悩める子供の矯正…知っておきたい基礎知識を完全解説

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悩める子供の矯正…知っておきたい基礎知識を完全解説

矯正が必要な子供の歯並びはさまざまな種類があります。いずれも、成長とともに改善されるというよりも、悪化してしまう可能性の方が大きいことが特徴です。歯並びが気になるのであれば、まだ成長段階である子供のうちに対処しておくのがベストでしょう。

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とはいえ、歯並びの種類も矯正の治療法もさまざまあります。親がきちんと基礎知識を身につけていないと、子供にとって最適な選択ができません。値段のことも踏まえながら、どういった治療法があるのか、開始時期はいつが良いのかなどを知っておきましょう。

※ 掲載する平均費用はあくまでユーザー様のご参考のために提示したものであり、施術内容、症状等により、施術費用は変動することが考えられます。必ず各院の治療方針をお確かめの上、ご自身の症例にあった歯医者さんをお選びください。

この記事の目次

1.子供の矯正が必要なケース

受け口

下顎が上顎よりも発達している状態です。下の歯が上の歯よりも前に出ていて、奥歯の噛み合わせもズレています。顎を突き出しているようになって見た目も美しくありませんし、食べ物をきちんと噛むこともできなくなっています。

受け口は遺伝によるものが多いですが、赤ちゃんの頃からの習慣によって引き起こされるケースもあります。上顎は、舌で押し広げられながら成長していきますが、舌の下にある舌小帯(ぜつしょうたい)が小さいと上顎につける習慣ができず、受け口を作る一因になってしまうのです。

出っ歯

出っ歯とは、上顎が発達し過ぎることによって、上の前歯が前方に出ている状態です。虫歯菌の殺菌作用を持つ唾液の滞留を阻害してしまうため、出っ歯だと虫歯ができやすいと言われています。さらに、歯周病も進行しやすいとされています。

すきっ歯

すきっ歯とは、歯と歯の間に隙間ができてしまう状態のことです。虫歯が原因ではなく、自然にできてしまうものを指します。

すきっ歯だと、歯の隙間に食べカスがつまりやすくなります。虫歯菌は食べカスを栄養にして増殖するので、放置しておくと虫歯の原因になります。また、見た目も気になって、人前で口を開けて笑えないなどの問題も生じます。

凸凹の歯

歯が歯列から飛び出して凸凹しているような状態を、叢生(そうせい)、乱杭歯(らんぐいば)、八重歯などと呼びます。いずれも、歯と顎の大きさのバランスが崩れることによって引き起こされる症状です。たとえば、顎にくらべて大きな歯が生えてくると、納まるスペースが足りなくなり凸凹してしまうのです。

いかにも「悪い歯並び」という印象を与えるため、顔貌に自信を持てなくなるという問題がまずあります。また、歯が重なり合っている部分には食べカスが残りやすいので、虫歯や歯周病になりやすいのも特徴です。

2.子供の矯正の開始時期

子供の矯正のスタート時期については諸説あり、「早ければ早いほど良い」といわれることもあります。しかし、実際には、乳歯段階がベストというのがほぼ共通認識です。乳歯から永久歯に生え変わる6歳から10歳に開始するのが最適でしょう。

乳歯の段階で治療を始めれば、将来の本格的な治療に向けて万全の準備を整えることができます。永久歯がそろってからだと歯を動かすスペースを作るために抜歯が必要になってしまうこともあります。抜歯に抵抗があるならば抜歯しなくて済む可能性の高い、乳歯の頃からの矯正がおすすめなのです。

乳歯の矯正は顎を整えるための早期治療ともいえます。舌の癖を治したり、顎を広げる装置を使って口内環境を整えたりすることで、隙間なく永久歯が生えるための土台が作られるのです。

3.歯医者さんが行う子供の矯正治療と治療費

子供に向けた矯正治療にはいくつか種類があります。その中から、歯医者さんでよく取り入れられている6つの方法をご紹介しましょう。

メタルブラケット

ワイヤーを通すために歯に装着する金属「ブラケット」を使った治療です。動かしたい歯ひとつずつに、金属のワイヤーでくくりつけたブラケットを装着し、歯を細かくコントロールしながら動かします。ワイヤーを使用しているので目立ちやすいですが、耐久性が高くすり減りや変形の心配はほぼありません。値段も矯正治療の中では安いです。

・メタルブラケットの費用:70万円程度

クリアブラケット

メタルブラケットと構造は同じですが、ブラケットが透明な素材でできています。ワイヤー部分は金属ですが、シルバーだけではなくゴールド、ピーチゴールドなども選択できるようになっています。矯正装置が目立つのが嫌という子供にも適していますが、値段はやや高くなります。

・クリアブラケットの費用:80万円程度から

・上顎のみのクリアブラケットの費用:50万円程度から

リンガルブラケット

クリアブラケットでも目立つのが気になるという場合におすすめなのがリンガルブラケットです。薄型で違和感が少ないオーダーメイドの極小矯正装置「クリッピーL」や「STbブラケット」などを歯の裏側から取り付けます。

矯正費用は高額になってしまいますが、目立つ上の歯だけをリンガルブラケットにするハーフリンガルシステムを選択すれば、コストを抑えることも可能です。ただ、リンガルは噛み合わせによっては不可能な場合があり、矯正期間も表の矯正より期間がかかることが多いです。

・リンガルブラケットの費用:100万円程度から

・ハーフリンガルシステムの費用:70万円程度から

デイモンシステム

痛みを伴う矯正に耐えられないという子供におすすめなのが、デイモンシステムです。これまでのようにブラケットをワイヤーで固定せず口に挟み込むだけという画期的な方法です。

従来よりも歯をスムーズに動かすことができるため、約20%治療期間を短縮できるそうです。ブラケットも透明なので目立ちませんが、それでいてコストパフォーマンスにも優れています。

デイモンシステムの費用:80万円程度から

マウスピース

本格的な矯正治療ほどではないにせよ、前歯の歯並びを治したいという時におすすめです。透明なマウスピースを口に装着するだけなので、周りに知られることもあまりありません。取り外し自由なので、スポーツをしている子供でも不便なく使うことができるでしょう。費用も矯正の中では手を出しやすい金額です。

・マウスピースの費用 :40~60万円程度

チンキャップ

チンキャップとは、受け口などの治療につけるヘッドギアのような装置です。小学校低学年くらいを対象にした治療方法で、下顎の骨を後方に移動させるために、夜間の就寝中を中心に一日に10時間装着すると効果があるといわれています。費用は安いですが、他の装置と併用されることがほとんどです。

・チンキャップの費用 :8~12万円程度

4.子供の矯正における注意点

子供に矯正治療を受けさせる際には、注意点も把握しておきましょう。

虫歯などの口腔内トラブル

子供の歯の矯正中は装置に食べカスが残りやすいため、虫歯や歯周病などの口腔内トラブルを起こしがちです。歯科でブラッシング指導を受けた上で、毎日正しい歯磨きを心がけましょう。

治療開始直後の痛み

装置の装着をスタートしてしばらくは、どうしても痛みを感じます。場合によっては1日から2日間、強い痛みがおさまらないことも多々あります。ただ、いずれにせよ数日間でおさまるのであまり心配することはありません。もし1カ月以上痛むのであれば、必ず歯科に相談してください。

調整は歯医者さんに任せる

矯正装置は装着しているうちに曲がってきたり折れてしまったりすることもあります。やわらかな金属でできているワイヤー等は子供でも治せるように感じますが、自己流の修理は絶対にNGです。必ず専門医に調整してもらいましょう。

食べものに配慮する

矯正中は子供のおやつにも気を配りましょう。キャラメルやガムなどの矯正装置に貼り付きやすいものはやめておいた方が無難です。煎餅やクラッシュした氷などをガリガリと噛んでいると装置部分が傷ついてしまうこともあるので、食べ物には十分配慮しましょう。

5.まとめ

以上のように、矯正にはさまざまな方法がありますし、注意すべきことも盛りだくさんです。ただし、乳歯には霊長空隙親と呼ばれる隙間がもともとあり、多少の歯並びの悪さは成長とともに直っていくものです。だからこそ、親御さんが最低限の知識を身に付け、正しく子供を見守ってあげなくてはなりません。治療開始前に歯科でしっかりと説明を受け、治療中の疑問は何でも相談できるような歯科を選択すると良いでしょう。

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監修医 飯田尚良先生

飯田歯科医院

院長

【経歴】
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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