虫歯の神経を抜くって具体的にどんな治療?抜髄が必要になる症状を併せて解説


虫歯の神経を抜くって具体的にどんな治療?抜髄が必要になる症状を併せて解説

重度の虫歯を治療するとき、「虫歯の神経を抜く」という表現が出てきます。しかし、「神経を抜く治療」で具体的に何をしているか、ご存じでしょうか?
この記事では、「神経を抜く歯科治療」を理解していただくために、「神経を抜くとは?」「どんなときに神経を抜く?」「どのような手順で処置をする?」などの基礎知識を解説します。

◆目次
1.「虫歯の神経を抜く」とは具体的にどういう治療?
2.どんな状況だと神経を抜く必要がある?
3.神経を抜く処置はどのようにおこなう?
4.神経を抜く治療に関するQ&A
5.まとめ

1.「虫歯の神経を抜く」とは具体的にどういう治療?

一般的に「歯の神経」と呼ばれているのは、「歯髄(しずい)」という場所です。

これは、歯の内部にある「歯髄腔(しずいくう)」という場所にあります。
歯髄には、神経・血管などが含まれています。

歯の断面図

神経を抜く場合、まずは虫歯を削り、歯髄を露出させます。

歯髄が出てきたら、「ファイル」と呼ばれる器具で除去していきます。
ファイルは「針の先端がヤスリ状になった道具」です。
上下に動かす「ファイリング」という動作で、歯の中身を掻き出すことができます。

根管治療「ファイリング」の図解

歯は生きているので、内部には柔らかい組織があります。
柔らかい組織とは、「神経・血管など、歯を生かしておくための組織」のことです。
これが、一般に「歯の神経」と言われている「歯髄(しずい)」の正体です。

以上のことから、「虫歯の神経を抜く処置」は、「やむを得ず、歯を死なせる処置」ということになります。
神経を抜く処置のことを、正式名称で「抜髄(ばつずい)」と呼びます。

2.どんな状況だと神経を抜く必要がある?

なぜ、「歯を死なせる処置」が必要になるのでしょうか?

神経を抜く必要があるかどうかは、虫歯の進行度で判断します。
一般に「虫歯がどれくらい進んでいるか」は、「C1~C4」の4段階で示します。

虫歯の進行度の図解

C1:エナメル質う蝕(えなめるしつうしょく)

歯の表面にある、エナメル質が虫歯になった状態です。
エナメル質の厚さは「2.0~2.5mm」なので、表面だけの虫歯です。

痛みはありません。

C2:象牙質う蝕(ぞうげしつうしょく)

エナメル質を突破されて、象牙質が虫歯になった状態です。
冷たいもの・甘いものがしみることはありますが、何もしてないときは痛みません。

C3:歯髄の仮性露出(しずいのかせいろしゅつ)

象牙質も突破されて、虫歯菌が歯髄に達しています。

歯髄は炎症を起こし、「歯髄炎(しずいえん)」と呼ばれる状態になっています。
何もしていなくてもズキズキと痛むことがあり(※)、夜眠れないこともあります。

※なにもしなくても痛みを感じることを、自発痛と言います。

C4:残根(ざんこん)

歯髄が虫歯菌に殺されて、もう痛みは感じません。

歯の内部は虫歯菌の巣窟(そうくつ)になっていて、歯を救うのは困難な状態です。

2-1 神経を抜くのは、「C3」の虫歯

「C1~C2」なら神経を保存できますし、「C4」なら神経はすでに死んでいます。
したがって、神経を抜く治療が必要になるのは、「C3」の虫歯です。

C3の虫歯の図解

歯髄が虫歯菌に感染すると、「歯髄炎(しずいえん)」という炎症を起こします。

「C3」の虫歯が歯髄炎になると、もう健康な状態には戻りません。
歯髄を助ける方法はないのです。
この場合、「炎症を起こした歯髄を取り除いて、歯だけでも保存する」という治療方法を選ぶことになります。

2-2 虫歯以外の理由で神経を抜くこともある?

「虫歯が原因で神経を抜く場合」を解説してきました。
しかし、中には虫歯以外の理由で神経を抜くケースも存在します。

重度の知覚過敏(ちかくかびん)

冷たいもの・甘いものを食べたり、歯ブラシが接触したりしたときに痛みが走る症状を「知覚過敏(ちかくかびん)」と言います。
重度の知覚過敏で、ほかの治療で改善が見られなかった場合、神経を抜くことがあります。

歯の亀裂

歯が割れてしまい、神経の通っているところまで亀裂が入った場合は、神経を抜きます。
神経を取り除き、内部を無菌化する必要があるからです。

そのほか、歯牙移植(歯を他の場所に移植する手術)のときなども、神経を抜いて内部を無菌化しなくてはなりません。

3.神経を抜く処置はどのようにおこなう?

神経は「抜いて終わり」というものではありません。

神経を抜くときは、歯の内部をきれいに無菌化する処置が必要です。
「神経を抜いて、歯の内部をきれいにする」までの一連の治療を「根管治療(こんかんちりょう)」と呼びます。

ここでは、根管治療の手順を解説します。

3-1 歯を削り、神経を除去

虫歯を削り、神経を露出させます。
その後、「ファイル」を使って神経(歯髄)を取り除きます。

ここまでは、冒頭の第1章で解説しました。

3-2 根管内の神経を除去

歯の内部には「神経が入る部屋(歯髄腔:しずいくう)」があります。
歯髄腔は髄室(ずいしつ)と根管(こんかん)に分かれており、髄質の神経を取り除くのは難しくありません。

問題は、髄室から根元の方向に伸びている「根管」です。
根管は、神経・血管などが走る管です。
細く曲がりくねっている上、複雑に枝分かれしています。

しかし、根管内に通っている神経も、きちんと除去しなくてはいけません。

3-3 根管拡大

根管内の神経を取り除きながら、同時に「細く曲がりくねった複数の根管」を「太くまっすぐな1本の根管」にまとめていきます。
「ファイル」で根管の壁を削り、太くまっすぐな管に整えていくわけです。

これを「根管拡大」と言います。

根管拡大の図解

3-4 根管充填(こんかんじゅうてん)

根管を拡大したら、内部を洗浄し、最後に薬を詰めていきます。
歯の内部を無菌化して、再感染を防ぐためです。

無菌状態を維持するために詰める薬剤を「ガッタパーチャポイント」と言います(※)。
また、薬剤を詰めこむ処置を「根管充填(こんかんじゅうてん)」と呼びます。

※自由診療の場合、「MTAセメント」という、殺菌作用、骨・歯を再生させる作用のある歯科用のセメントを使うこともあります。

4.神経を抜く治療に関するQ&A

最後に、神経を抜く抜髄処置にまつわるQ&Aを紹介しましょう。

4-1 神経のない歯は寿命が短いってホント?

神経が残っている歯と比較したとき、寿命が短くなりやすいのは本当です。

そもそも、痛みを感じなくなっているので、虫歯の再発に気づくことが難しくなります。
結果、手遅れになるまで気づかない場合もあり、抜歯しなければいけない恐れが高まります。
また、神経のない歯は割れやすくなるので、「歯根破折(しこんはせる)」(歯の根元が折れること)で抜歯に至る確率も上がります。

以上から、「歯を末永く残すには、なるべく神経を残せる段階で虫歯治療をしたほうが良い」と言えます。

神経を抜き弱くなった歯

4-2 神経を抜いた歯が変色するのはなぜ?

神経を失った歯を「失活歯(しっかつし)」と言います。
失活歯は、時間が経過すると黒っぽく変色することがあります。

歯髄がなければ、血液が循環しません。
すると、歯の象牙質に含まれるコラーゲンなどが変質し、黒っぽくなることがあります。
その他、歯の内部にあった血液が、象牙質の細かな穴に入りこみ、象牙質を変色させるケースもあります。

変色した失活歯を白くするためには、歯の内部から漂白する「インターナルブリーチ」、歯全体を白いかぶせ物で覆う「クラウン修復」などの方法があります。

4-3 神経を抜いたのに痛むのはなぜ?

根管治療は、ミクロの単位でおこなう治療です。
そのため、中には「神経の取り残し」があるケースも考えられます。
また、治療中、歯に何らかのダメージがあり、時間が経ってから痛みだす場合もあるでしょう。

◆根管の形状が複雑で、神経が取り切れていない
◆歯が割れていたり、ヒビが入ったりしている
◆根管治療中、歯に穴をあけてしまった

たとえば、以上のような理由で痛みが残ることがあります。
痛みに気づいたら、早めに歯科医院を受診して、痛みの相談をしてください。

5.まとめ

重度の虫歯になると、歯の神経を抜く治療が必要です。
神経のなくなった歯は将来的に抜歯に至る確率が上がります。
神経が保存できる「小さな虫歯」のうちに歯科治療をはじめましょう。

監修医本部悠一郎先生の画像

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