歯を失った子どもにインプラント治療を行えない理由

子ども インプラント

歯を失った子どもにインプラント治療を行えない理由

怪我などのアクシデントで子どもの歯が抜けてしまった際に考えなくてはいけないのが、失った歯に対する治療法のこと。大人の場合は、入れ歯のほかにインプラント治療が選択肢としてありますが、子どもの場合はどうなのか疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。結論からいうと、子どもにインプラント治療はおすすめできません。それには、きちんとした理由があるのです。代わりに行われる治療法についても知っておきましょう。

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この記事の目次

1.インプラント治療とは

インプラント

人工歯根を埋め込む治療

「インプラント治療」となんとなく名前は聞いたことがあっても、実際にどんな治療法であるか詳しく知っている方は多くはないかもしれません。
インプラントとは「埋め込む」という意味の言葉です。歯の根っこがあった顎の骨に、人工の歯の根を埋め込んで固定し、それを土台として人工の歯をつけるという治療法です。金属製の人工歯根を埋め込むために、顎の骨に穴を空ける必要があります。その上に、人工の歯を被せるというやり方です。

インプラント治療のメリット

顎の骨に土台を埋め込んでしっかりと固定するわけですから、人工の歯でも天然の歯に近い噛み合わせを感じられるといわれています。食事など日常生活を普通に送っていても、歯がずれてしまうといった問題もほとんどないでしょう。
金属部分は顎の骨の中に埋まっており、被せている歯には金具を使う必要がありません。人工歯の色も通常の歯のような自然な色をしているので、見た目的にも美しいのがインプラントの利点といえます。

大人でも受けられない場合もある

子どもにはインプラント治療をおすすめできないと最初にお伝えしましたが、大人だとしても誰でも受けられるとは限りません。顎の骨の形状に問題があったり骨がもろかったりすると、顎の骨にインプラントを埋め込むことは難しくなります。
年齢に関係なく、顎の骨の状態によってインプラント治療をできるかどうかを見極めなければならないのです。

2.子どもはインプラント治療を受けられない

子どもの顎は成長段階

成長期である子どもの顎の骨は、上下左右に発達し続けています。
この成長段階にインプラントを埋め込んでしまうと、顎の大きさが変わるにつれてインプラントがずれてしまうでしょう。ずれたインプラントが健康な歯にあたってしまう可能性があります。
このように健康な歯に悪影響を及ぼす恐れがあるので、子どもにはインプラント治療はおすすめできないのです。

顎の成長が止まってから

子どもの顎の成長は、18歳~25歳ころまで続くといわれています。個人差があるのですが、身長が伸び続けている間は顎も発達していると考えて下さい。つまり、身長の伸びがストップすれば、顎の成長も止まるというわけです。
ですから、子どもの身長が伸びている間には、インプラント治療は原則的にするべきではありません。年齢にこだわらずに、成長期が終わるまでインプラント治療を受けるのは控えましょう。
どうしても子どもにインプラント治療を受けさせたいとお考えの場合には、時期や対処法を考慮しなければなりませんから、歯医者さんに早めに相談したほうがよいでしょう。

3.歯の抜けた場所を放置しておくと…

隣の歯が倒れてくる

歯は隣り合っている歯と互いに支え合ってまっすぐに生えています。そのため、歯が1本でもなくなってしまうと、支えを失ってしまった隣の歯が倒れてしまう可能性があるのです。抜けた歯をそのままにしておくと、周囲の歯が少しずつ傾いていきます。最悪の場合、抜けてしまうこともあるほどです。
乳歯の場合も同様です。乳歯は永久歯が生えてくるスペースを確保する役割もありますから、必要な乳歯がない状態ではスペースが不足してしまい永久歯が正常に生えてこられなくなってしまうでしょう。
乳歯が抜けてしまった場合に適切な処置をしないと、永久歯の歯並びが悪くなる可能性が高まります。

噛み合わせに異常

奥歯がまだ生えていないタイミングで乳歯を失ってしまった場合には、奥歯が噛み合わずに歯全体の噛み合わせの位置がずれてしまうことがあります。噛み合わせがずれると顎の位置も必然的にゆがんでしまいますから、正常に噛めなくなってしまうでしょう。

顔や体がゆがむ

歯が抜けてしまうと、無意識のうちに歯が揃っていない方の側で食べ物を噛まなくなります。常に、左右どちらか片方で噛む癖がついてしまうので、顔の筋肉が均等に鍛えられずにゆがんでくるでしょう。
口周りの筋肉は、首や肩、頭にもつながっています。そのため、顔だけでなく体にもゆがみが生じて、肩こりや腰痛などを引き起こしやすくなります。

インプラント治療を受けられるまで

子どもにはインプラント治療をおすすめできませんが、だからといって失った歯をそのままにしておいてよいというわけではありません。歯を抜けたままにしておくと、ここで紹介したような問題が生じるだけでなく、いざインプラント治療を受ける段階になったときに、インプラントに人工歯をつなげるスペースが十分に確保できていない場合があるのです。
そういったケースに対しては、周囲の歯を削って歯並びや噛み合わせのバランスを整えなければなりません。状態によっては、歯の神経を抜くことさえあります。インプラント治療を受けられるまでは、歯のバランスがくずれないような治療をしておきましょう。

4.インプラントに代わる治療法

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保隙装置

保隙装置(ほげきそうち)とは、歯が抜けたことによってできたスペースを保持するための金具の装置です。
この装置をつけることで、周囲の乳歯や永久歯がずれたり傾いたりするのを防ぎます。歯が移動してしまうと永久歯が正常に生えてこられなくなってしまうので、保隙装置で場所を確保しておくというわけです。
保隙装置にはさまざまなタイプがあるので、お口の中の状態によって使い分けます。

子ども用の義歯

乳歯義歯や小児義歯というものがあります。これらも、永久歯が生えてくるスペースを確保しておくために使われます。
子どもは成長に伴い、お口の中の状態も変化していきます。義歯は削って随時大きさを調節できますから、歯の生え変わりが落ち着くまで継続して使用できるのも魅力です。特に、人目につきやすい前歯に義歯を入れるケースが多いでしょう。

5.まとめ

お伝えした通り、成長過程にあるお子さんにはインプラント治療は基本的に受けさせられません。ただし、放置しておくと歯並びに影響を与えてしまうという問題も生じてしまいます。
お子さんがなんらかの原因により歯を失ってしまった場合には歯医者さんとよく相談をして、どのような治療が適しているのか検討しましょう。歯や顎の状態、年齢など子どもの歯の治療には考慮すべき点がいくつもあるのです。

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監修医 飯田尚良先生

飯田歯科医院

院長

【経歴】
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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