歯根に膿が溜まる病気?根尖性歯周炎や歯根嚢胞の基礎知識と症状、治療法を紹介

歯_膿

歯根に膿(うみ)が溜まると歯茎が腫れたり、噛むだけで痛みを生じたりします。さらに悪化すると、顎の骨を溶かしてしまうこともあります。この記事では、歯根に膿が溜まる病気や主な症状、治療法などを解説していきます。

■目次
1.歯根に膿が溜まる病気とは?なぜ膿が溜まるの?
2.歯根に膿が溜まったときにあらわれる主な症状
3.歯根に膿が溜まったときの治療法
4.歯根に膿を溜めないために大切なこと
5.まとめ

歯根に膿が溜まる病気とは?なぜ膿が溜まるの?

歯根(しこん)とは、歯茎より下に埋もれている歯の根っこ部分で、歯を支える歯槽骨(しそうこつ=顎の骨)までの範囲を指します。
その歯根には、無菌状態の神経管が通っています。
なぜその歯根に膿が溜まってしまうのでしょうか?

歯根に膿が溜まるということは、歯根に何らかの病気が生じ、炎症が起こっているということです。
炎症が起こると、白血球を主とした免疫細胞が、体内に入り込んだ細菌を排除しようとします。
このときに戦った白血球や細菌の残骸が、歯根の先に膿として溜まってしまうためです。

歯根に炎症を招く主な病気について見ていきましょう。

1-1.根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)

歯根の先端部分を「根尖(こんせん)」といいます。根尖性歯周炎とは、根尖とその周辺に炎症が起こる病気です。

根尖

一方、虫歯は、歯を表面から徐々に蝕(むしば)んでいきます。
初期の段階では痛みを感じることがほとんどないため、気づかないことも少なくありません。
しかし、治療をせずに放置していると、虫歯が歯の内側へ向かってどんどん広がっていきます。
やがて虫歯が歯髄(しずい=歯の神経部分)に達すると、強い痛みが生じます。

この時点で歯医者さんを受診し、虫歯を治療してもらう人は多くいます。
しかし、何らかの理由で歯医者さんに通えなかったり、治療を始めるのが手遅れになったりすると、歯の神経が死んでしまいます。

歯の神経が死んでしまうと、痛みを感じなくなります。
そのため、治ったと勘違いしてしまう、あるいは痛みがあったことを忘れてしまうといった理由で、さらに放置してしまう人も少なくありません。
注意したいのは、たとえ痛みを感じなくなっても、虫歯が治ったわけではないということです。

歯髄に広がった虫歯を治療せずに放置してしまうと、歯髄を超えて周辺組織にまで虫歯が広がっていきます。
虫歯が根尖や顎の骨、歯茎といった周辺組織に広がり、炎症を起こしている状態が「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」です。

根尖性歯周炎

虫歯以外に、外傷によって歯の神経が死んでしまった場合も、根尖性歯周炎になりやすいと言われています。
また、神経の治療が中断してしまったり治療の間隔が空きすぎてしまったりした場合も、根尖性歯周炎を引き起こしやすいようです。
あるいは、過去に歯の神経を取って歯根の治療をした人でも、何らかの原因で歯根が細菌に感染し、炎症を起こすことで根尖性歯周炎になるケースもあります。

このように、歯根に膿が溜まる根尖性歯周炎は、思っているよりも「良くある」口の中の病気なのです。

1-2.歯根嚢胞(しこんのうほう)

歯根嚢胞とは、歯根に嚢胞(のうほう=液状の内容物が入った袋状のもの)ができる病気です。

根尖性歯周炎が慢性化し、常に炎症を起こしている状態が続くと、患部に歯根肉芽腫(にくげしゅ)と呼ばれる腫瘤(しゅりゅう=炎症によって過剰に作られた繊維物質のかたまり、腫れ物)ができます。
根尖性歯周炎が進行する過程で歯根肉芽腫が混じって見られるようになるため、両者ができるタイミングに明確な区別はありません。

根尖性歯周炎と歯根肉芽腫がさらに進行することで、歯根嚢胞となります。
嚢胞には根尖性歯周炎による膿、炎症細胞(炎症を引き起こしたり悪化させたりする細胞の総称)、上皮細胞(じょうひさいぼう=歯根の内側を覆う組織の細胞)などのほか、赤血球、白血球といった物質が含まれていることがあります。

私たちの体は、根尖性歯周炎による炎症をこれ以上進行させまいとして、防御反応を起こします。
その結果、上皮(※)が膿を取り囲んでしまうことで、歯根嚢胞ができると考えられています。

※上皮(じょうひ)
体の表面や体内の器官を覆う細胞の層を上皮といいます。この記事でいう上皮は、「歯根の内側の表面を覆う細胞の層」を意味します。

歯根に膿が溜まったときにあらわれる主な症状

続いては、歯根に膿が溜まるとどのような症状があらわれるのか見ていきましょう。

2-1.根尖性歯周炎の症状

歯根に膿が溜まる根尖性歯周炎は、慢性と急性に分けられます。

慢性の場合は痛みといった自覚症状がほとんどなく、歯医者さんでレントゲン撮影をしてはじめて気づくというケースが少なくありません。
レントゲン撮影をすると、歯根の先に丸くて黒い影が確認できます。
黒い影は、骨が溶けてしまい、穴が開いていることを意味します。その穴には膿が溜まっています。

歯のレントゲン写真

一方、急性の場合は歯がムズムズと浮くような感覚や、噛んだときの強い痛み、自発痛(何もしなくても痛む)といった症状があらわれます。
慢性的な根尖性歯周炎をすでに発症している人でも、風邪や疲労の蓄積といった抵抗力が落ちたタイミングで、急性の症状が現れることがあります。

膿が増えると周辺の骨や歯茎を破壊し、歯茎に小さな穴を開けてしまうことがあります。
その穴から膿が出るようになると、口の中が酸っぱい味がしたり、口臭がひどくなったりします。
あるいは、穴が開かない場合、歯と歯茎の隙間から膿が出てくることもあります。

2-2.歯根嚢胞の症状

歯根嚢胞もやはり、初期の段階では痛みといった自覚症状が少なく、レントゲン撮影をしてはじめて気づくケースが多いようです。
しかし、治療をしないでいると炎症が続き、膿や上皮細胞といった液状の内容物が増えていき、嚢胞も徐々に大きくなっていきます。
そして、噛んだときに嚢胞が圧迫されたり、大きくなった嚢胞が周辺の神経を圧迫したりして痛みが出るようになります。

歯根嚢胞

また、放っておくと顎の骨や歯根が膿によって溶けてしまったり、歯の動揺(グラつき)を招いたりもします。
歯根嚢胞は下顎(かがく)よりも上顎(じょうがく)にできやすいとされ、その比率は4:6(※1)と言われています。

ここで注意したいのは、歯根嚢胞は上顎にできやすいという点です。
上顎と上顎洞(※2)は非常に近い距離にあるため、上顎にできた歯根嚢胞による炎症が、上顎洞にも広がってしまうことがあります。
その結果、急性副鼻腔炎(ふくびくうえん※3)や蓄膿症(ちくのうしょう※4)などの病気、頭痛といった症状を引き起こすことがあります。

※1参考:歯原性嚢胞

※2「鼻腔(びくう)」が鼻の穴であるのに対し、鼻腔の周りの骨の中に作られた左右4箇所ずつ(合計8箇所)の空洞を「副鼻腔(ふくびくう)」と言います。
副鼻腔のうち、上顎にもっとも近い空洞を、上顎洞(じょうがくどう)といいます。このように、上顎と副鼻腔の位置関係が近いため、上顎の炎症が副鼻腔に広がることも考えられます。

※3急性副鼻腔炎とは、ウイルスや細菌が副鼻腔に感染して引き起こされる病気です。鼻水や発熱、鼻づまりといった症状がみられます。

※4蓄膿症とは、膿が溜まることが原因となって引き起こされる病気です。別名、慢性副鼻腔炎とも言い、鼻図まりや鼻水、咳などの症状が3か月以上続きます。

歯根に膿が溜まったときの治療法

根尖性歯周炎や歯根嚢胞は自然治癒しません。

放置してしまうと炎症が広がり、顎の骨や歯根を溶かしてしまうこともあります。
しかし、自覚症状がないことも多く、気がついたときには嚢胞が大きくなっていたり、噛んだときの違和感や歯のグラつきなどを招いたりします。
この段階になっても治療を受けずにいると、嚢胞がさらに大きくなり、抜歯しなければならないこともあります。

自分の歯を守るためにも、そうなる前に治療を検討する必要があります。
根尖性歯周炎や歯根嚢胞にはいくつかの治療法があり、医師の判断の元、炎症の程度や歯の状態、嚢胞の大きさなどによって最適な方法を選択します。

具体的にどのような治療法があるのか、代表的なものをご紹介します。

3-1.根管治療(こんかんちりょう)

根管治療は、嚢胞がそこまで大きくなっていない場合におこなう治療法です。

歯の神経を取り、根管(神経や血管がある部分)をきれいに洗浄、消毒します。
歯の神経を取った部分が細菌に再感染しないように、根管に薬を詰め、被せものでしっかり塞ぎます。

根管治療

3-2.嚢胞摘出術(のうほうてきしゅつじゅつ)

嚢胞摘出術は、根管治療では治らない場合におこなう治療法です。歯茎を切開し顎の骨を削り、歯根嚢胞を摘出します。
摘出後は歯茎を縫い合わせます。

3-3.歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)

歯根端切除術は、根管の形状が複雑な場合、あるいは被せものが取れないといった場合におこなう治療法です。
歯茎を切開して顎の骨を削り、嚢胞を摘出するとともに、感染源となった歯根の先端部分を切除します。

3-4.抜歯

炎症が大きいといった理由で、上記いずれの治療法でも歯を残すことができないと医師が診断した場合は、抜歯することになります。

歯根に膿を溜めないために大切なこと

歯根に膿が溜まっても自覚症状がないことが多いため、気づかずに炎症を進行させてしまう人は少なくありません。

歯根に膿を溜めないために大切なことは、歯医者さんで定期検診を受けることです。
早い段階で発見し早期治療につなげられれば、治療にかかる費用や期間といった負担が少なくて済むだけでなく、自分の歯を残せる可能性も大きくなります。

まとめ

この記事では、歯根に膿が溜まる病気や主な症状、治療法について解説してきました。

特に慢性の根尖性歯周炎や歯根嚢胞は、痛みといった初期症状が少なく気づきにくいため、注意が必要です。
放置して歯根嚢胞ができてしまうと、顎の骨が溶けたり歯根が溶けたりして、自分の歯を残せなくなってしまうかもしれません。

しばらく定期検診に行っていない人や

・歯根の治療をしたことがある
・神経を取ったことがある
・治療を途中でやめてしまった
・外傷で神経が死んでしまった
・歯が割れている、ヒビが入っている

このような人はぜひ一度、歯医者さんで定期健診を受けることをおすすめします。

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