日本人に多い口蓋裂、赤ちゃんが診断されたらどうすればいい?

口蓋裂

日本人に多い口蓋裂、赤ちゃんが診断されたらどうすればいい?

妊娠中のお母さんは、赤ちゃんの誕生を待つよろこびだけでなく、赤ちゃんの将来や今後の生活について不安に思うこともあるのではないでしょうか。もしも、生まれてくる赤ちゃんが先天性の病気を持っていたら、と考えてしまうこともあるかもしれません。しかし、しっかりとした知識があれば、そうした心の負担を減らせるはずです。日本人に多いと言われている先天性異常のひとつに「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)」があります。現在、約500人に1人の割合で発症しています。今回は、口唇口蓋裂の一種である「口蓋裂(こうがいれつ)」と診断されたときに、親御さんが必要とする基本的な情報をまとめました。口蓋裂の原因や診断方法、そのほか口蓋裂の基礎知識など、ぜひ参考にしてください。

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■目次
1.口蓋裂(こうがいれつ)と診断されたらどうすれば良い?
2.口蓋裂の原因や診断方法にはどんなものがある?
3.そもそも口蓋裂とは?基礎知識を備えておこう
4.まとめ

口蓋裂(こうがいれつ)と診断されたらどうすれば良い?

口蓋(こうがい)とは、「鼻の空間(鼻腔/びくう)」と「口の空間(口腔/こうくう)」を隔(へだ)てる壁で、口の中の天井部分のことです。

口蓋は、軟口蓋(なんこうがい=口の天井の奥にある柔らかい部分)と、硬口蓋(こうこうがい=軟口蓋よりも手前の硬い部分)に分かれます。
口蓋に裂け目が生じている病気が「口蓋裂(こうがいれつ)」です。

赤ちゃんに「口蓋裂(こうがいれつ)」の疑いがあると診断されたら、どうすれば良いのでしょうか。

哺乳(ほにゅう)について

哺乳は、口蓋裂の赤ちゃんと親御さんが最初にぶつかる問題と言われています。
口蓋裂の治療は手術になりますが、その手術をおこなえるのは一般的に1~2歳頃になります。

問題となるのは、それまでの期間、十分に哺乳できない赤ちゃんがいるためです。

口蓋裂であってもスムーズに哺乳できる赤ちゃんもいれば、唇や上顎(じょうがく=上側の顎)に裂け目があるため空気が漏れ、十分に哺乳できない赤ちゃんもいます。
また、スムーズに哺乳できても、吸い込む力が弱く一度に飲める量が少ないため、十分な量を摂取する前に疲れてしまうこともあります。

まずは母乳を直接飲ませてみて、うまく哺乳できないといった場合は、口蓋裂の赤ちゃん用に販売されている人工の乳首や哺乳びんを使うことを検討しましょう。
これらを利用することで、哺乳できるようになる赤ちゃんもいます。
しかし、器具を粘膜に押し当てて哺乳すると、潰瘍(かいよう=組織が傷つけられた状態)が発生することがあるため、注意して見てあげることが大切です。

日本産婦人科医会HPに掲載されている「口唇・口蓋裂のトータルケア」(※)では、上記の哺乳用品と「ホッツ床」を併用することを推奨しています。
ホッツ床とは、赤ちゃんの口にはめて使う、プラスチックや樹脂のプレートです。
ホッツ床を併用することで、赤ちゃんがしっかり哺乳できるようになります。
出産を担当した産婦人科で、哺乳用品の紹介をしてもらえる場合が多いようです。

※参考サイト:日本産婦人科医会「口唇・口蓋裂のトータルケア」

哺乳

治療を始める適切なタイミング

口蓋裂を「できるだけ早く手術してあげたい」と思う気持ちはごく自然のことです。
しかし、あまり早い時期に手術してしまうと、顎の発達に影響を与えるおそれがあるため、次に挙げるタイミングで手術をおこなうのが一般的です。

口蓋形成術(こうがいけいせいじゅつ)

口蓋形成術とは、口の中の天井部分の裂け目をふさぐ手術です。
1~1歳半(生後12~18ヶ月頃)の、言葉を覚え始める時期におこなうのが一般的です。
この時期におこなうことによって、正しい発音の習得が期待できます。

近年では、手術時期を早められる方法も確立され始めているようです(※)。
口蓋裂によってできた溝を狭くするための矯正をおこない、手術範囲を小さくすることで一般的な時期より早めの手術が可能とされています。

※参考サイト:日本形成外科学会 口蓋裂とは

顎裂部骨移植術(がくれつぶこついしょくじゅつ)

口蓋裂では、歯の根がはまっている顎の骨が欠損しているケース(顎裂=がくれつ)が多く見られます。
この場合は、乳歯から永久歯に生え替わる時期に「顎裂部骨移植術」と呼ばれる手術をおこないます。
顎の骨の欠損部分に別の部位の骨を移植し、歯がきちんと生えてくるための準備をすることが手術の目的です。

歯が生える準備

手術後の訓練や治療も大切

一般的には、術後の訓練や治療は、手術をおこなった医療機関で継続して取り組みます。
いったん術後の治療が終わったあとに気になることが出てきた場合は、形成外科のある総合病院や口蓋裂治療の実績がある歯科口腔外科に相談しましょう。

特に、発音の変化は長期的に見守る必要があります。
発音障害は口蓋裂が原因ではない場合もあるため、対処法については医師の判断をあおぐことが大切です。
悩みや気がかりがあり判断に迷う場合は、近くの歯科口腔外科に相談することもおすすめします。

発音の訓練

手術のあとに必要なのが言語治療です。
正しい発音ができるように治療・訓練をおこないます。
耳鼻いんこう科またはリハビリテーション科といった診療科の先生や、言語聴覚士などが協力しておこなうのが一般的です。

中には手術のあと、傷口の閉じ方が十分でない赤ちゃんも見られます。
傷口の閉じ方が不十分なことで、鼻にかかったような声になったり、食べものが口から鼻へ流入したりするリスクが高まります。

こういった場合、訓練だけで発音を改善するのが難しいことがあります。
そのため、子どもの状態に合わせて歯科医師が発音補助装置を作成し、より発音しやすい状態に近づけることもあります。

反対咬合(はんたいこうごう)の矯正治療

口蓋裂の赤ちゃんはもともと上顎の発育が不十分なことが多いうえ、手術による傷あとも顎の成長に影響することが多くあります。
結果として、下顎の前歯が上顎の前歯より前に出てしまう反対咬合が、高い頻度で生じるとされています。
あるいは、歯の芽がないために歯が生えてこなかったり、歯並びや噛み合わせが悪くなったりするようです。
そのため、歯並びや咬み合わせを改善するための矯正治療も欠かせません。

多くの場合、矯正歯科のある歯医者さんや総合病院で、矯正治療を受けます。
そのほか、喉の奥の空間が食べものや飲みもので汚れ、扁桃炎(へんとうえん)や中耳炎(ちゅうじえん)を引き起こすこともあるため、耳鼻いんこう科によるケアも必要です。

歯列矯正

何科にかかれば良い?

赤ちゃんを出産した産婦人科で、適切な医療機関を紹介されることが多いようです。
そのため、心配事がある場合は主治医や連携している医師に相談するようにしましょう。

親御さんに気がかりがあり別の医療機関の受診を希望する場合は、まずは小児科医の先生に診てもらうことをおすすめします。
口蓋裂の治療は、小児歯科や矯正歯科、口腔外科のほか、形成外科、耳鼻いんこう科、小児科などさまざまな診療科の先生や専門家が関わってきます。

小児歯科の先生に他の診療科を紹介された場合は、並行して受診するようにしましょう。

口蓋裂の原因や診断方法にはどんなものがある?

口蓋裂が生じる原因にはどのようなものがあるのでしょうか?また、どんな診断で分かることが多いのでしょうか?
続いては口蓋裂の原因や診断方法について解説します。

口蓋裂の原因とは?

口蓋裂の原因は特定できないケースが多く、実に70%(※)は原因不明とされています。
口蓋裂を招くと考えられている要因は、次のようにさまざまです。

※参考サイト:県立広島病院 口唇裂・口蓋裂の治療について

  • 妊娠初期(顔や口蓋がつくられる2~3か月頃)に赤ちゃんに異常な力が加わる
  • お母さんの精神的なストレスや栄養障害
  • 副腎皮質ステロイド薬や鎮痛剤といった薬の使用
  • 風疹(ふうしん)にかかる
  • 放射線照射を受ける

上記のほかにも遺伝、高齢出産、喫煙といったさまざまな要因が考えられています。

これらが直接的に口蓋裂の原因になるというよりも、いくつかの要因が絡まり合うことで口蓋裂が発症するという考え方が一般的なようです。

※原因については、日本口腔外科学会の記事を参考に、わかりやすくまとめています。

妊婦のストレス

口蓋裂の診断方法は?

妊娠中の赤ちゃんが口蓋裂であると診断される主なケースは、2通り考えられます。

  • 妊婦健診の超音波検査で偶然発見される場合
  • 親御さんが超音波検査を希望して発見される場合

超音波検査に用いられる機器の性能は大きく向上していますが、生まれてくるまで口蓋裂を発見できないことも少なくありません。

また、外からは口蓋に裂け目がないように見えても、「粘膜下口蓋裂(ねんまくかこうがいれつ)」といって、粘膜の下の筋肉に断裂が起こっているケースもあります。

※診断方法については、日本産婦人科医会の記事を参考に、わかりやすくまとめています。

そもそも口蓋裂とは?基礎知識を備えておこう

口蓋は、赤ちゃんがお母さんのお腹の中で成長する過程で徐々につくられます。
簡単に言うと、左右から伸びている突起がピタッとつくこと(癒合=ゆごう)で、アーチ型の口蓋が形成されます。

しかし、何らかの原因で正常に癒合しない部分があると、裂け目が生じます。
その裂け目が残ったまま成長することで、本来であれば壁で隔てられているはずの鼻腔と口腔がつながった状態になります。
これが「口蓋裂」です。

口蓋裂は、裂け目の残り方によって

  • 口蓋全体が裂けている
  • 軟口蓋(なんこうがい=喉の近くの柔らかい部分)だけに裂け目がある
  • 見た目にはわかりづらいが粘膜の下の筋肉が裂けている

など、さまざまなケースがあります。

口蓋裂の主な症状としては

  • 哺乳や摂食に関わる障害
  • 見た目に関わる障害
  • 正しい発音に関わる障害

などが挙げられます。

手足、耳、心臓などの形態異常を合併することもあるようです。

新生児

まとめ

口蓋裂や口唇口蓋裂といった先天性異常は、約500人に1人(※1)の割合で発症すると言われています。

現在、口唇裂の治療は大きく進歩し、傷あともほとんど分からないくらいに治療することができます。
また、適切なタイミングに治療を受けることで、日常生活における会話や食事といったことの将来的なリスクはほぼ解消できるとされています。

診断結果を聞いた瞬間は、ショックを受けてしまう親御さんも多いようです。
日本産婦人科医会では、親御さんのケアにも力をいれるべきとしています(※2)。
不安なことや心配なことがある場合は医師に相談し、適切なアドバイスやカウンセリングを受けましょう。

また、親御さんが口蓋裂に対する適切な知識を持つことも、不安を少なくする手立ての一つとなり得ます。
赤ちゃんの状態には個人差があるため、より詳しいことは主治医に確認することをおすすめします。

※参考サイト:日本口腔外科学会 口唇裂口蓋裂などの先天性異常

※2参考サイト:日本産婦人科医会 口唇・口蓋裂

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監修医 高橋貫之先生

本町通りデンタルクリニック

住所
大阪府大阪市中央区本町2-6-5