いりべ歯科医院

通院していた歯科医院の先生がきっかけですね。この先生がいなかったら歯医者になっていませんでした。「歯医者になろう」なんて考えるどころか、高校卒業したらすぐに働き始めたので。でも、働いているうちに、やはり勉強は必要だなと気づいて予備校に入って、先生の影響もあって歯学部に進みました。

国家試験には受かったものの、同級生は大学院に進んだり歯科医院に就職したりする中で、実家が歯科医院でもない僕は就職先探しをしていたのです。
お世話になった先生に合格の報告をしたら、「うちに来い」と言われました。歯学部に進んだのも先生がいたからですし、「じゃあ行くか」と行ったら、白衣のサイズを聞かれました。右も左もわかっていない僕を雇ってくれたんです。その時はもう本当にびっくりしましたね。

でも最初の1年は、レントゲンを撮って、先生の治療を見学するだけ。同級生たちはどんどん抜歯や色々な治療にも挑戦して、「上手くなっているのに」と歯がゆく思っているところに、今度は1年間のインプラント講習会へ行けと言われました。僕は当時、大学時代の学費を返済しているところでした。給料だけでは足りなくて、実はアルバイトもしていました。だから、とてもじゃないけど講習会の費用は払えない。そのときはそれで終わったのですが、講習会当日になったら「今日は講習会の日だ、早く行け」と。お金を払ってないのに行けないと思ったら、先生が講習会費も交通費も、全部負担していてくれたんです。

講習が終わって、ようやく治療にも携われるようになったんですが、そのときレントゲンを撮らされ続けた理由がわかりました。歯を削ったらその後どうなるか、こういう症例が10年後どうなっているか、その流れを先生は僕に見せたかったんだろうと。何も言わないし、何も教えてくれないけど、言わずに教えようと決めていたんだろうと、先生の凄さがどんどん分かっていきました。

僕が歯科医師になったのは、先生のおかげですね。

「歯科医師である前に人間であること。」それが大事だと考えています。歯科医師であるという前に、僕は一人の人、そして患者さんも一人の人だと思っています。だから、「歯科医師と患者さま」という関係ではなく、僕という人間が、患者さんという一人の人間と付き合うために何が必要なのかを考えるんです。

たとえば、歯の神経を残すか、残さないかという選択があります。神経を残したらアイスクリームがもう食べられないかもしれない、神経を取ればアイスクリームは食べられる、でも25年後その歯はなくなっているかもしれない、同じ症状でも、患者さんの年齢によっても治療法は変わってきます。

75歳の患者さんの25年後は90歳、神経を取ってもいいでしょう。でも、20歳の子だったら25年後は45歳ですよね。患者さんの年齢に応じた治療方法の選択が必要になるんです。

そのことを患者さんが理解してくれて、自分自身で選択できるように、しっかりご説明をするのが僕の役目です。歯の治療は人生の選択ですから、「とりあえず」という治療はないと考えています。

生きていくことは食べることです。食べないことには人間は生きていけない。そして、「食べられる」というのは楽しいことです。だから「食べられる」という状況、環境を整えていくのは大切です。

歯の治療や、メンテナンスは生きていく環境を整えていくことでもあるんです。だから「治療しない、メンテナンスしない」というのは生きるための環境づくりを自分で放棄するようなものです。今すぐに影響はなくても、5年後、10年後となったら、健康に影響してきます。

でも、僕自身そうでしたけど、20歳ぐらいのときに10年先のビジョンなんて分からないですよね。僕もそれはわかります。だから、患者さんが選択して決断できるように、僕はやり方をしっかりご説明しています。

人見知りな患者さんもいらっしゃいますし、喋りたくないこともあると思います。歯のことでわからないことだってたくさんあるでしょう。でも、痛かったら「痛い」と言っていいし、無理だと思ったら「無理」と言っていいんです。患者さん自身の意志だけは伝えてほしいし、患者さんの本音を知りたいと思います。

でも、人の本音って、その時々で変わりますよね。今はそう言ってるけど、前はこう言ったよねということはよくあります。でも、それはその時は「そう言った」というだけであって、今日も同じなのかといったら違いますよね。

臨機応変にお付き合いしていきたいなと思います。院長もスタッフも、みんな笑顔で患者さんをお待ちしていますので、ぜひ一度ご来院ください。