前歯が抜歯になったら…?ブリッジで歯を入れるときの基礎知識

虫歯・歯周病などで歯を失った場合、「失われた歯を補う治療(補綴:ほてつ)」をしなくてはいけません。補綴(ほてつ)の方法としては、「ブリッジ」「入れ歯」「インプラント」の3種類が知られています。

こちらの記事では、前歯が欠損した場合の「ブリッジによる補綴(ほてつ)」を解説することにしました。もちろん、「入れ歯」「インプラント」との比較もおこない、「より良い補綴(ほてつ)方法を選ぶためのガイド」として機能するよう配慮しています。

1.前歯を失った…!ブリッジ・入れ歯・インプラントの比較

人間には、親知らずを含めて32本の歯が存在します。親知らずは抜歯することも多く、「失っても構わない歯」ですから、必要な歯の本数は28本と捉えてください。しかし、日本における平均残存歯数は、以下のようになっています。

◆45~54歳:26.4本
◆55~64歳:23.3本
◆65~74歳:19.2本
◆75歳以上:13.3本

この数値から、平均して40代で1~2本の歯を失う…という事実がわかります。以降、年を重ねるごとに本数が減っていき、70代には半分以上の歯がなくなるわけです。「歯を失うこと」は、決して他人事ではありません。実際、不運にして30代で1~2本の歯をなくす人もいます。
さて、もしも前歯を失ったら、どうしますか? 恐らく、多くの人は「奥歯を失うより、ずっと大問題」と感じることでしょう。一般の人は機能面の不具合を平気で放置する一方、外見的な問題には敏感です。前歯が抜けたままでは、笑うことはおろか、会話だってままなりません。
ほとんどの人は、「すぐに何らかの方法で補綴(ほてつ)しなければ…」と考えることでしょう。選択肢は、「ブリッジ」「入れ歯」「インプラント」の3つです。

1-1 ブリッジ

1本の歯を失ったり、連続する2本の歯を失ったりした場合に選択される方法です。仮にA-B-Cと連続する3本の歯のうち、Bが抜歯になったとします。このとき、AとCの歯を削り、A-B-Cの全体を覆うクラウン(かぶせ物)をかぶせれば、Bの部分は「まるで歯が存在するかのような状態」になるはずです。両隣の歯を土台にして、義歯を立てる手法…というわけです。

両隣の歯を削るので、左右の歯が「虫歯になったことのない健康な歯」であれば多少の抵抗があるかもしれません。また、2本の土台に3本分の圧力がかかるようになるので、土台となった歯の負担は増加します。
ただ、奥歯と比べて、前歯にかかる圧力は限定的です。奥歯に比べると、土台歯の寿命に対する悪影響は少ない…と考える歯科医師が多いようです。
一方、ブリッジには大きなメリットもあります。入れ歯のように外れないので、普通に歯磨きをしながらケアしていく…という部分です。若い人ほど入れ歯に抵抗感があるので、普通の歯と同じに使えることは大きな利点になります。また、しっかりと固定されるぶん、入れ歯より噛む力も強いです。

1-2 入れ歯

一部の歯を失った場合、「部分入れ歯で補綴(ほてつ)する」という選択肢があります。保険診療なら、金具(クラスプ)で周囲の歯に引っかけて固定する方式になります。周りの歯を削る必要はありませんが、噛むとき、周囲の歯に負担がかかる点はブリッジと同様です。
着脱式なので、取り外して洗うことができ、衛生管理は簡単です。きちんと入れ歯用の洗浄剤を使えば、衛生面の問題はまず起こりません。
しかしながら、「着脱できること」が必ずしもメリットにならないのも事実です。「歯磨きなら嫌じゃないけれど、取り外して洗うのは面倒」と感じる人もいます。
また、「前歯が外れること自体、心理的に耐えられない」という人もたくさんいるでしょう。感情の部分まで考慮すると、入れ歯にはいくつかの問題点が存在します。
また、前歯を補綴(ほてつ)するなら、外見的な問題も無視できません。保険診療の入れ歯を選択した場合、外見的なコンプレックスを抱える恐れもあるでしょう。入れ歯を固定する金具(クラスプ)が見えてしまうからです。
そのほか、完全に固定されているわけではないので「噛む力があまり強くない」など、機能面でもいくつかの問題をはらんでいます。

1-3 インプラント

近年、存在感を増している治療法としては、インプラントがあげられます。金属製の人工歯根(インプラント体)を埋めこんで、その上に義歯を立てる方法です。インプラントなら、天然の歯とほとんど変わらない見た目を手に入れられますし、周囲の歯に影響を与えることもありません。美容面・機能面ともに優秀な方法です。
ただ、インプラントは保険適用外になるので、自費でおこなう自由診療になります。インプラント体が「10万円~」、上に立てる義歯(上部構造)が「15万円~」といった費用相場になっており、インプラントを1本入れるのに「合計25万円~」とかなりの金額がかかってきます。
さらに、(ほかの治療でも同じことが言えますが)1回の治療で永続的に使える保証はありません。インプラントは人工物なので虫歯にはなりませんが、周囲の歯茎が歯周病のようになる恐れはあります。この症状をインプラント周囲炎と呼んでおり、インプラント脱落の原因になります。

2.ブリッジで前歯を補う!外見と費用のバランスはどうする…?

前歯1本を失ったケースの場合、第一選択になりやすいのはブリッジです。両隣の歯に負担がかかるのは確かですが、入れ歯も金具を引っかける歯に負担をかけます。また、前歯は奥歯ほど圧力がかかりません。きちんと口腔ケアをしていれば、土台の歯を長持ちさせることも可能でしょう。
また、「両隣を削る」という部分に不安を感じているなら、「ほとんど歯を削らないブリッジ」を選択することも可能です。この章では、「ブリッジで前歯を補綴(ほてつ)するときの選択肢」を提示したいと思います。

2-1 美容面をどうするか~義歯の素材を選ぶ!

前歯を補綴(ほてつ)する場合、「機能さえ優れていれば良い」という単純な話にはなりません。口を開ければ見える場所ですから、外見も重要です。とはいえ、前歯に関しては、保険診療でも銀歯にはなりませんから、あまり心配しなくても大丈夫です。
それでは、見た目に大きな影響を与える「義歯の素材」をチェックしてみましょう。

・硬質レジン前装冠(そうかん)~保険診療で費用を抑える!

保険内でブリッジを作製するなら、素材は「硬質レジン前装冠(そうかん)」になります。全体は金属(12%金銀パラジウム合金など)ですが、正面から見える部分には「硬質レジン(白色)」を盛ってあります。
裏側は金属ですが、少なくとも前から見るぶんには白く見えるのが、硬質レジン前装冠です。ただし、レジンは水分を吸って変色する性質があるので、だんだん黄色っぽくなるのは避けられません。また、耐久性にも問題があり、レジン部分が割れることがあります。

・メタルボンド~もっと自然な外見を求めるなら!

自由診療で構わないなら、より自然な見た目を追求することも可能です。内部は金属で、外側にセラミックを焼きつける「メタルボンドクラウン」は、より天然歯に近い白色が実現します。裏側の根本付近には金属部分がありますが、基本的に他人から見える位置ではありません。
また、レジンと違って変色しにくいので、長い期間、自然な白い歯を維持することが可能です。耐久性も高く、割れる確率はきわめて低いと考えられます。
自由診療なので費用はまちまちですが、「1本8万円~」くらいが相場です。ただ、ブリッジの場合は3本1セットになりますから、実際には「24万円~」とかなり高額になります。

・ジルコニア・オールセラミックス~天然歯と同じレベルの質感!

本物の歯と同じような質感を目指すなら、「ジルコニア・オールセラミックスクラウン」という選択肢があります。全体がセラミック製になっており、天然歯と同じように、ある程度の光を透過します。透明感があり、作り物とは思えない外見が実現します。
内側にジルコニア(人工ダイヤモンド)、外側にセラミックを使っているので、金属の部分はありません。金属アレルギーなどのリスクもありませんし、金属の影響で歯茎が変色することもありません。
ただ、価格は「1本12万円~」が相場になります。ブリッジは3本1セットなので、「36万円~」と経済的負担が大きくなります。
※ただし、お金をかけても自然な質感にしたい場合、インプラントがより優れます。

2-2 歯の負担をどうするか~補綴(ほてつ)方法を選ぶ

前述したとおり、一般的なブリッジは両隣の歯を削る必要があります。しかし、両隣が健康な歯だったら、あまり削るのは気が進まないのではありませんか?
原則、「削られる」「神経を抜かれる」など、手を加えられた歯は寿命が縮みます。何事もなく健康な歯をわざわざ削るのは、たしかに気が進まないでしょう。
こちらでは、「なるべく歯を削ることなく、ブリッジにする方法」を紹介したいと思います。入れ歯と違って、普通の歯と同じように使えるのがブリッジの強みです。周囲に歯にダメージを与えることなくブリッジにできるなら、「前歯の補綴(ほてつ)はブリッジが良い」と考える人が増えることでしょう。
※ただし、お金をかけても自然な質感にしたい場合、インプラントがより優れます。

・接着性ブリッジ~保険診療!周囲への影響を最小限に

まったく削らないわけではありませんが、「隣接する歯のエナメル質だけを削る方法」です。A-B-Cと連続する3本の歯があり、Bが欠損しているとします。
このとき、「A・C」の表面(エナメル質)を削り、「B」の義歯(から伸びている固定用の部位)を接着するわけです。接着することで、両隣を大きく削らず、ブリッジを実施します。
支台にする歯が「生活歯(神経が生きている歯)であること」「エナメル質が残っていること」など、いくつかの条件を満たしていれば、接着性ブリッジが可能です。
保険診療なので、多額の費用がかかることもありません。ただ、対応できる歯科医院が限られていますから、事前に「接着性ブリッジができるかどうか」を問い合わせたほうが良いかもしれません。

・直接CRブリッジ法~周囲の歯を削らないブリッジ

両隣の歯を一切削りたくないなら、「直接CRブリッジ法」を検討してみると良いかもしれません。両隣の歯に接着するようにして、欠損分に「コンポジットレジン」を盛っていきます。最後に、コンポジットレジンを歯の形状に整えれば完成です。
「経年劣化で着色する」「耐久性に欠ける」などのデメリットがありますが、何度でも修復できます。歯を削らないので、何度繰り返しても、特に問題は起こりません。ただし、自由診療になるので自費です。

■被写体の人物はストックフォトモデルです。撮影許諾を得ています。

3.まとめ

失った前歯を保険診療で補うなら、ブリッジが第一選択になることが多いです。最近は接着技術の向上により、「隣の歯をあまり削らないブリッジ」も出てきました。前歯を補うにあたっては、今後もブリッジが有力な選択肢になり得ると思います。
ちなみに、自由診療なら天然歯と変わらない見た目を実現することもできますが、「お金をかけてでも自然な仕上がりに…」という場合、インプラントのほうが魅力ある選択になると思います。ブリッジは「保険診療でありながら、水準以上の外見・機能性を備えた治療法」と表現するのが妥当でしょう。

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