エンテロウイルス71といった複数のウイルス
受診の目安と治療法
口の中のほか、手のひらや足の裏に水疱ができたり、発熱をともなったりする場合は、ウイルス性口内炎かもしれません。
ウイルスは人から人へ感染することもあるため、該当する症状があれば、早めに小児科を受診しましょう。
ヘルペス性口内炎の治療法としては、抗ウイルス薬による治療をおこなうのが一般的です。
必要に応じて消炎(しょうえん※1)鎮痛薬や抗菌薬を使用したり、入院したりすることもあります。
ヘルパンギーナや手足口病については特効薬がなく、対症療法(※2)が中心になります。
1週間程度で良くなることが多いですが、まれに髄膜炎(ずいまくえん)や脳炎(のうえん)のような重い合併症を起こす恐れがあるため、早めに小児科を受診しましょう。
※1消炎とは、炎症を抑えるという意味です。
※2対症療法とは、その病気によってあらわれている症状に対し、処置をおこなう治療のことです。
アフタ性口内炎
症状
2~10ミリ程度の、赤く縁(ふち)取られた白っぽい潰瘍(かいよう=身体の組織の一部が崩れてできた傷)が、アフタ性口内炎です。
頰の内側や舌、歯茎などに1個、もしくは2~3個同時にできることもあります。
人にうつることはありません。
原因
ストレスや栄養不足といったことによる、免疫力の低下が原因ではないかと考えられています。
受診の目安と治療法
1~2週間もすれば自然に良くなることが多く、跡になることもほとんどありません。
2週間以上たっても良くならない場合は、歯医者さんを受診し、ほかに原因がないか診てもらいましょう。
歯医者さんでは、貼り薬やスプレータイプの薬を処方してくれます。
カタル性口内炎
症状
口の中の粘膜が、赤く炎症を起こして水ぶくれができます。
良くなるまで痛みが続きます。
口臭が発生したり、味がわかりにくくなったりすることもあります。
人にうつることはありません。
原因
頰の内側を噛んだり、やけどをしたりしてできた傷が、細菌に感染することで発症します。
歯並びの悪い歯や矯正器具が、口の中の粘膜に慢性的に当たるといった刺激で発症することもあります。
受診の目安と治療法
2週間以上良くならない場合は、歯医者さんを受診しましょう。
歯並びの悪い歯や、矯正器具が粘膜に当たっていることが原因の場合、歯列矯正や矯正器具の調整をおこなうこともあります。
3.口内炎にならないための生活習慣
口内炎は、物理的刺激や傷のほか、ストレスや栄養不足による免疫力の低下や、不衛生な口内環境といったことが原因でできることがあります。
そのため、生活習慣を整えることは、予防法として有効です。
栄養バランスのいい食事が基本
口内炎予防におすすめの食材は?
口内炎の予防には、ビタミンBやビタミンC、亜鉛などが多く含まれる食品を与えてあげると良いでしょう(※)。
ビタミン類は、皮膚や粘膜の健康維持に不可欠な栄養素です。
口内炎の治りを早めてくれる効果も期待できます。
また、亜鉛は新しい細胞を作るために必要な栄養素の一つです。
おすすめの食材は、アセロラ・ゴーヤー・ブロッコリー・牛乳・卵・大豆・豚肉・レバー・うなぎなどです。
※それぞれの栄養素の年齢・性別ごとの摂取量の目安は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」に詳しく掲載されています。
お菓子の与え過ぎに注意
糖質や脂質の多いお菓子を食べ過ぎると、ビタミンB群が大量に消費され、口内炎ができやすい状態になってしまいます。
体内で糖質や脂質といった栄養素を分解するとき、ビタミンB群が消費されるためです。
口内炎を予防するには、お菓子の与え過ぎにも注意しましょう。
調理法にひと工夫
野菜が苦手な子どもには、野菜をみじん切りにしてハンバーグに入れたり、すりつぶしてスープやカレーにしたりして与えましょう。
牛乳が苦手な子どもには、バナナやいちごといったフルーツを、牛乳と一緒にミキサーにかけてあげると飲みやすくなります。
甘みが足りないようであれば、ガムシロップを少しずつ入れて甘さを調整してあげましょう。
ただし、虫歯予防やビタミンB群が不足するのを防ぐといった観点から、ガムシロップの取り過ぎには注意してあげましょう。
規則正しい生活を心がける
ストレスを溜め込まないよう、規則正しい生活を身につけさせることも大切です。
ストレスは、自律神経を乱してしまうことがあります。
自律神経の乱れが免疫力の低下を招き、口内炎ができやすい状態になってしまいます。
中でも睡眠不足は、子どもの心身に大きなストレスを与えると言われています。
早寝早起きの習慣を身につけさせ、十分な睡眠がとれるように大人が配慮してあげることが大切です。
歯磨き・うがい習慣の徹底
口の中がいつも清潔でいられるように、歯磨きやうがいの習慣をつけてあげましょう。
「食べたら磨く」ことを、親御さんが子どもと一緒におこなうことで、自然に身につきやすくなります。
まだ自分で歯を磨ける年齢でない場合、親御さんがしっかりケアしてあげて、口の中をきれいにすることに慣れさせていきましょう。
また、朝起きてすぐや帰宅した後、うがいをする習慣も大切です。
寝ている間に増殖した細菌や、お昼を食べたあと口の中に残っている細菌を落とすことで、口内炎ができにくい口内環境を目指しましょう。
うがいは、水だけでも効果がありますが、子ども用の洗口液(※)を使ってもよいでしょう。
※洗口液とは、虫歯や歯周病、口臭などを抑えるための液体製品です。マウスウォッシュ、デンタルリンスといった種類があります。アルコール入りや大人用の洗口液は、子どもには刺激が強すぎることがあります。ノンアルコールのものや、子ども用の洗口液を使いましょう。
口呼吸に注意
口呼吸によって乾燥した口の中は、細菌が増殖しやすい環境になっています。
粘膜も傷つきやすく、口内炎ができやすい状態と言えます。
こまめに水分補給することで、口の中の乾燥を防ぎましょう。
口呼吸の原因と注意点、何科を受診する?
歯並びや顎の骨の形の影響、あるいは、鼻づまり、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎(ふくびくうえん)といった鼻の病気によって、口呼吸になることがあります。
口の中が乾燥すると、細菌が増殖したり粘膜が傷つきやすくなったりするだけでなく、口のまわりの筋力が衰える原因にもなるため、注意して見てあげることが大切です。
鼻の病気が原因の場合、まずは小児科を受診しましょう。
歯並びや顎の骨の形といったことが原因の場合は、歯医者さんを受診しましょう。
4.まとめ
子どもの口内炎は、免疫力の低下が原因でできることが多いようです。
免疫力の低下を防ぐためにも、栄養バランスのとれた食事を考えてあげるとともに、規則正しい生活を送れるように親御さんが配慮してあげましょう。
乳歯が生えたときから歯磨きの習慣を身につけさせることで、口の中を清潔に保つ意識を育てることも大切です。
お子さんがぐずる、食欲がないといったように「いつもと違う様子」が見られたら、口の中を確認するとともに、夏かぜの症状がないか熱を測りましょう。
熱がある、口の中のほか、手のひらや足の裏に水疱があるといった場合は、小児科を受診しましょう。
また、口内炎が2週間以上よくならない、歯並びや矯正器具が口の中の粘膜に当たっている、といった場合は歯医者さんを受診しましょう。