こばやし歯科クリニック

当院に通ってくださっていたある女性の患者さまは、85歳を超えておられました。その患者さまからある日、「昔入れたセラミックの歯が古くなっているから、全部を新しいものに入れ替えてほしい」というご要望があったのです。
全てを入れ替えると、費用も数百万ほどかかることになるため、保険診療の歯を入れることをご提案しました。ところが、ご本人は「全てをいい素材で補綴してほしい」とおっしゃるのです。ご年配であることを考えると、そこまでの費用をかける必要はないのではと申し上げたところ、この患者さまはこのようにおっしゃいました。

「もうすぐ死を迎え、棺おけに入る身としては、最期にみとられるとき、きれいな歯でいたい。親戚や友人に見せる死に化粧のひとつとして、歯をきれいにしようと思っているので、費用は心配しないで」と。
結果、全ての補綴物を新しくセラミックにし、大変喜んでいただくことができました。最期の瞬間に、周囲の方に「きれいなお顔で」「きれいな歯で」と言われつつ、旅立たれたことと思っています。

カウンセリングに際して私が重視しているのは、患者さまの目線にあった言葉を選び、わかりやすいご説明を行うことです。このためにも、医療の専門用語を用いず、各ユニットに備え付けたコンピューターディスプレイで説明動画をご覧いただいたり、模型を用いるなど、視覚に訴えるご説明に努めております。

さらに、患者さまがうなずいておられたとしても、実際に理解しておられるケースは多くないとの認識のもと、重ねてご説明を行います。歯科医師という存在への遠慮や、患者さまの控えめな性格を理解せず、わかっていただいているつもりになるのは、歯科医師の傲慢ともいえます。
私どもは、本当の意味で理解し、納得していただけるまで、何度でもご説明を行います。納得できないこと、不安に思うこと、疑問などはぜひお尋ねください。

今現在、院内で行える治療に関しては、小さなお子さまからご年配の方までのご要望にお応えできる体制が整っています。今後はさらに、当院まで通院することが難しくなった患者さまに対応するため、訪問診療に力を入れていきたいと考えております。

日本は今、高齢化社会への道を歩んでいます。患者さまが歳を重ね、お身体の不調を理由に「しばらく通院できない」といったご連絡があった場合、歯科医院や歯科医師がじっと次のご来院を待てばよい時代ではありません。通院したくても通院できない、お口に問題がありつつも治療を受けられない患者さまのお声に耳を傾け、自分たちが動き出す必要があるのです。

当院の位置する北区上中里は、ご年配の患者さまが多い地域でもあります。私どもは今、訪問診療の準備を進めております。今後さらにさまざまなご要望にお応えするための体制を整えてまいりますので、ご期待ください。

ここ北区上中里は、人と人の距離感が近い土地柄にあります。この地に歯科医院を構えたのは、先輩の歯科医師の勧めがあったからですが、開院して以来十数年をへて、この地で開院できたことを大変喜んでおります。

この地域の皆さまと密に関わりながら、お口の健康維持に貢献できる関係性を築いていきたい、「歯を保てるようにお任せしたい」と言っていただけるかかりつけの先生でありたいと考え、日々丁寧で優しい診療に取り組んでおりますので、どのようなささいなお困りごと、お悩みごとでも気兼ねなくご相談ください。