「歯がうずく」「ムズムズする」という違和感は、虫歯や歯周病によるものから、疲れやストレスによる歯ぎしりなど、原因はさまざまです。中には、「治療したはずの歯が痛い」「夜になると歯がうずく」「矯正治療を始めたら歯がうずく」などの症状を訴える声もあります。病気による歯のうずきは、自然に治ることはありません。歯がうずくのは、かなり危ない徴候と言える場合もあります。
ここでは大切な歯を失わないために、歯のうずく原因と、絶対にやってはいけない行為をお伝えしていきます。
1.歯がうずく原因と対処法
1-1虫歯
虫歯が進行し「歯髄」という歯の神経にまで達してしまうと、うずくような痛みを感じます。
歯の内部にある神経や血管が集まった歯髄での炎症が、神経を圧迫するからです。この炎症を「歯髄炎」といいます。
歯髄炎の状からさらに虫歯が重症化すると、歯髄の神経が死んでしまい、痛みを感じなくなります。
一見、症状が改善したかのように錯覚してしまいますが、虫歯が治ったわけではありません。
虫歯菌が「根管」と呼ばれる歯の根っこを伝わり、さらに深い部分にまで侵入すると、今度は歯根を支える骨が溶け、膿がたまっていきます。
歯の神経が死んでしまってからは自覚症状があまりないため、ある日いきなり腫れて強烈な傷みを覚えたり、歯茎や顔面の腫れを引き起こしたりします。
虫歯のときに引き起こされる「歯のうずき」は、虫歯が歯髄にまで達したサインと捉えることができます。
虫歯を治療した歯がうずく
治療した歯のうずきには、2つの理由が考えられます。
1つ目は、歯の神経が過敏になっているため、歯がうずくように感じられる場合です。
これは、虫歯治療を終えたばかりの歯に起こりやすい症状です。
この場合は数日で症状が治まるのが一般的です。まずは様子をみましょう。
2つ目は、過去に治療した歯に、詰め物や被せものがある場合です。
長い時間が経過することで、詰め物や被せものが劣化し、歯と人工物の隙間から虫歯菌が入り込んでいる恐れがあります。
人工物の経年劣化だけが原因ではなく、治療した際に虫歯部分を取り残しているケースもあります。
菌が入れば虫歯に進行します。詰め物や被せものの下でできた虫歯が、歯の神経にまで達してしまうこともあります。
夜になると歯がうずく
虫歯が進行し、歯の中心にある「歯髄」にまで炎症が広がってしまっていることが考えられます。
ひどくなると、歯髄の入っている小部屋である「歯髄腔(しずいこう)」に圧がかかり、神経が圧迫されます。
すると、夜間就眠時痛という、夜も眠れないほどの痛みを引き起こすことがあります。
神経まで達した虫歯の治療法
虫歯が進行した部分の神経を取り除き、歯の根っこ(管内)を殺菌してから、被せものでふたをする治療をおこないます。この方法を、根管治療と呼びます。
進行具合によっては神経を抜く、もしくは抜歯の必要性も出てきます。
1-2歯周病
歯周病は、
歯肉が炎症を起こす
↓
歯を支える骨が溶ける
↓
歯茎から血や膿が出て歯が抜ける
というように症状が悪化していきます。
このように進行していく段階で、歯がうずきを感じます。
歯周病は成人男性の8割がかかっている病気ですが、軽度のうちは自覚症状があまりありません。
歯がうずきを感じる頃には、歯がグラグラする、歯茎から出血するなど、重症化していることも多くあります。
毎日の歯磨き時に鏡で歯茎をチェックし、赤や紫に変色していたり、歯茎が下がっていたりしたら要注意です。健康な歯茎の色は、ピンク色をしています。
歯周病の治療法
歯や、歯茎の中にまで入り込んだ歯石の除去が治療の中心です。
重度の場合は歯茎を切開し、歯石を取り除きます。
現在では、歯周組織の再生技術も発展しています。
そのため、歯周組織の再生を促す治療が可能です。
1-3歯ぎしり
寝ている時は、意識がないので歯ぎしりの力加減ができません。
思いっきり食いしばることもあり、歯や周囲の組織に大きな負担をかけてしまいます。
そのせいで歯の根っこが割れ、歯のうずきや強い痛みが生じます。
歯の根っこが割れると、抜歯が避けられないことが多く、噛み合わせの悪さが歯ぎしりの原因の場合もあります。
歯ぎしりの治療法
自分に合ったマウスピースを製作し、就寝時にはめて歯を守ります。
市販のマウスピースだと口に合わずに悪化することもあるので、歯医者さんで作ってもらいましょう。
噛み合わせが歯ぎしりの原因の場合は、歯医者さんで処置を受ける必要があります。
1-4.その他の原因
矯正治療で歯がうずくことも
個人差はありますが、矯正装置を装着してから数日間は、歯のうずきを強く感じることがあります。
矯正装置が歯にゆっくりと力を加えることで、歯の周囲の組織に意図的に緩やかな炎症を起こさせているためです。
この処置は、歯の根っこを支える骨である「歯槽骨」をいったん壊し、再生させることが目的です。
安易に痛み止め(消炎鎮痛剤)を服用すると、治療の作用が薄れてしまいます。
矯正治療中に歯がうずいても薬は服用せず、かかりつけの歯医者さんに相談しましょう。
矯正装置を装着することによる痛みは、一週間程度で自然に治まっていくので、大きな心配はいりません。
親知らずがうずくことも
奥歯の辺りにある親知らずがうずくのは、周囲の歯が炎症を起こしているためです。
現代人は食生活の変化で顎が小さくなっているため、歯のスペースが足りず親知らずがまっすぐに生えてこない人が多くいます。
親知らずがまっすぐに生えてこないと、隣の歯を圧迫して傷つけるほか、歯磨きの際にきちんとブラシを当てられないために、虫歯になってしまいます。親知らずがきちんと磨けていないということは、隣の歯も磨けていないということです。自然と虫歯の範囲は広がっていきます。
親知らずの周りの炎症を放っておくことで、喉も炎症を起こす恐れがあります。
さらに広がると、発熱や倦怠感といった全身症状が現れることもあります。
2.自分で行う対処法
歯がうずくときに絶対にやってはいけない行為と、対処法を紹介します。
2-1指で触らない
歯がうずくからと言って、指で触ってはいけません。
炎症を起こしている状態なので傷つきやすく、指に付着した雑菌が傷口から入り込み、症状が悪化することがあります。
対処法
炎症の原因は歯に付着した細菌です。ですので、口腔内の細菌を減らすことで症状が緩和されます。
うがいや歯磨きで口腔内を清潔に保ち、歯と歯茎の間の歯垢(プラーク)を丁寧に磨きましょう。
炎症を起こしているときは、歯茎が出血しやすい状態になっています。
ブラッシングする際に、力を入れ過ぎないよう気をつけてください。
2-2血行を良くしない
血行が良くなると血液が循環し、歯の神経を圧迫するので、歯のうずきがより強くなってしまいます。
激しい運動や入浴は、体温が上がることで血行が良くなる原因です。避けた方がいいでしょう。
対処法
冷えたタオルや冷えピタなどを使って、患部の外側の頬に当てて冷やしてください。
入浴はシャワーだけにとどめておくのがいいでしょう。
2-3タバコやアルコールを避ける
気持ちを落ち着かせようと、タバコを吸う方がいます。
精神的にリラックスして痛みやうずきが和らぐと思われがちですが、タバコに含まれる有害物質が歯や歯茎に付着し炎症を悪化させます。
さらには、免疫機能を低下させてしまうため、口腔内の細菌の繁殖を助けることになります。
痛みをごまかすためにアルコールを摂取する方がいますが、血行が良くなるのでかえって歯のうずきや痛みが増すだけです。
対処法
タバコやアルコールなどの刺激物は摂取を控えましょう。
3.まとめ
歯のうずきは、放置すれば歯を失うことに繋がる場合も多くあります。
できるだけ早く原因をつきとめ、処置を行うことが大切です。
【あわせて読みたい】
監修医
遠藤 三樹夫先生
遠藤歯科クリニック 院長
経歴
1983年大阪大学歯学部 卒業
1983年大阪大学歯科口腔外科第一講座 入局
1985年大阪逓信病院(現 NTT西日本大阪病院)歯科 勤務
1988年遠藤歯科クリニック 開業
現在に至る
この記事は役にたちましたか?
- すごく
- いいね
- ふつう
- あまり
- ぜんぜん