子どもに塗るだけ?虫歯予防のサホライド、歯医者さんも賛否両論のワケとは

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子どもに塗るだけ?虫歯予防のサホライド、歯医者さんも賛否両論のワケとは

“サホライド塗布”という虫歯治療法はご存じですか?これは、薬を塗るだけで虫歯の進行を抑えられるというものです。子どもが歯医者さん嫌いになる原因は、機器の“チュイーン!”という音や痛みが大きいのではないでしょうか?サホライド塗布は薬を塗るだけなので、そんな不安を感じさせずにすみます。ですがこの治療、実は歯医者さんの間では賛否両論があり、使用を躊躇する歯医者さんも多いのです。この記事では、そんなサホライドのメリットとデメリットを紹介します。

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この記事の目次

1.サホライドのメリット・デメリット

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サホライドは塗布するだけの治療?

サホライドとは、フッ化ジアンミン銀の溶液のことです。初期の虫歯など、軽い虫歯の進行を抑える働きがある薬で、歯医者さんではサホライド塗布と呼ばれます。この治療では、「塗布」をするだけで歯を削ることは行いません。
サホライド塗布は、一見とてもよさそうに思える治療法ですが、やはりメリット・デメリットがあります。しっかり特徴を捉えて、お子さんに受けさせるかどうか判断しましょう。

サホライドのメリット

サホライドのメリットには、以下のようなものがあげられます。

・歯を削らなくていいため、痛みがほとんどない
・子どもの負担を減らせる(治療の機械音などがないため)
・虫歯の進行を抑制できる
・殺菌効果がある
・知覚過敏(冷たいものがしみる症状)を防げる
・保険が適用されるため、費用負担が軽減できる

サホライドは、塗るだけで完了する虫歯治療です。そのため、削るなどの行為がなく、痛みがある可能性は低いといっていいでしょう。歯を削るなどの治療では、痛みも伴いやすいですし、削る機械音なども子どもには恐怖を与えます。サホライドなら塗布するだけなので、子どもへの負担は少なくすみます。また、サホライドは保険適用内での治療ですので、経済的にも負担がありません。

サホライドのデメリット

メリットの多いサホライドですが、デメリットにはどんなものがあるのでしょうか。

・完全に虫歯を排除できる治療ではない
・初期の軽い虫歯にしか使用できない
・進行してしまう可能性もあるため、定期的な経過観察が必要になる
・象牙質の色を変化させ、歯を黒っぽく変色させる

サホライドのデメリットは、使用できる虫歯のレベルが限られることです。初期の虫歯にしか使えず、しかも、虫歯の部分を取り除く治療ではないため、再び進行し始める可能性もはらんでいます。また、デメリットとして大きいのが、「変色する」「歯が黒くなる」というもの。歯が黒くなると汚れているように見えるため、あまり好まない方が多いようです。

2.歯医者さんがサホライドを使う理由

治療に耐えられない子どもに使いやすい

歯を削る治療では、子どもがその治療中じっとしていられなかったり、お口を継続的に開けていられなかったりします。1歳や2歳などの小さいお子さんには、サホライドを使うことで治療を簡単に終えられるというメリットがあるのです。小さいお子さんには治療が難しいからといって、虫歯を放置するわけにはいきませんよね。そのため、削る治療が必要ないサホライドで治療を施すのです。

乳歯であれば使っても問題ない

サホライドは黒く変色することが一番のデメリットといえます。そのため、親御さんからの評判も悪いのが実情です。しかし、乳歯であればいつかは永久歯に生え変わるもの。また白い歯が生えてくるため、乳歯であればサホライド塗布を選ぶ歯医者さんが少なからずいるのです。変色した歯のままでいるのは永久歯が生え変わるまでなので、その説明を受けてサホライド塗布をさせる親御さんもいらっしゃいます。
また、子どもがある程度おとなしく治療を受けられる年齢になれば、乳歯が抜ける前であっても、サホライドで黒ずんだ部分を除去する治療を行うことがありります。一般的に行われる虫歯治療のように、歯を削ってインレーを詰める治療をあとから受けることもできます。
サホライドは、一時的な虫歯治療として捉えてもいいのかもしれませんね。

黒くなるのは虫歯の部分だけ

変色してしまうのは虫歯の部分だけです。歯の一部だけであれば少し変色しても目立ちにくいので、問題ないと考える歯医者さんもいます。また、奥歯や前歯の裏側など、黒くなっても見た目にわからない部分には積極的に使う歯医者さんもいるようです。
サホライドのデメリットとして、見た目が汚れたように見えることをあげる親御さんが多いため、見えないところであれば有効な治療のひとつとなります。

3.歯医者さんがサホライドを使わない理由

見た目の問題から使わない

「子どもだから歯が黒くても気にしない」という親御さんは多くはありません。見た目によくないサホライドは、できるだけ使わないという歯医者さんは大勢います。サホライドでしか治療できないのであれば仕方がありませんが、表面を薄く削ったり、インレーなどで埋めることによって見た目にもきれいに仕上げられる治療方法が存在します。わざわざサホライドを使うことはないという歯医者さんは多いようです。

永久歯だから使わない

乳歯であれば使っても、永久歯には使わないという歯医者さんもいます。これは、永久歯は生涯付き合う歯であるため、見た目に黒くなってしまうのはよくないと考えるからです。できるだけ歯は白くきれいに見えるようにと心がける歯医者さんは多いため、サホライドは選ばれづらくなるようです。

扱いに困る薬品だから使わない

サホライドを器具や処置台などにつけてしまうと、真っ黒になって取れないことがあるのだそうです。清潔で明るい空間を心がけている歯医者さんにとって、汚れるリスクは避けたいもの。扱いのわずらわしさから、サホライドを使わない歯医者さんもいるようです。

4.サホライドの治療を勧められたら

メリット・デメリットを把握し、歯医者さんにしっかり相談

サホライドの治療を勧められたら、なぜ勧めるのかを歯医者さんに尋ねるようにしましょう。
前歯などの目立つ部分に塗るのなら黒ずみが目立つはずですので、歯医者さんに相談のうえで別の治療方法を提案してもらった方がいいかもしれません。一方、奥歯などの目立たない場所であれば、サホライドを使った方がお子さんに負担がかからずにメリットが大きいかもしれません。
サホライドは一度行ってしまうと変色を食い止めることはできません。そのため、もし行う場合は後悔しないように考えてから行いましょう。近ごろではほとんど永久歯に使うことはありませんが、万が一勧められた場合はのちのちのことを考えて別の治療法にした方がいいはずです。

5.サホライドと似ている?フッ素との違いは?

進行を抑えるか、予防するかの違い

同じ塗布という言葉を使うことから、サホライドとフッ素は混同されがちです。ここでは、誤解を避けるために、サホライドとフッ素の違いをお伝えします。

◆サホライドの特徴
・すでに虫歯になっている歯に塗る
・虫歯の進行を食い止める

◆フッ素の特徴
・歯の再石灰化を促進する
・歯の質を強化させる
・酸の生成を抑える

フッ素は、軽度の虫歯であれば進行を食い止めるために使うことがありますが、基本的には予防歯科の分野で使用されるものです。サホライドは予防に使われるわけではなく、対症療法として使われるものです。

6.まとめ

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サホライド塗布は適切に行えば有効な治療法です。黒く変色してしまうために避ける歯医者さんも多いですが、目に見えない部分であればそのデメリットは感じにくいため、メリットの方が大きく感じられるかもしれません。小さな子どものうちに歯医者さんで怖い思いをして、トラウマになってしまったというケースもよく耳にします。歯医者さんを怖がらず、トラウマが残らないようにするためにも、総合的にメリットとデメリットを比べて、よりお子さんにとって適した治療を選ぶようにしましょう。

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      監修医 高橋貫之先生

      本町通りデンタルクリニック

      【経歴】
      2003年 大阪歯科大学 卒業
      2003年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 入学
      2007年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 修了
      2008年 大阪歯科大学 勤務
      2016年 大阪歯科大学(歯周病学 助教)退職
      2016年 本町通りデンタルクリニック 勤務
      現在に至る。
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