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歯並びに対する欧米との意識の違いは?
欧米人から見ると、日本人は歯並びが悪いというイメージがあるようです。一方、欧米人が気にかけるほどには、日本人は歯並びの悪さを気にしていないという部分もあるでしょう。どうしてこのような差があるのか、欧米人との文化的な違いから探ってみましょう。
欧米は歯を見せる文化
欧米人は、明確な自己主張やはっきりとした意思表示が求められる文化です。それは、表情豊かなコミュニケーションにも現れますし、しっかりと歯を見せたスマイルは、社会的な信頼関係を円滑に築くための意思表示として、とても大切なものです。
一方、日本人の場合、はっきりとした自己主張や意思表示は、社会生活を営む上で、時に出過ぎていると思われ、マイナスに働くこともあります。
特に日本人の女性の場合、大っぴらに歯を見せるようなスマイルを控え、逆に口元を隠すといった仕草にも現れています。どちらが良い悪いという話ではなく、文化的な違いなのです。
子供のうちから早期に改善
欧米社会では、歯を大きく見せたスマイルができることが、円滑に社会生活を営む上で、とても大切なこととなります。従って、子供のうちから、歯並びを早期に改善しておきたいという、親の意識も高くなります。特にヨーロッパでは、子供の矯正治療を健康保険でカバーしている国が珍しくありません。
身だしなみやエチケットの一つ
欧米人にとっての歯並びは、社会生活を送る上で、もはや身だしなみやエチケットの一つとして考えられています。歯並びが悪く、歯を大きく見せられないことは、人とコミュニケーションするエチケットとして、とても望ましくないものなのです。
従って、歯並びだけでなく、ホワイトニングに対する意識も、非常に高いものとなっています。
文化の違いだけじゃない!日本人の歯並びが悪くなる原因
欧米人と比較して、日本人は歯並びが悪いのは、きれいな歯並びを求める意識の違いとするのは、ちょっと不十分です。実は、顎の骨格の違いから、日本人はもともと歯並びが悪くなりやすいものなのです。
もともと歯のアーチが狭い日本人
歯並びが悪くなる大きな原因として上げられるのは、顎のスペースが狭く、28本の永久歯(親知らずを含めると32本)がきれいに並ぶ余裕がないことです。欧米人と比べると、歯のアーチ(弓上に並ぶカーブ)が横に狭く、特に前歯に十分なスペースがないため、前歯がデコボコになったり、前歯が突出しやすくなったりします。
欧米人の場合、顎が大きくアーチが横に広いため、歯が一列に並びやすい骨格になっています。後から親知らずが生えてきても、抜歯する必要が少なく、そのままきれいに並ぶことも珍しくありません。
顎の発達を促さないと、よりアーチが狭くなる
日本人はもともと歯の生えるスペースが小さい上に、子供時代に十分な顎の成長が促されない場合、よりその影響が大きくなります。柔らかいものが中心の食生活や舌の悪い癖によっても、顎の成長が不十分になりがちです。
アーチが狭くなり、永久歯が横一列に並ぶことができないので、歯がデコボコ(叢生)になりがちです。一方、もともと顎のアーチが大きい欧米人では、叢生は起こりにくい不正咬合となっています。
欧米ではマウスピース矯正が主流
欧米では、マウスピース矯正が主流となっていますが、日本ではブラケット矯正(ワイヤーを歯に固定する矯正法)が一般的です。これは、欧米の歯科矯正技術が進んでいるというわけではなく、もともと、大きく歯列が前後するような乱れが少ないので、マウスピースでも十分に矯正できる症例が多いからだと言えます。
日本人特有の不正咬合について
顎が小さくアーチが狭い日本人は、日本人特有の不正咬合(歯並びや噛み合わせが悪い状態)につながってきます。ここでは、その代表的な例について、ご紹介しましょう。
出っ歯(上顎前突)
欧米人から見ると、昔から日本人はメガネで出っ歯というイメージがあるでしょう。メガネはともかく、歯並びの印象に関しては、あながち間違ってはいません。前述した通り、日本人は上顎のアーチが狭く、前歯が横一列に並ぶスペースがないので、前歯が前方に突出しやすいのです。
乱杭歯や八重歯(叢生)
乱杭歯や八重歯も、顎のスペースが狭いことが、その大きな原因となっています。歯が横一列に並ぶ空間がないので、後から生えてきた永久歯が捻れてしまったり、重なってしまったり、一部が大きく突出してしまったりという歯並びになりやすいのです。
受け口(下顎前突、反対咬合)
受け口とは、上の歯よりも下の歯が前に出る形で噛み合う不正咬合で、下顎前突あるいは反対咬合とも言われています。こうした不正咬合も、欧米での発生率は少ないものです。これも、上顎のアーチが狭いことで、下の歯が収まらないことが、1つの大きな原因になっています。
前歯が閉まらない(開咬)
前歯は通常、上の歯が下の歯を2ミリ程度覆うように噛み合わさるのが理想です。前歯の噛み込みが浅い、もしくは前歯がまったく接触しない不正咬合を開咬といいます。開咬も顎のアーチが狭いことがその一因です。アーチが狭く縦長で、奥歯だけが噛み合い、前歯が咬み合わさることができないのです。
矯正治療の保険制度の違い
1章で、日本人の歯並びが悪いのは、文化的な違いがあることをお伝えしましたが、各国の保険制度を見てみると、子供のうちの早期に治したいという意識が、日本だけ低いというわけでもないかもしれません。というのも、日本の場合、子供でも矯正治療には基本的に保険が適用されず、高額な治療費がかかるからです。
また、矯正治療の進歩によって、大人になってからでも十分な治療が可能になったという側面もあるでしょう。ここでは、海外の保険制度について、ご紹介しましょう。
アメリカ
アメリカでは、2014年以降、健康保険の加入が義務化され、国が管理している医療保険であるメディケアとメディケイド、会社の医療保険、民間の医療保険と、大きく4種類あります。
メディケアは主に高齢者や障害者を対象としており、歯科治療をカバーしていないものですが、メディケイドは子供の矯正において、口腔機能の観点から治療の必要が認められるものには、保険が適用されます。また、18歳以下の子供や大人の矯正治療などに対応した、さまざまな民間の医療保険が存在しています。
スウェーデン
世界の歯科先進国の1つであるスウェーデンでは、公営と民間の医療機関があり、公営の医療機関では、基本的に19歳までの矯正治療が無料で受けられるようになっています。不正咬合は保険適用に該当する疾病と考えられているからです、ちなみに、公営の診療所では、19歳以下の虫歯の治療なども無料となっています。
フランス
フランスでは、日本と同様、治療費の7割を国民健康保険がカバーし、残りの3割が自己負担となります。ただし、国民健康保険では支給の上限が決められているので、さらに任意の共済保険に加入して、自己負担分をカバーする形が一般的になっています。
16歳までは、3年間治療が継続することを前提として、矯正治療にも保険が適用されるので、若いうちに矯正する人が多いのです。
ドイツ
ドイツでは、国の健康保険とプライベートで加入する保険の2種類があります。定められた所得以下の人は国の健康保険の加入が義務付けられており、それ以上の所得の場合には、2種類のどちらかを選択できます。
どちらも、一般的な疾病に関しては保険でカバーでき、その都度の自己負担は無料となっています。矯正治療においては、18歳未満であれば、自己負担無料で受けることができます。
まとめ
日本人は世界的に見て、歯並びが良くないイメージがあるのは、きれいな歯並びを社会的なエチケットとして考えるような文化ではないことが上げられます。
しかし、もともと顎の骨格上、日本人は歯並びが悪くなりやすく、欧米人にはあまり見られないような不正咬合が多いものです。その上、子供の矯正でも健康保険ではカバーできないという、制度上の違いも大きいといえます。
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